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ユカリの書 第1話 ユカリたちの朝が…… ― 1 ―

 金曜日の朝が来た。今日の学校は事前の連絡通りに休校になった。


 今日は1日中お姉様の側に居られる。

 ネットレンタルビデオ映画をダウンロードして、お姉様と一緒に見ようかな。


 いつものメタモルフォーゼの朝の鍛錬を終えて家に戻った。

 今回は健も誘って鍛錬をしてみた。お姉様の弟だけあって、飲みこみが早かった。

 アレなら相当な使い手になる。

 こう言う才能を持つ子供を木花師匠は見逃さないと思うのだが、何故修行をさせて居ないのだろう……。


 そう言えば私への民事責任や過失責任とかそう言った昨日の問題が、何やらうやむやになっているようだった。

 大神の失態の隠ぺいもあるのだろうが全てがうやむやとなって、どうやら全くなかった事にされようとしている。

 だが消すつもりなんて私には無い。海外に全ての事実が流れる事を祈っている。

 例え私が悪人として見られようが、大神がしている行いを放送出来ればいい。


 とりあえずしばらくは、そういった物事の心配などせずに暮らせると言う事だ。

 その間はお姉様とのんびり過ごそう。

 私が側に居て少しずつでもいいから直していかないと。


 お姉様はまだ寝ているかな? ちゃんと寝つけているかな?

