ユウの書 第3話 大神グループとの決闘 ― 4 ―
「くそうっ! 覚えてやがれよっ!」
おー、実に下っ端が言うようないい負け犬な台詞を吐いて飛び立っていく。
っと、もう挑発はいいんだった。口が悪いままだといけないな。
「約束守れよなーっ! 守れなかったら、撮った映像を学校中に放送するからなぁーっ! オマエラが敗北した映像だぞーっ!」
平沢が逃げて行く大神グループに、やんややんやと挑発している。
「お見事でしたわ皆さん。ワタクシ、武者ぶるいが止まりませんわ」
「しっかりと撮れていたの。大神グループもそれを見て、青ざめていたの」
「ナイスファイトだったわっ! みんなすごいわっ!」
ウィッチミラーで撮った動画もしっかりと残ったし、全て上手くいったな。
「皆さん。本当にありがとうございます。ワタクシ、感謝でいっぱいです」
「そ、そんな。へへっ。小田桐さんにほめられたぜっ! よっしゃぁっ!」
「ホントにガンバったよ。正直、ここまで苦戦を強いられる戦いになるとは思わなかったわぁ。ごめんね。相手が竜で来るとは予想外だった為に、みんなに苦労をかけて」
「うぅん。そんな事無いよ。もしユウくんがちゃんと作戦を考えてなければ、絶対に負けてた」
「祐定がこのフィールドを選んでくれてなかったら、たちまちやられていただろうな。マジで助かったぜ。祐定のおかげだぜ!」
平沢は僕の背中をバンバンと叩いてくる。
学校の校庭や、街にあるメタモルバトル広場だと、障害物も少ない上にそんな広くない所が多い。
このとどろ山の広さと木々や斜面によって敵を分断して、錦戸を孤立させた事がこの闘いの1番の勝因だ。
「そうですわね。ユウくんはやはり底知れない強さを持っていますわね。あの戦いをみても、明らかですわ」
「いやー、逃げたり隠れたりして、卑怯な事してただけだから、そんな強いって訳じゃないよあれは……」
「いいえ、それでも他の方が忍者マスターを使って、ユウくんと同じように戦っていたでしょうか? ワタクシにはそう簡単にやれるとは思いませんわよ。あんな臨機応変な戦い方をするユウくんの才能はすごい物がありますわ」
「ん、んー……。卑怯は忍者にとってほめ言葉だって言ったけど、逆にあんな卑怯な事してほめられると複雑なんだけど……」
「お兄ちゃん、とてもカッコよかったの。クモの糸はお見事だったの」
「それに竜タイプの2体相手に立ち向かう。そんじょそこらの人じゃ、絶対にあっという間にやられちゃってるわよ」
「いやー、2体同時に戦ったって言っても逃げながらで、相手を引き離しながら戦ったからで、2体同時に戦ったって訳じゃないけどあれは……」
「そんなことないよぉ。私たち2人で戦っていても苦戦していたのにー」
「そうだぜ。俺はきっと祐定はやられてると思ってたんだ。そうしたら2体相手に矢を打ってるし、俺はびっくりしたぜ」
「びっくりしたのはこっちだけどね。おかげで見つかったよアレ……。今度から声かける時は、なるべく驚かさないように気をつけてくれよ」
「ははっ、ゴーストのクセだぜ。ついやっちまった。許してくれ」
「ユウくん。今年の学校の大会は出場されますの?」
「え? あぁ、出るよ。それがどうしたんだ?」
「ワタクシは現在ナンバー2なので、このままで行けば大会メンバーへの出場権を与えられると思いますわ。それで、ユウくんには是非チームメイトになって頂きたいと思っています」
「僕をチームメイトに? いやぁ、勝手にできるものなの?」
「いいえ、学校の大会で上位ランクにならないと難しいですわ。ですから、ガンバって上位に入ってほしいのです」
「祐定ならいけるだろ。ナンバー3にまでいけるぜ。だってナンバー3の三宅を倒しちまったからな」
「んー、まぁ、やってみるけどね。でもあれだなぁ。大神と当たって戦うのと、大神と一緒にチーム組んで戦うのって、すっごく嫌なんだけど」
