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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第4章 茶の木小学校の出来事
50/106

ユウの書 第1話 いつもの朝が…… ― 5 ―

「……っと言う事がありましたの」

「ユウらしいわね」

「困ってる事があれば、どんなのでもクビを突っ込むの」


「大神を知るものであれば、どんな人であれ手を出したくないのが普通です。ワタクシは3年生の時から大神に付き纏われて以来、誰しもワタクシを助ける事なんてありませんでした。その中でワタクシを助けたのがユウくんが初めてでした。最初は無知な新顔の方が助けに来たと思いましたわ。けれど、ユウくんは大神を話術で上手く(たしな)めて行くではありませんか。それに嫌われない様な的確な持ち上げもして……。大神に取りつくろうとする者かと最初思っていました。けれど、アレ以来大神に付きそうなど無く、逆に大神タブー派と分かりました。その時、初めてちゃんと助けられたのだとわかりましたわ。その日からユウくんがどんな人なのかと気になって、昨日の偶然お会いした時のメタモルバトルの才能を見て、もう居ても経っても居られなくなりましたわ。ユウくんは、どんな方なのかと」


「お兄ちゃんは優しくて、物腰柔らかで、困ってる人がいたら絶対にほっとけなくて、頭が良くて、強くてカッコいいの」

「ベタ褒めですわね。それは見ていたら分かりますわ。ワタクシが興味あるのは本質のところですわ。ユウくんの中にある物とは何か? ワタクシはそれを知りたいのです」

「ユウの本質ねぇ……。変人?」

「大人?」


「そう言うのはこれから付き合って行く中でわかってきますわ。それより、いいのですの? ワタクシが、お2人からユウくんを取るかもしれませんわよ」

「アタシはユウがその人を好きになったらそれでいいわよ。ユウの自由だもの。ユウが誰かと付き合っても、アタシたちの関係を崩すような薄情(はくじょう)な人じゃないっての分かってるもの」

「今の幸せが続くのなら、ワタシもお兄ちゃんが好きになった人に譲るの」


「そうですか……。色々と修羅場となるかと覚悟してまいりましたけど、勘違いしていましたわね。ユウくんが誰とも付き合っていない理由は、いつも側にいる李奈がその人たちを(おとしい)れて妨害していると思っていましたわ」

「ちょっ、酷いわねぇっ! でもそれ言われるの初めてじゃないのだけれどね。ユウに告白してきた子たちと一緒になるとよく言われてるわ……」

「李奈も苦労していますわね」


「でもね、アタシもユウの事を本気で好きになったら、遠慮なく取りにいくからね!」

「そうなの! 女の戦いなの! ワタシも負けないのっ!」

「ふふっ、望むところですわよ。やはりアナタ方と付き合うのを決めて正解でしたわ。今後は面白い学生生活が送れそうですわ。今まで退屈でしたもの……、本当にもう……。ずっと鳥かごのなかでしたわ……」