 元は私も居たお姉様の部屋の前に立つ。


 せっかく寝つけた睡眠時間を削る事はしたくないので、ゆっくり慎重に開けて中を確認する。

 中はしっかりとカーテンされていて、真暗で全体が見えない。

 戸から差し込む光でお姉様の布団を確認する。眩しくならないように、加減しながらお姉様の顔を確認する。


「アレ?」


 お姉様の頭があるかと思ったら、まくらだけがそこにあった。

 布団の中に潜っているかと思っていたが、ふとんはバサッとめくられていてその姿が無いのが一目でわかる。


 また発作が起こったかな。

 なら今は居間に居て、ソファーの上でテレビを見ているだろう。

 私は居間へと向かい、部屋に入った。


「おはよう」

「おはよう。ユカリちゃん」


 居間に居たのは私と鍛錬を終えて戻ってきた健と杏里お母様だけだった。

 健はいつも見ている朝の子供番組を見ながら食事をしていた。


「……? お姉様は?」

「姉ちゃん? まだ寝てるんじゃないの?」

「部屋には居なかった」

「じゃぁトイレにでも起きてたんじゃないかしら?」


 そうかもしれない。とにかくまぁ、この家は広い。

 トイレも3ヵ所もあって困った事が無い。

 廊下も1周ぐるっと回れる構造になっていて、この居間に付く間に逆回りされて遭遇しなかったなんてのも、普通に考えられる。


 私はお姉様の部屋へ戻る事にした。

 1回起きているのなら、体調を見ておきたい。


 私はお姉様の部屋の前に付くと、そっとふすまを開けた。

 ……まだ居ない。長い方のトイレかな。

 ここに戻ってくるかな。それとも朝食を食べに居間に行くか。

 ……取り合えず少しだけ待ってみよう。来なければ居間に行ったのだろうし。

 私は部屋の明かりを付けて中に入った。


「……ん?」


 暗くて最初は気がつかなったけれど、布団の側に紙が置いてある。

 お姉様は綺麗好きで片づけ上手だ。床に紙を置きっぱなしにするなんて事は無い。


 嫌な予感がする……。

 私はその紙を拾い、折り曲げられた紙を開けて内容を読んだ。


『この手紙を見つけた頃には、小野寺 花音は誘拐された後だろう』


「なっ!?」


 ゆ、誘拐っ!? 私は内容の続きを読んで行った。


『びっくりしていると思うが、犯人は黒堂 涼。ユカリの実の兄が、この手紙を書いている』


 兄さんがっ!? ナゼっ!? 大神関係かと思ったら全く違っていた。けれど兄さんがお姉様を誘拐っ!? ウソだこんなの……本物か? この手紙は……。


『取り合えずこの手紙はまずはユカリへと見せてほしい。真実である事を確認する為にオレたちの合言葉を使う。好きな果物は何かでスイカだ』


 こう言う重要な連絡時は兄さんからの本物の内容と知る為に、直接会っている時に事前に決めておいた合言葉だ。

 合言葉には間違いはない。そしてこの合言葉はもう2度と使わない。

 また使ったり、合言葉が違うのなら、その内容は偽物と思う様にしている。

 果物の好きな物の内容を今度会った時に違うヤツにまた決めないとな。


 しかしこれ、スイカは果物じゃなくて野菜だと兄さんともめたヤツだ。結局兄さんの言い分が通ってしまったが……。


 っていうより、本物と分かったところで、なんで兄さんがお姉様を誘拐してるんだっ!


『さて本題に移る。ユカリが慕う小野寺 花音だが、精神病を(わずら)っていて大変だって事は、ユカリからの手紙の相談事で知っている。病状や発症からの経過も、病院のカルテを盗み見てわかっている』


 病院にまで忍び込んだの? 何がしたいんだ兄さん……。


『発症から現在まで、中々治ってない事がわかった。このままじゃ、これから近い将来にユカリの身に降りかかる出来事には、小野寺 花音はユカリにとって大きな障害となる。ハッキリ言って邪魔になり、ユカリの身の危険になる』


 そんな……。

 私はお姉様が居てくれるだけでガンバれる。邪魔になんて絶対にならない。


『よってユカリの障害にならないように、オレが小野寺 花音を預かる。心配はいらない。身の安全と健康、衣食住には困らせない事を誓う。そして預かる間に、小野寺 花音の病気を治してやる』


 兄さんがお姉様を直す? そんな事が可能なのか?


『こんな事、ユカリやその家族が許すわけないとわかっている。だから本人にも許可なく強制的にでも、小野寺 花音を連れて行くことにした。すまないと思っている。しかし、オレにとって大事なユカリの身の為には仕方がなかった』


 私の為? こんなことするのが私の為なの?

 そんなの違う。兄さんのやり方は間違っているっ!

 今頃お姉様は不安でいっぱいになり、泣いているに違いないっ!


『こんな事を許さないと思っているなら、チャンスを与える。とどろ山の寂れた山小屋に今日の12時まで待ってやる。オレを倒して小野寺 花音を連れ戻したければすればいい。ユカリなら場所は知っているだろ?』


 知っている。

 その山小屋近くに地下倉庫があって、そこに兄さんの隠し武器庫がある。

 何かあったらそこにある武器を使って切りぬけてくれと、兄さんから教えられたからな。


『しかしそこにやってくるのは、ユカリと小野寺 花音にとって身近な存在の2人だけだ。両親でも構わないが、メタモルファイターの強い相手を用意してこいよ。オレは本気で戦ってやるからよ』


 私と戦おうとしているの?

 戦って実力をみたいのなら、普通はこんな事までしてやる訳ない。


 兄さんは本当にお姉様をさらって直そうとしているのか?


『この事実を警察や関係ないヤツに話そうとするな。もし変な事があればその場からすでにいなくなっているからな』


 兄さん。なんでこんな事を……。

 根は良い人なんだ。ただ……、常識に縛られない生き方を好む人なんだ。


 ……それ、良い人か?


 今、常識とは全くかけ離れた事をしでかしいてるヤツが、良い人とは思えないぞ。

 兄さんは間違った事をしているっ!

 兄さんにお姉様は任せられないっ! 連れ戻さないとっ!


 どうする? まずは両親にこの事情を話さないと。


 私はこの手紙を両親に見せた。そりゃ驚かれた。

 両親は警察へ通報しようとしていたが、私が必死に止めた。

 もし騒ぎが大きくなったと知れれば、兄さんはすぐに逃げ出して捕まえる事は絶対に出来ない。そしてお姉様は連れて行かれる。

 私は兄さんを必ず説得してみせると(ちか)い、両親の納得を頂いた。


 そして私はお姉様の救出の為の作戦を考えて、私たちはとどろ山に向かった。

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