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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第4章 茶の木小学校の出来事
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ユウの書 第2話 アクティブシア ― 2 ―

 お昼休み。

 普通の学校なら給食ってのがでるらしいけど、僕らの学校って給食ないんだよなぁ。

 お弁当を持ってくるか、学食に行って食べるか、購買に行ってパンを買うか、近くのコンビニまで行くか、レストランに行くか、家まで帰って食べるかと、学生たちは様々な方法で食事を取る。


 お昼休みが1時間半と長めなので、本当にゆっくりと食事に出かけたり、食事終わりに休憩や遊んだり出来る。

 食事時間と休み時間が合わさってのお昼休みって感じなんだ。


 それで僕のお昼ご飯はいつも母さん手作りのお弁当だ。

 李奈と杏子ちゃん、そして吏子ちゃんと一緒にいつも集まって食べている。

 暖かい日は庭園の芝生にシートを引いて食べる。雨の日や外で食べるには寒い季節には杏子ちゃんが僕たちのクラスに来て一緒に食べる。

 って、今年は僕だけ特級組だし、僕も李奈たちのクラスに行かないといけないな。

 今日はポカポカと暖かな日差し。何も考えずとも今日は外で食べるんだなと思い、庭へと向かい始める。もしなんかあったら連絡が入るはずだし。

 僕はお弁当の支度をしてクラスを出ようとした。


「ユウくん」

「おぅ?」


 声に振り返るとシアがお弁当を持ってこちらにやってきた。


「ワタクシもご一緒してもよろしいですか?」

「え? いつも食べてるメンバーは?」


 ここ1ヶ月見てきて固まるグループを把握しているが、シアも5人ほどのメンバーでいつも教室でお弁当を食べているのを見ている。


「そうしようかと思ったのですが、追い出されましたわ」

「え? イジメ?」

「そういう訳ではなく、今朝の事もあってちゃかしてきてるのですわ。ワタクシとユウくんをくっつけようとしているのです」

「あー、なるほど……」

「けれどワタクシも、たまには違ったグループで食べるのも新鮮なので、よければご一緒してもよろしいですか?」

「別に僕は構わないよ。李奈たちも構わないと思うし。それじゃ行こうか」

「えぇ、よろしくお願いします」

「ちょ、ちょっとまってくれ祐定っ!」

「おぉーっ?」


 今日はやたら話しかけられるな。進もうとする足が全然前に進めないぞ。


「今日は俺も一緒に食うぜ! なっ? いいだろ?」


 平沢が僕の肩に腕を廻して引っ張ってくる。そして小声で話してきた。


「なっ、今朝言った事頼むぜ。ここで俺を連れて行って紹介してくれよ」

「あー、わかったよ」


 僕らは離れると、シアに向き合った。


「平沢も一緒になるけど、いいかな?」

「えぇ、別に構いませんわよ」

「あ、ありがとうございますっ!」

「平沢さん、今朝は申し訳ありませんでした。大変失礼な事を皆さんの前でしてしまい」

「い、いえっ! 気にしておりません! 大丈夫ですよっ! この通りっ! はっはっはっ!」


 そのカラ元気さを見て、僕は涙をちょろっと流してしまう。

 平沢って、不器用で健気だよな全く……。応援してやりたいわ。


「じゃぁ、祐定。俺は購買へ行ってからそっち行くぜ。いつも食ってる庭でいいんだよな?」

「あぁ、そこに居るよ」

「あっ、平沢くん。購買へ行くのですか?」


 廊下は走る物じゃないけれど、走ろうとしていた平沢が慌てて急停止する。


「ワタクシ、一度購買へ行ってみたかったのです。一緒に行いきますわ」

「え? え? 小田桐さんが購買へ?」

「なんか買うの?」


 僕もシアの珍しい行動に興味を持った。


「ワタクシは一度も購買へ行った事がないのです。購買は戦場と言われ、近寄るのは危ないと言われてて、いつも行けなかったのですが……。良い機会なので見たいです」

「シアって、どんだけ箱入り娘にされてたんだよ……」


 今までの話からやってない事の多さを感じて同情してしまう。


「今からでも遅くはないですよ。むしろ我慢していた分、見る物が全て新鮮で楽しいですよ。皆さんが普段から見ていて何も思ってないものでも、ワタクシには面白く思えて得をしていますわ」

