ユカリの書 第4話 狙われた桜咲小学校 ― 4 ―
「やるしか……。んっ?」
っと、大神の頭の遥か後方から、何か物すごい勢いで飛んでくる物に目が行った。アレはなんだ?
アレは…………ミサイルっ!?
ドカァーーーンッ!!
「ぐふぁうっ!?」
大神の後頭部にミサイルが直撃し、大神が前のめりに倒れてくる。
大神の下敷きにならないように私は急いで下がった。
ズシーンッ!!
大神は地響きを上げながらその巨体を校庭に沈めた。
私はミサイルが飛んで来た方を見た。
そこには1羽のワシがこちらに向かって飛んで来ていた。
背にはミサイルが発射されたであろう、筒状の砲台が取り付けられている。
あんな装備を持っていてワシと言えば、兄さん以外にはいないな。
「……クソォッ! なんだ今のはっ!?」
大神は頭を抱えながら立ち上がる。
どうやら大神は4本足で大地に立つタイプではなく、2本足で立つのが基本スタイルな竜になっているようだな……。
翼が背中に生えた分、後ろに重心が行きやすくなったからか?
そんな考察をしていると、私の隣にそのワシが降り立った。
「ったくよー。だから大神には手を出すなってアレほど言っていただろうが」
「兄さん、どうしてここに?」
「んなこと、オマエが茶の木小学校に乗り込んだって聞いた時点で駆けつけてきてるっつうの。出番を海斗アニキに全部盗られちまったけどよ」
そうか。あの時、兄さんは居たのか。
兄さんは元の姿に戻った。
……あっ、元の姿と言ってもオジサンの姿に変装している。
「オマエか? この俺の後頭部に何かしやがったのは?」
「なんだ大神。翼が生えてやがるな。さっきまでそんなのなかっただろ」
その言葉に大神はにやけた。
待ってましたとばかりに自慢げにふんぞり返り、翼を広げてカッコつけていた。
「この俺の黄炎竜はさらなる進化を遂げてパワーアップし、翼が生えてより強くなったのだよ。名もさらに改良して、黄炎翼竜に変えたぞっ! これで空中戦でもこの俺に敵う相手はいなくなるというのだよ。まさに無敵となったのだ! はーーーはっはっはっ!」
ヒュンッ! ザクッ!
『あっ……!』
兄さんと声がハモった。
「いでえええぇぇぇーーーーっ!!!?」
大神の左目に矢が刺さった。
「油断大敵ですよ」
ちょっ……、斎藤……。油断したところを攻撃するのは確かに戦いには必要だけど。
「斎藤。今のは空気を読んで、兄さんに出番を譲って上げた方がいい」
「そ、そうでしたか? すみません。あの大神なので、手段を選ばない方が良いかと思って」
「まぁ、こう言うのは嫌いじゃないぜ。やるなオマエ」
「クソオオオオッ! また目がぁあああっ! 目がぁあああああああっ!!」
例え強くなったとしても、目だけはダメなんだなぁ……。
「よぉーしっ! 後はオレに全て任せな」
そう言って兄さんが前に出た。
「大神っ! オマエはユウにも大怪我させやがったからな。殺して、殺して、殺してまでやってやる。3回死にな!」
「くぅー……いてぇ……っ! キ、キサマは、頭の悪い言い方だな。いや、頭が悪いようだな。この俺を殺す事なんて不可能なだ。言い方から分かる通りにバカなヤツだ」
「さっき私に殺された癖に……。それと兄さん。変装」
「あっ? あー、悪い悪い。そういやぁ、変装をとってなかったな。オレの姿を見たら、そんな減らず口も言えなくなるだろうぜ」
兄さんは首元へ手を突っ込んでバリっと皮が破けるように上へ剥がした。
そして兄さんの本当の素顔が現れた。
「んー? なんだ。変装か。そんなものがどうしたって言うんだ?」
「オレの姿を見てもまだ誰だかわかってねー顔だな……。片目だから良く見えてねーのか?」
「ふん、邪魔をするならオマエも一緒に切り刻んでやるぞ。さっさとミックスジュースを飲め、それともその生身のまま引き裂かれて殺されるか? そうだ、そうしてやろうっ! 皆殺してやるよっ!」
「このオレの姿を見てもわからないとは、ボケてんのか? 頭がパァだなありゃ」
兄さんはサイドバックからミックスジュースを取り出してそれを飲んだ。
出る。兄さん最強のミックスジュース。