「それでしたら大神は大会には出場しませんわ。それとジュニア級全国大会にも」
「え? えぇっ!? な、なんで?」
僕以外にもみんなが驚いている。
「実はワタクシも知ったばかりの情報なのですが、大神の実力はジュニア級以上と言う事が、大会主催者より通達されまして、1つ上のミドル級への出場権を言い渡されたようですの」
「マジかよ。アイツが……」
「それによって学校で行われるナンバー決め大会も意味が無いと言う事で、大神さんは今年の学校の大会は出場しないことになりましたの」
「そうなのね……。っと言う事は、今年はシアがナンバー1になるってことよねっ!」
「おぉ、そりゃすごいぜ! これはみんなが喜ぶぞっ!」
「さぁ、それはどうでしょうか? もしかしたらナンバー1は、ユウくんがなるかもしれませんわよ」
「ぼ、僕がぁ?」
「えぇ、先ほどの戦いを見て、ワタクシもアナタに勝てるかどうかと言う危機感を感じましたわ……。ですから、ユウくんと戦える日を楽しみにしていますわよ」
「あ、あぁ……。まぁ、やれるだけやるけどね」
「そうだっ! ナンバー1、2が小田桐さんか、祐定だったとしてナンバー3はっ!? あの三宅かっ! って、アイツなんもナンバーが変わってねぇーっ!」
「だったら平沢くんがガンバってナンバー3になってください。そうして仲良しな友達同士、全国大会の優勝を目指してガンバりましょう」
「お、俺もっ!? そ、そうだ……。もし小田桐さんと一緒に大会に出られるとなれば……」
「竜1体に2人で苦戦していたのに、あの三宅を倒せるの?」
杏子ちゃんの言葉に、ぐさっと胸を刺された平沢が心折れた。
「あっ……。む、無理だ……」
「だったら、オリジナルミックスジュースが必要になるね。今回、僕は自分の造ったオリジナルミックスジュースで戦ったんだ。とっておきの材料を使った最高品質なミックスジュースだよ。きっとこれがなかったら今回は負けていただろうな」
「そ、そうか! まだパワーアップにはオリジナルミックスジュースがあるか! よしっ! もっと強いゴーストタイプ作ってみせるぞぉーっ!」
「平沢のって、アレってオリジナルか?」
「いや、市販だぜ。俺の使ったカオスゴーストは、免許必要になるからさぁ……」
「それであの強さか。なら強化したら平沢もより強くなって可能性があるね」
「そうだぜっ! でも免許がなぁ……。誰かに造ってもらわないといけないな」
「だったら僕が免許を取りにいくから、作ろうか」
「おっ? マジでっ!?」
「え? ちょっとユウ。と、取りに行くって。アタシたちまだ小学生なのよっ!」
「別にウィッチポット免許には歳は関係ありませんもの。ちゃんと勉強して試験に合格さえすればいいのですわ」
「そうだよ。免許取得者の最少年齢は5歳だったよね。僕たちが生まれる前の話だけど、すごいよなぁー。5歳でウィッチポット免許を取るなんて」
「う、うそぉー……。ウィッチポット免許って、そう簡単に取れるものじゃないのよ……。6人に1人って言われてるくらい難しくて、さらに言えばアタシたちまだ小学生よ」
「そう言われているけれど、ちゃんと勉強してれば取れるものだって。不合格な人は勉強が足りてなかった人たちだよ」
「そうですわよ。ワタクシも実はウィッチポット免許を取ろうと勉強していますわ。ちゃんと勉強をしてこの歳で試験を受けた人も稀に合格者は出ていますわよ」
「まぁもし受験失敗したら、海斗兄ちゃんや母さんに作ってもらうって手もあるけどね……」
「そっちの方が確実じゃない」
「でもさ。できるなら自分で造ったオリジナルミックスジュースで戦いたいものだよね」
「そうですわね。でなければ、やり方は大神グループと同じですし。あの方々は大神のミックスジュース製造会社からの提供の物を使っておりますし」
「うっ……」
「李奈たちも自身で作ったオリジナルミックスジュースで戦って欲しいんだけど」
