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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第4章 茶の木小学校の出来事
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ユウの書 第1話 いつもの朝が…… ― 3 ―

 今日は4月の始業式。

 学年が1つ上がり、今日で初めてクラス別けの結果が分かる日だった。


 クラス別けの発表がされた掲示板に、皆が集まってワイワイと盛り上がっている。

 自分の名前を探して何ところのクラスになったとか、また一緒になったねとか、お別れだねとか、そんな話し声がしている。

 そして僕も自分のクラスがドコだドコなんだ見つからないぞ、と探し回っている最中だった。


「あっ、アタシの見っけっ!」

「私も見つけたよ。李奈ちゃんと同じ3級組だったね」

「今年も上がる事はなかったわね」

「そうだねぇ。去年は頑張ったんだけどなぁ」


 僕たちの茶の木小学校のクラス別けは、他の学校と勝手が違う。

 それは成績の善し悪しで別けられる競争システムになっている。

 頭の1番良いクラスは特級組と言って、その次が2級組となり、5級組みが最下位の順番付けでクラス別けされていくのだ。

 3級組ならまだ何もない。けれど4、5級組になると、色々と周りから見る目が変わってくるのでなりたくないところだな。


「あのさ。僕のドコだ?」


 去年は李奈たちと同じ、3級組だったんだよなぁ。

 その3級組を探してみたがなかった。下がったとは思いたくないなぁ。

 なので2級組の覧で探していたのだが、僕の名前が見つからなかったのだ。


「名前順だから『こ』の行で見つかるはずなんだけどな……」


 見逃すはずはない。

 僕はまさか下がったのかと不安になってしまう。


「4級に落ちたわけ? でもユウは頭いいのにそれはないわよ」

「ユウくんの4級の方でも探してみたけど、そこにはなかったよ」

「まさか……なぁ?」


 僕は特級組の覧の場所まで行ってみた。

 そこの集まりに行くと、身なりがとてもお坊ちゃま、お嬢様な子たちが沢山いた。

 そんな見た目の人たちが集まる中で、平凡な僕がやってくると何だこいつはと汚物を見るような目線が向けられる。

 あー、このクラスの性格の人たちと居たくはないなぁって思ってたんだけどな。

 いや、まだ入ってるって分かってないし。


「あったーーーーっ!?」


 あったのっ!?


 いや、僕じゃないな。その掲示板の前で信じられない様な顔をした、僕と同じような一般人な雰囲気の男子が叫んでいた。


「やった! 父さんっ! 母さんっ! 俺頑張ったぜっ! さっそく連絡入れないとっ!」


 そう言ってポケットからスマートフォンを取り出して、その歓喜のまま話しだす男子。

 それを見た周りが嫌な顔をして、その男の子を見ている。

 こうして普通の人が成り上がってくるのを汚物として見る目は嫌だなぁ……。


 取り合えず探すかな。どれどれ……。


「かーきーくーけーこっと……こふ……このっ」


 1回通り過ぎた後に戻って二度見した名前は『木花 祐定』と確かに書いてあった。

 その特級組の一覧には僕の名前がしっかりと入っていた。本当に書いてあった。嘘だろっ!


「ウソだろ……」


 なんか気が動転しているせいか、同じ言葉の繰り返ししているな。


 確かに去年は結構成績が良い感じだってのはわかっていた。

 けど3級からいきなり特級に上がる事があるのかっ!?