あのメタモルチームバトルプロ級世界大会で準優勝まで上り詰めたメタモルフォーゼが。
兄さんを包み込んだ煙が晴れると、そこには人の姿があった。
しかしその人の姿は、上半身が全く変わっていた。
片方の腕が3本で、計6本が両腕から生えており、1つの頭には左右にも顔が付いていて3つの顔がある。
兄さんは阿修羅と言う、守護神の姿になったのだ。
「阿修羅だと?」
大神もその姿を見て、ようやく目の前の男の正体に気が付いたようだ。
「ま、まさかっ!? 父上をあの大会で倒した阿修羅使いの黒堂 涼っ!」
「ユカリ、竜ってヤツはどう倒すか教えてやる」
そう言って兄さんがマジックリングから取り出した物は、機関銃2丁に刀を2本、メイスを1本に盾と言った6本の手に全ての武器を持っている。
軍でも使用されている機関銃はランクA。
あの刀も大昔の日本の有名な武将が使っていた名刀の2本、『水面之月影』と『雷神照光丸』と言う物だ。これはAランク以上に付けられる特別なSランクを付けられている。
そのメイスも盾も、海外の名立たる武将が使っていた名品のSランクにあたる代物だな。
「兄さんの武器。1度で良いから使ってみたいな」
「オマエに渡すと危なっかしいからダメだ」
こんな武器の数々、まず一般のメタモルバトルじゃ見かける事が無い武器ばかりだ。
プロの大会でも使用はAランクまでに限られているのに、Sランクともなると幻の武器が多くて、見る事すらなく一生を迎える人だっているくらいだ。
さっきから何も言わなくなった大神の表情が、その武器を見てさらに険しい表情になった。
「本物の実力者ってヤツの前に、怖気付いたか? 結局、オマエは一般人にしか、暴言を吐けない様な弱虫なガキだって事だな」
そう言われて固まっていた大神が焦った表情をしながらしゃべりだした。
「ふんっ! 父上を倒したからと言い気になるなよ! あの時は小林や木花のジジィがいたからな。だが、今はオマエ1人だ! キサマ1人で、このパワーアップした俺に勝てると思うか? それに武器だったらキサマと変わりなく持っているぜ!」
そう言って大神はしっぽの付け根にあるマジックリングから、武器を取り出して手に持った。
取り出したのは3メートルはあるかと言う大剣。大神にとっては小さいようには見えるけれど、大剣の中ではかなりの大きさだ。
「見ろっ! これが神剣バルムンクだっ! ランクはなんとSを超えた幻のSSランクだぜ。キサマらのような一般人にはまずお目にかかれない代物だ。これを見れたキサマらは運がいいぞ。はーはっはっはっはっ!」
うわっ! そんな物を持っていたのか!
大神に驚かされるなんてしゃくだけれど、まさかそんな武器が本当にあるなんて……。
アレは実在しているかしてないかさえ怪しい幻の武器の1つだ。
大神には勿体なさすぎる。もしかして偽物なんじゃないかと思えるぞアレ。
「アレが神剣バルムンクか。あるとは聞いたことがあるが、実物がオマエのところにあるなんて思わなかったぜ。それ、マジで本物か?」
「あぁ、本物さ。間違いなくねっ!」
大神が自信を持って剣先を兄さんに向けるが、それに臆した様子が全くない。
「オマエ、それを使った事があるか?」
「えっ……」
「オマエ、今まで4つ足の竜ばかり使っていたよな。それだけデカイ剣を振りまわす機会なんて、そうそうなかったんじゃね? それに今まで見かけなかったって事は、使ってるって訳じゃねぇって事だ。武器ってのは自分の手に馴染み始めてから、本当の力を発揮するんだぜ」
「うるさいっ! 天才とは、使わずとも100%の力を発揮できるのだ!」
「とりあえず準備できたなら、ぐだぐだしゃべってないで始めようぜ。オレも長くここにいられる訳じゃないんでね。『The Gate of different』っ!」
兄さんがその呪文を唱えると、校庭に描かれたウィッチフィールドの紋章が光り出す。
そう言えば突然の状況下で、これを使う事をすっかり忘れて闘っていたな……。
「ほら、かかってこいよ。まず先制はオマエにやるぜ」
「雑魚がっ! シネエエエエエェェェェェッ!」