「何よ辛気臭い顔して。お嬢様だから遊び方知らないって言うのなら、色々とアタシたちが遊びに連れてってあげるわよ」

「そうするの。遊園地とか遊びにいこうよ」

「遊園地。父と母に幼い頃連れて行ってもらって以来、一度も行っていませんわね。昔乗れなかった絶叫マシンと言うものを載ってみたいものですわ」

「なら絶対に乗りましょう。アタシたち全員、絶叫物好きよ」

「やっとワタシも身長制限に引っ掛かる物が少なくなったの。あのジェットコースターもやっと乗れる身長になれたから、今度載りたいの」


「いいですわね。いつ行けますか? ワタクシは習い事もありますから、日付はしっかり決めないといけませんの。申し訳ありません」

「気にしなくていいわよ。それで習い事って何曜日に入ってるの? 休日に入ってると結構厳しいわね」

「土曜日は習い事があるので、1日開ける事はできませんが、日曜日でしたら1日中開いていますわ」






 李奈たちのティーカップと、温めなおしたティーポットを持って戻ってくると、女の子3人で華やかな話し声がする。

 仲が良くてよかった。本当に……。アンジェお姉さんの様にならなくてホントよかったよ。


「お待たせ~。今日は僕が作ったのじゃないけど、かなり良い茶葉使ってるから美味しいよ」


 李奈たちのティーカップに紅茶を注いでいく。


「あら? ユウくんが作る事もあるのですか?」

「いつもは僕が作ったのを淹れるんだよ」

「次はユウくんが作った物を飲んでみたいものですわ」

「是非飲んでよ。あ、おかわりいる?」

「お願いしますわ。ありがとうございます」


 僕は空になりつつあるシアのティーカップに紅茶を注ぐ。


「なんかジェットコースターや何曜日とか聞こえたけど、遊園地に行く予定でも経ててたの?」

「そうなのよ。シアってまだ絶叫系載った事ないっていうのよ」

「そうです。一度載ってみたいのですわ。それで行く予定の日を決めておりましたの」

「ほぉー……。一度載って後悔しなきゃいいけどねぇ」

「それほど凄い物なのでしょうか?」

「ぐぃーーーーっと体が重力に持って行かれるね。アレは鳥になって飛んでも味わえない快感だよな」

「もの凄い早さで走るわ。時にはそのスピードで地面へ向かって突っ込んで行くわよ」

「最近では、ただ走ってるだけじゃない物も出来てるのっ! アレも載って見たいのぉ」


 その話を聞いてシアは恐怖するかと思ったが、逆に目がきらきらと輝いていた。


「い、いつ行きましょう? 1番早く空いている日は今週の日曜日になりますわ。その日は皆さん空いて居らっしゃいますか?」


 居ても経っても居られないはしゃぎ様で、シアが日付の進行をしてくる。

 僕たちはそのシアの盛り上がり様に笑った。


「僕は空いてるよ。2人は?」

「いいわよ」「OKなの」

「後は保護者の同意と、一緒に行ってくれる保護者探しだな」

「付き添いの保護者でしたら、ワタクシの側女(そばめ)を連れて行きますわよ。車もお出ししますわ」

「え? 車で行くの?」

「側女って……?」


 僕たちは普通にメタモルフォーゼで鳥タイプになって飛んで行く事を考えていた。

 普通はミックスジュースを飲んで、鳥タイプや馬タイプなどの移動手段を使うのが普通だ。

 それでも余程遠いところに行く場合は、電車やリニアモーターカーを使っている。


 車を使わなければ、駐車料金や駐車スペースに気を取られなくて済む。

 それにガソリンの値段が異常に高いし、維持費のコストがとても掛かる。

 ミックスジュースを使っていた方が安上がりと言って良いほどだ。


 車も日常で見かけるのは、サービス車や建築業務をする作業車、貨物を積み込んだトラックぐらいしか、普段道をすれ違う事はない。

 自家用車を持つ人なんてお金持ちの道楽でしかなく、値段も高いので一般人が持ってるとすれば、余程の趣味を持つマニアしかいない。

 昨日のくじ引きで、もし1等の1億2000万円もする車が当たったらと母さんと話していたら、換金しちゃうって言っていたし、車を持っていない方が普通な感じだ。


 ちなみにあのルビーと黄金の鎧を見せた時の反応は、とても面白かった。

 人間って信じられない物を目の前に突然置くと、その場で突然固まった後、指先でツンツンしたりして確認するんだなぁー。


 そして側女って何? メイドさんみたいなものなのか?