 僕は何か間違いなんかじゃないかと思った。


 李奈たちの居るところに戻ると、そこには2年生の掲示板があるところから戻って来た杏子ちゃんの姿も居た。


「どうだったのよ?」

「特級組だったよ……」

「それ本当なの? すごいのお兄ちゃんっ!」

「うそーっ! 特級組なんて、滅多な人じゃないと入れないわよ」

「でも、ユウくんは去年は凄く成績よかったよ」

「だからってねぇ。僕もまだ信じられないよ。間違えて載った可能性もあるかもしれないからさ。僕は職員室に行って確認を取ってくるよ」


 僕は信じる事が出来なかったので、職員室に行って確認を取りに行った。

 そこに居た海斗兄……小林先生に尋ねてみた。


「小林先生。ちょっといいですか?」

「ん? どうしたんだい? 祐定くん」

「僕が特級組に入っているのですが、アレって間違いじゃないですか?」

「それがだな。俺もいつも通りの大神が居る特級組を担任に当てられたのだが、クラス名簿に祐定くんもしっかり入っていたんだ」

「マジでー……?」

「あぁ。なんていうか……。ご愁傷様と言って良いのか、おめでとうと言って良いのか困るなこれは……」


 小林先生もため息をついていた。


「今俺は色々と忙しいから、またな。大神とはなるべく関わらない様にするんだぞ」


 そう言って小林先生は自分の机へと向かって行った。


 そして僕は職員室を出ると、複雑な気持ちになっていた。

 勉強を頑張ったからそれを認められた嬉しさより、大神とこれから1年を共にすると言う嫌な予感。

 これから1年間、僕の周りで絶対に何か起るだろうと、その時から予期していたのだった。






 僕は4年生の特級組の教室に入った。

 クラスに居た生徒の半分が僕の事を何だコイツは、と言う目で見ている。

 あー、なんかイヤだなぁ。

 でも、出来るだけ皆と仲良くできるように、これから頑張っていかないとな。


 僕は自分の席を適当に選んで決めた。

 席順は名前順と言う訳でもなく、早い物勝ちで決まってくる。

 クラスに先に入れば自分が好きな席を確保できるのはもちろんだ。

 僕たちも隣通しの席にしたいからと、今日はいつもの登校より早めに来ていた。

 でも、僕だけ李奈たちと一緒のクラスじゃないので意味なかったなこれ……。


「あ、そこは……」

「ん?」


 メガネをかけた女の子が、僕へ声をかけた。


「えっと……ね。特級組で初めて会うよね? 初めまして。小富士(こふじ) 真理奈(まりな)です」

「あ、どうも。木花 祐定です。皆から愛称でユウって言われてるので、ユウって呼んでください」

「わかったよ。それでね、ユウくん。このクラスでの特別なルールなんだけれど……。実は初めて入る子たちは、1番後ろの席から座って行く習わしになっているの。ごめんなさい。そこは使えないから……」

「なんだそれ? まぁ、別に行ってもいいけど」


 まぁ、特級組には他のクラスには無い色々なルールがあるとは知っていたからな。


 僕は席の1番後ろまで行く。


「おっ、オマエも新参者か。よろしくなっ!」


 そう声をかけてきた1番後ろの席に居た男の子は、クラス別けの掲示板で見かけた人だ。


「初めまして。木花 祐定です。愛称は――」

「あぁ、小富士と話してる時に聴いたぜ。ユウって言うらしいが、俺はしっかり祐定で言わせてもらうぜ。それでも構わないか?」

「別に構わないよ」

「ありがとうな。俺って最初にしっかり名前覚えておかないと、本当の名前を忘れやすくってさ。それで俺の名前なんだけど、平沢って言うんだ。ここの連中らみたいに堅苦しくなく、新参者同士の付き合いで、呼び捨てにでもしてくれ。よろしくな」


「わかったよ。よろしくね、平沢。しかし1番後ろの席って、もう全員分埋まった感じ?」

「そうだな。今年は特級組の入れ替えが多いみたいだぜ。2列目も使って良いだろうな。俺の席の前に来てくれよ。あんなヤツラを前にして授業するとなると、その頭をド突きたくなって来て授業中何するかわからないぜ」