「そう言ってもよ。取れるのか? 俺たちがよ」
「平沢くん。自分で造ったオリジナルミックスジュースで大会に勝ち上がったら、とても素敵ですわよね。カッコいいですわよ」
「よぉーしっ! やってやろうじゃないかっ! かならず免許とってやるぞっ!」
シアに上手く載せられてるな平沢は……。
「それに大神が復帰したら、僕たちは確実に狙われるよ。それに立ち向かう為に、みんながそれぞれ力をつけなくちゃいけないよ」
「ふぅ、それもそうねぇ……。アタシも今から勉強して、試験受けて見ようかしら」
「ワタシもやるのぉー」
「えっ、杏子もやるわけ?」
「やりたいのぉ。みんながやるのにワタシだけ何もしないのはイヤなの。自分の身を守るくらいの力は付けたいの」
「けれど杏子ちゃんには、ちょっと難しいのではありませんか?」
「大丈夫なのっ! お兄ちゃんにいっぱい教わるの!」
「おー、意気込いいね。試験を受けるまでに見込みがあれば行こうね。杏子ちゃんガンバればイケると僕は思ってるよ」
「よろしくなの。お兄ちゃん」
「杏子のついでにアタシにも教えてよね」
「ではワタクシも一緒に参加させてください」
「お、俺もっ!」
「わ、私も……いいかな……?」
「もういっそ全員で勉強会しよ」
「それがいいわね。よーしっ! みんなでガンバっていこーっ!」
李奈の掛け声とともに、みんながオーっ! と声を上げる。
「ふ、ふふっ、ははっ……」
突然笑いだした僕を見て、みんながどうしたんだとちょっと引いていた。
「あっ、ごめんごめん。いやー、なんていうかさ。忙しくてとんでもない話になってきたなぁって思って、おかしく思っちゃってさ。だってついこの間まで、1年から3年生と変わりない日常が今年も繰り返されると思っていたのに、今はこんなのだからさ」
僕はみんなを見た。ここに居る者たちは、これからどんな出来事があるのだろう。
「何かが動き出したよな。そして日常が大きく変わって行く」
「そうね。もしかしたらユウくんが特級組に入って来たのが、事の始まりなのかしらね」
「え? お、俺も今年入りましたよっ!」
「そうですわね。主役が集まったと言う事でしょうね」
「あぁ、そうだね。もし僕と平沢が特級組に入ってなければこんな関係もなかったし、こんな大神に絡む事なんてなかった。全てこうして集まって起こる出来事は運命だったんじゃないかってくらいに思えるよ」
「えぇ、きっとそんな気がしますわ。ユウくんの元に参りましたのも、それは正解でしたわね。アナタを選んでよかったです」
沈む夕日を見て、明日も明後日も、これから先に起こる出来事が全く読めない。
明日の太陽は僕たちのどんな物語を見るのだろうな。
「これから大変になっていくぞーっ! みんなも、この変わりつつある忙しい状況に、気合入れていかなきゃ、置いていかれて大変な目に合うよ」
そして僕はみんなに笑い掛ける。
「でも僕はみんなを置いて行ったりしないよ。引きずってでも助けるからね。僕はみんなを身捨てたりしない。だから、みんなにもガンバってほしいんだ」
「……えぇ、ユウの事、信じて行くからね。絶対にユウに追いつくからねっ!」
「良い日が迎えられるように、努力は怠りませんわよ」
「ガンバるのっ! 大神をやっつけてやるのぉーっ!」
「載りかかった船だ。最後まで付き合うぜ。俺はオマエの友だっ! 大神に戦いに行くなら、俺も一緒に連れて行けよなっ!」
「な、なんかすごい事になっちゃったね……」
「ごめんね。こんな事に巻き込んじゃって。今なら引き返せると思うけど」
「うぅん。大丈夫。ユウくんの為になる事があれば、私でよければ協力するよ」
「わかった。ありがとう。みんな、これからもよろしくね」
大神との戦いがこれから頻繁に起るだろう。
僕たちは自分たちの幸せ、平和、理想の為に戦って行く。
こうして僕たちは、物語の始まりの1歩を踏み出したのだった。