「ポジティブだなぁ」

「それより戦場は時間が経つ程に乱戦となり、得られる物の価値が低くなると聴いていますわ。急がなくてはいけませんね」

「詳しいね」

「興味をもったモノのリサーチは、怠っておりませんわ」


 シアは走る事はしないが、その歩きはお嬢様としての質を保ちつつとても速かった。

 僕たちはシアに置いてかれる形になって、慌てて後を追う。


「……なぁ、祐定。小田桐さんって、あんな人だったっけか?」

「最近、色々な縛りから解放されてアクティブ化しつつあるんだよ」

「へ、へぇー……」

「聞こえていますわよ。平沢くん、こんなワタクシは以外でしたか?」

「えっ? いえいえっ! 大変魅力的ですよ!」

「まぁ、ふふっ、ありがとうございます」


 シアが口元を押さえてほほ笑む。

 ははっ……。僕も驚いていたが、みんなやっぱり驚くよな。


 僕は購買に付く前に李奈たちへシアと平沢を連れて行くのと、少し購買によって遅くなる事をメールで伝えた。

 別に僕が先に庭園に行って待っていてもよかったのだが、シアが購買を目の当たりにした時の反応に興味があったので、ついて行く事にした。


 そして1階にある購買の前にやってくると、その人だかりの前にシアは驚いた。


「まぁ、こんなに群がっているのですか。ここだけこの学校の中で別空間に見えますわね」


 購買の前はパンやお弁当を買いに殺到しに来た生徒たちがうじゃうじゃいた。

 通路の邪魔にならないよう、校内の本当に一番端に設備されている。購買へ買い物に縁が無い人は、まずここを通ったり見る機会なんてない場所だ。


「やっぱり少し出遅れたぜ! いつもならもうこの人だかりの先頭辺りにいるんだけどな」


 平沢は首と肩を廻して、戦闘準備に取り掛かっている。


「せっかく来たんだし、僕も何か買おうかなぁ……」

「ユウくんも行くのですか?」

「ここで売られてるチョコドーナツは李奈と杏子ちゃんの好物だし、バナナチョコパンは吏子ちゃんが好きなんだよ。待たせている分、お土産にいいかなってね」


 僕も手足をぶらぶらと振って、準備運動をする。


「なんか並んで買ってるようには見えないのですが……」

「並んでなんかないよ。早い者勝ち形式で、先に買った物勝ちだから、後から来て割り込んでもいいんだよ」

「なんだか効率悪いですわね。ちゃんと並んで払って行った方がよいのではないですか」

「それが分かっててもこう言う風にするのが伝統になってるんだぜ。ようは祭り魂ってヤツだ。よぉーしっ! 俺はもう行くぜ! 祐定も気張って行けよ!」


 そう言うと平沢は人の群れの中へ向かった。

 上手い具合に中から出て来た人と入れ替わりに入って、出来た隙間からぐいぐいとその中へと入って見えなくなって行った。

「なるほど、あぁやって中に入って行くのですね。……では、ワタクシも参りますわ」

「ん? うぇえっ!? 見に来ただけじゃないの? 行く気なの?」

「えぇ、先ほどおっしゃったお祭り見たいで楽しそうではありませんか。何が起こるかわかりませんが、何かしら私も戦利品を手にして見たいですわ」

「結構きついよ?」

「構いませんわ。それで、どういうルールですの?」


「品物は全部早い者勝ち。取ったら購買にいるおばちゃんに商品を見せてお金を受け取ってもらって抜けてくる。一度手に取った商品は買わないといけないよ。勝ちぬく為のキーポイントは、おばちゃんが自分たちに気づいてお金を受け取ってもらうかだよ。だからみんな必死にアピールするんだ。もしおばちゃんにお金払わずに抜け出すと、すぐにばれて外にいるおばちゃんに掴まって、またあの中に放り込まれるよ。どうやって見てるんだかわからないけれど、万引きは1件も起きてないんだよ」


「凄いですね……」


「そうだね。下手な人やあんまりもみくちゃにされたくない人、遅くてもいいから並んで待ってる人なんかは外側にいるよ。そういう人たちは案外隙間に入って行きやすいけど、奥に行く程になってくると、我先と言わんばかりに押し合いになるから気を付けてね。あ、それとお会計時に財布なんて出してる悠長(ゆうちょう)ないから、今ここでポケットに小銭を入れておいてよ」


「……」


 言われた通り、財布を取り出してポケットに小銭を入れる。

 ちょっと怖気付いたのか、目の前の光景に目を泳がせている。


「よかったら僕の後ろをついて行く? なるべく隙間を作って行くよ」

「お、お願いしますわ。初心者なワタクシでは、きっと生還する頃には廃人になります」

「なら、手を繋いで。離れないようにしっかり握ってて」


 そう言って僕は手を出した。


「え? 手を握り合うのですか?」

「そうだよ。離れたら大変だよ。本当なら僕の腰に手を廻してくれてた方が、両手を使って隙間を開けていけるから楽なんだけどね」

「……わかりましたわ。お願い致します」


 シアは恥ずかしそうに僕の左手を取る。

 平沢よ。もう少し待っていれば、こう言うイベントがあったのにタイミングが悪いヤツだよ。


「それじゃ行くよ。息はなるべく浅く呼吸するようにして、体を細くしていくんだよ」


 僕はシアを引きながら、人の群れへと入って行った。

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