 っと言う事で、僕は平沢の前の席にする事にした。


「平沢くん、さっそくお友達できた?」

「お、小富士。あぁ、取り合えずな」


 1番最初に話しかけてくれた小富士さんがやってきた。


「小富士以外に知り合いが居ない状況だからさ。つるむヤツをさっさと確保して置いた方がいいなこりゃ」

「だねぇ……。僕も今までの友達が全く居なかったよ。しかしまさか特級組に入るとは思わなかったなぁ」

「今年はね。なんか大神の事を嫌って、ワザと成績落とした人も居るって噂があるよ」

 んー、あり得るなぁ。僕だって離れられるのならば、こんなクラスから抜けたいし。


 頑張っても責めて2級組へと上がる程度と思っていたのにな。


「大神様が来るぞっ! 皆、準備しろっ!」

「噂をすればなんとやらだぜ。大神が来た……」


 平沢が嫌な顔をしてる。その噂の大神がドアを生徒に開けさせて入ってきた。


「諸君、おはよう。新学期も始まって新たな大神伝説が、ここから始まると言う第一歩を目の前にした君たちは、今年は素晴らしい1年が待っている事だろうな。はっーっはははっ!」


 やばい。今のだけでだいぶテンションが下がった。


 クラスに居た人たちは、それを膨大な拍手で出迎える。


「ほら、やっとかないと後で色々と嫌な事されるから」


 小富士さんも心はこもって無い拍手を大神に向けてしている。

 僕も平沢もそれにならって、音が出ない拍手のパフォーマンスだけしている。


「さて。それで俺の愛しいのハニーは、まだ登校はしてないのか?」


 大神の金魚のフン状態の男の子が、まだ居ませんと答える。

 そうかと答えて、大神は1番前のど真ん中の席へと座った。


「あそこが大神の指定席なんだよ」


 小富士さんが僕たちだけに聞こえるように、静かにそう言う。


「マジかよー。あんなヤツをいつも目線に入れて授業するっていうのか。拷問に近いぜ」

「あ、あんまり下手な事をここで言ったら危ないよ。平沢くん」


 はぁー……。なんか本当に大変な1年になりそうだな。


「小田桐様が参りますっ!」


 そう言って大神の手下であろう男子が、廊下から教室中に聞こえるように報告した。

 小田桐さんかぁ。そう言えば毎年特級組だったな。


「小田桐さんが来るのかっ!? くぅーっ! 小田桐さんと大神と天秤(てんびん)にかけたら、100万票の差で小田桐さんと言う、茶の木小学校一の美しき女神様がついに来るんだなっ!」


 なんか平沢が大興奮し始めてるが、どうしたんだ?


「やっぱ平沢くんって、小田桐さんが好きなの?」


 小富士さんが平沢に質問している。


「そりゃー男子全員の憧れの的だぜ。俺だって心に決めた人と言えば、小田桐さんしかいないぜ。俺は小田桐さんと一緒のクラスになりたいから、ここまで頑張ったんだ。例えあの大神が居ようとも、小田桐さんが居れば火の中水の中、大神の中でも行ってやるぜ」

「が、頑張ってね。平沢くん」


 そう言って小富士さんが平沢を応援している。

 ガラッと教室のドアが開いて、皆がその登場を見守った。


「おはようございます」

『おはようございます!』


 小田桐さんが教室に入って来て、一声に皆が声を上げて出迎えた。

 大神と違っているのは、やはり挨拶が心こもっているところだなぁ。


「小田桐様っ。さぁ、どうぞこちらへ。小田桐様のご座席はご用意しております」


 大神の手下がそう言って小田桐さんをエスコートしようと前に出た。


「ありがとうございます。ですが大変申し訳ありませんが。ワタクシは自分で決めますわね」


 そう言って小田桐さんは、大神の席からだいぶ離れた窓側の1番端の後ろへ近い席へと、自分のランドセルを下ろしてしまった。

 さすが小田桐さんだな。この学校の生徒で唯一、大神に対抗する事が出来る人だからな。


「くぅーっ! こんなルールが無ければ、俺は今からでも小田桐さんの隣か後ろへ行きたいのにっ!」

「2学期に席変えとかってあるの?」

「特級組には自由にいつでも席変えが出来るルールがあるよ。でも、新参者は1番後ろの席からってのはずっと変わらないよ。何か大神に認められる事があれば、自由に出来るんだけれど……。それはシモベになるしかないよ」