 僕たちの反応を見て、自分が見当違いの発言をしたのを悟って咳払いする。


「ど、どうするかはアナタ方に任せますわ」

「じゃ……、じゃぁ、行き方はメタモルフォーゼで鳥タイプになって行くとして。母さんは日曜日はこの店は休みじゃないし。海斗兄ちゃんは……。なんか予定あるって言ってたな」

「パパは三十肩なのぉー。それでママもそれの世話があるから無理なのぉ……」

「その側女って人に来てもらって大丈夫なの?」

「えぇ、問題ありませんわ。21歳の大学女学生の方ですわよ。ワタクシが頼めば付き添ってくれますわ」

「じゃぁ、それで決まりね」


「まぁ、待て。後は親の同意が必要になる。うちはたぶん大丈夫だし、李奈んとこも大丈夫だろう。問題はシアのところだよな」

「それなら大丈夫です。でなければ、今ここにワタクシなんていませんわよ」

「そっか。でも一応同意の確認してきてね。んーっと……、集合場所は何ところにしようか」

「ここに集まるのでは?」

「李奈が虫嫌いだから、もし待ち合わせている最中に遭遇してしまったら大変だから避けたいんだよ。普段なら僕が門川家に行く待ち合わせなんだけど」


「なら、そこにしましょう。しかし、虫が嫌いなのでしたら、どうしてここで待ち合わせしているのですか?」

「アタシも虫が苦手のままじゃ嫌なのよ。虫に慣れる為なのと、ここのお茶目当てに来てるの」

「お茶とお茶菓子で釣ろうと考えたのは母さんのアイディアなんだよ」

「そのお陰で、最初の頃よりはこう言うところに入るためらいはなくなったわ」

「お茶とお菓子だけが目的でしょうか?」

「うるさいわねぇー。そんな風に言うなら正直に言うわよ。ユウにも会いたいからに決まってるでしょ。ユウと一緒に登校したいから来ているのよ。でなければ来ないわよ」

「それなら李奈がこっちに来なくても、僕が門川家に行って一緒に登校してるよ」

「あらあら。お熱い事で」


 僕たちのやり取りを見てニヤニヤとするシア。


「そんなことよりっ! シアはアタシの家の場所分かるの?」

「あっ……」

「日曜まで時間あるし、一度連れてって場所を覚えてもらえばいいか。それかスマフォのGPS機能に門川家の住所登録して来てもらうとか」

「そうしましょう。ワタクシの家の前で待ち合わせると、祖父が心配になって飛び立つ時に一緒に付いてきてしまいそうですわ」

「それならおじいちゃんも連れて行ってあげれば……」

「ワタクシが絶叫系に乗った時、心臓を止められては困りますわ。祖父自身も載りかねません」

「ありそうだなぁー……」


 僕たちは乾いた笑いをする。


「ユウくんっ! 時間大丈夫っ?」


 その時、店の方から母さんの声がする。

 時間を見たらいつも登校する時間から随分と過ぎている。


「うわぉっ!? いつの間にやら……」


 話が盛り上がり過ぎていて、時間がこれだけ流れている事を忘れていた。


「えっ? もうそんな時間なの? 気が付かなかったわ」

「せっかく美味しい紅茶なの~。もっとゆっくり飲みたかったの~」

「まぁ、こればかりはしょうがないよ。片づけてくるから待ってて」

「お手伝いしますわ」

「いや、大丈夫だよ。ちゃちゃっと終わるから」

「そうですか……」


 残念そうな顔をするシア。手伝いたいだなんて、イメージしていたお嬢様と違うなぁ。

 絶叫系に乗りたいやら、モールのメタモルバトルに行くやら、アクティブな人だなぁ。


 そうして僕たちは学校に登校する間も、遊園地の事を話し合っていた。

 どんな物に載りたいか。何ところの遊園地にするか。何時に集合するか。お弁当は作っていくか?

 いつもと違うメンバーが1人加わっただけで、いつもの登校が一層賑やかで面白かった。


 しかし問題は大神だな……。

 アイツはシアに惚れているから、この状況を見たら何をしてくるだろうな。

 僕はその対策も考えながら学校へ向かった。

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