 まぁ僕は席なら大神の近くでなければ、どんなところでも構わないのだけどね。

 僕の席からだと、大神が遠くて僕はほっとしている。


 席に付いた小田桐さんの前に、大神がやってくる。


「おはよう、小田桐さん。今年も一緒になれたね」


 大神はカッコいいポーズもどきな、キザでウザいポーズを取りながら、小田桐さんの前に立った。

 そしていつの間に刺してあったのか懐のポケットから、1本の赤いバラを小田桐さんの机の上に置いた。


「君はいつもそうやって俺と一緒に居る事を恥じらう。しかし今年もこうやって一緒になれた。それは俺と小田桐さんが運命の愛で結ばれる運命にあるからさ」

「俺、鳥肌立ってきた」

「同じく。後、胃から何かでそう」

「あ、あはは……」


 僕たち3人が腕を擦っていた。


「そう言う恥じらいを持つ君も可愛くて素敵だ。しかし、今年くらいはその距離を縮めようではないか。俺の隣の席は君の席として予約してあるぜ。俺と一緒に今年1年、側に居られる特別な席だ。それは名誉であり、この学校の中で限られた人数の者が座れる特別な席さ。君はその3人のうちの1人になれる栄誉を与えてあげよう」


 あー、つまらない話しだなー。

 小田桐さんはと言うと、大神へ目を向けるとニッコリとほほ笑んだ。


「恐縮でありがたいお言葉ですが、このようなワタクシにはやはりとても勿体ない事ですわ。今年も去年と同じように、よろしくお願いしますわね」


 おー、かわして行くなー。やっぱ小田桐さんも嫌がってるんだなありゃ。


「そんな事ないぜ。今年も同じクラスになれた運命は、これは君が俺と会いたいと言う努力によって導かれた運命なのさ。そしてその努力に俺は感激した。それによって君は俺の隣の席へと座れる栄誉を与えるに十分に相応しい存在になったのさ」


「勿体ないお言葉ですわ。こんなワタクシなんかには、大神さんの横に居るなどと言う相応しき女性ではありませんわ。それに相応しい方が他にいますよ。昨年と同じようにその方たちと一緒に居た方が、大神さんをより目立たせる花になりますわ」

「何をそんなに謙遜(けんそん)しているんだ。小田桐さんだってとても美しい。それはこの俺でこそ相応しい存在であってこの俺以外には誰も吊り合わない――――俺だから――――なのだよ」


 大神もしつこーい……。ウザーイ。消えてくれー。


 去年辺りから小田桐さんは、大神に付き纏われてるな。

 1、2年生の時も大神と一緒だったみたいだが、見向きもされていなかった。

 なのに校内メタモルバトルランキングで4位と言う快挙を出した辺りから、大神は執拗(しつよう)に小田桐さんを狙い始めた。

 まぁそれ以外にも小田桐さんは美人だし、人辺りが良くて物腰柔らかなお嬢様で、男子だけでなく、女子からも人気が高い。

 そんな小田桐さんを側に置いておけば、自分のステータスが上がるからと言う感じもあるのだろう。


「――――さぁ、来たまえ。君の相応しい場所へ」

「何度も申し上げますが、ワタクシにはそのような身分高いところへの席へはいけませんわ」


 大神が執拗(しつよう)に迫ってくるも、それを拒む小田桐さん。

 だんだん大神の表情も険しくなってきたな。


「うわー、なんか大変な事が起こりそう……。小林先生を呼んでおいた方がいいかも」


 そう言って小富士さんは、教室を出て行って職員室へと向かって行った。


 海斗兄ちゃん……。

 憧れの教師になったのに、まさかの初担任から大神相手を押しつけられ、毎年愚痴吐きながら1年を終えてるんだよな。

 今年は僕も居る事だし、少しは海斗兄ちゃんの負担を抑えて上げよっかな。


「ん? おい、祐定。そっちは……」

「まぁ、任せてよ」


 僕は険悪ムードの中へと向かって行った。

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