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ユカリの書 第4話 狙われた桜咲小学校 ― 3 ―

 …………ズシィーーーーーンッ!!


 その空気を壊す荒々しい音と振動が校舎を響かせた。


「な、何だっ!?」

「アッ!? アッ……、アレは……っ!?」


 斎藤が窓の外を見ている。

 私は涙を袖で拭き取って、斎藤が見ている方向を見た。


 そこには黄色の鱗を纏った竜が、校庭のど真ん中にいた。


「お、大神っ!?」


 まさしく大神が使っていたミックスジュース、黄炎竜にそっくりだった。

 しかし姿が少しだけ違う。


「翼が生えていますね……」


 そう。私が戦った時にはなかった翼が背中に生えていた。

 この数時間で何があったんだ?

 いや、それとも翼が無いミックスジュースを私たちに使っていたのか?


 騒ぎを聞きつけて、廊下に生徒や先生が出てきて、その大神の姿を見てざわめいている。


「グルアアアアァァァァァッ!!」


 大神は耳が痛くなるほどの大声で叫び出した。

 周りのみんなが耳を塞いで悲鳴を上げた。


「キサマラっ! よくもこの俺をコケにしてくれたなっ!」


 そう言うと大神は空気を胸一杯に吸い込み、そして火の息吹(ファイヤーブレス)を吐いた。

 校庭にある花や木が植えられた庭園がその炎の息吹(ファイヤーブレス)に焼きつくされていく。

 炎が大地に焦げた黒い後を残す。


「出てこいっ! この俺をコケにした連中らっ! 俺の目を奪ったヤツっ! 猿野郎っ! そして赤毛の女を出せっ! 出さなければ、俺は校舎を焼き尽くしてやるっ!」


 本当にそうするつもりか?

 そんな事をすれば大神は逮捕されて……。

 いや、それすらも揉み消すくらいなのか。大神の権力と言うのは……。


「嘘ではない事を見せつけてやる」


 そう言った大神は、再び息を吸い込んで、火の玉(ファイヤーボール)を校舎に取り付けられた時計へ向かって放った。

 火の玉(ファイヤーボール)が時計を破壊し、大爆発と共に校舎が大きく揺れた。


「キャーーーーッ!!」

「た、たすけてーっ!!」


 ジリリリリリリリリリリリッ!!


 学校の火災警報が鳴り響き、生徒はパニックとなって逃げ回った。

 大神……。キサマはドコまで最低なヤツなんだっ!


 私はミックスジュースを取り出した。

 それを飲もうとした時、斎藤が止めにはいった。


「いけません! 大神の前に出たら、八つ裂きにされますよ! 勝てるわけがありません!」

「しかし、みんながっ!」

「大神も人がいる廊下などには攻撃はしないでしょう。皆と共に逃げましょう!」


 くっ……。

 戦うか、逃げるか……。

 戦いたいけれど、1人で戦っても勝てない相手だと分かっている。

 けれど出て行かない限り、学校は大神によって破壊されていく。


「出てこないで逃げるつもりか? だったら仕方が無い」


 大神はこちらに向かって飛んで来た。


 ガシーンッ!


 大神は校舎にへばり付くと窓を破壊して、生徒が逃げ惑う廊下へと手を伸ばした。

 その迫る手に生徒は押し合い潰し合いに逃げ惑う。


「い、いやーっ!? たすけてーっ!!」


 そして大神が1人の女子生徒を掴み上げると、再び飛んで校舎へと降り立った。


「放してっ! いやぁーっ!!」

「くっくっくっ、オマエラが出てこないと言うのなら、コイツをズタボロにするだけだ」


 そう言った大神は、女子生徒の服をビリッと破いた。


「キャァーーーーッ!?」


 女子生徒は破かれた部分を必死に手で隠す。


 ……昔、私がお姉様にした行為と全く一緒だ。

 こうも酷い事をしたんだと、客観的に見れる今なら昔の私をブッ飛ばしたい。


「……やはり出るっ!」


 彼女を救わなければ、私の過去の罪を代償を(つぐな)う示しが付かない。

 ミックスジュースを飲んで赤毛の侍へとメタモルフォーゼする。

 マジックリングから武器である刀を腰にさした。

 今回、違法武器ではあるが何かあった時用と思って、本物のサブマシンガンとC4プラスチック爆弾を持ってきている。

 カバンからマジックリングに武器を入れ替えて行く。


「行くのですね……」

「あぁ……。死んでも逃げなかった私には悔いはない」


 私は1階の窓から外に出た。


「大神っ!」


 そして私は大神の前に飛び出た。


「赤毛の侍女……。後は俺の目を潰しやがった鳥頭の女に、ちび猿か」

「その生徒を放せっ!」

「あぁ? 後の2人が出てきたらな」

「出てくればいいのでしょうっ!」


 私の隣に空から降り立ったのは斎藤だった。姿はタカの頭をしたいつも使うメタモルフォーゼだ。


「よぉーし。後はちび猿だ」

「あの子は小学2年生の小さい子です。彼は許してあげて下さいませんか? 責任は上級生の私が全て受」

「ダメだっ! 2年生だろうが幼稚園生だろうが、この俺をコケにしたヤツには、俺の誇りを傷つけた責任を負わなければならない。さっさと出てこいっ! ちび猿っ! でなければ、コイツを潰すっ!」


 そう言った大神は女子生徒を手で握りしめた。


「ギャアアアアアァァァァァァッ!!」


 女子生徒が苦痛に叫んだ。

 生身なのにこんな攻撃されたら……。


「やめてくださいっ!」

「大神っ! そんなことして捕まるぞ!」

「ふんっ、俺が捕まるわけがないだろう。政治のトップには俺の祖父が居る。全てが思うがままだ。この俺がルールなんだよ! 俺に逆らうヤツは全て犯罪者にできるんだよっ!」


 今の発言は撮っておきたかったな……。

 さすがに茶の木小学校で映像を撮りに来た外国人のパパラッチは今はいないだろうな。


「ったく、まだ出てこないのか? 臆病者の猿め」


 健……。出てこないで。

 アナタまで大神にやられたなんてなったら、お姉様と両親に顔を見せられない。


「しょうがない。オマエの服を全部引き裂いて真っ裸にしてやる」

「い、いやっ!?」

「まてっ! 変わりに私が人質になる!」

「ユカリさんっ!?」


 そう言って私は大神の前に歩きよった。


「ほぉ、オマエが変わりに? そうだな。オマエを引き裂こうとしていたんだよ。大人しく八つ裂きにされると言うなら、コイツを放してやっていいぞ」

「あぁ、そうなるから、その女子生徒を放して」

「いけません! なら私が人質になりますっ!」

「どうせだったらオマエら2人、人質になりやがれ! オマエは羽をもぎ取って、足で踏みつけておいてやるからよぉ!」


 斎藤、何も言わなければ私1人でよかったのに……。

 いや、さっきも言っていたか。1人で全部背負い込むなってか……。


「まずはオマエを捕まえてから、コイツを放してやる」


 大神の手が私に迫ってくる。


 しかしな大神……。


 私と言うヤツは悪いヤツなんだよっ! 黙って大人しくしてると思うなよっ!

 変身した時から今まで私は、錬気を刀に集中させていた。放つ時は今っ!


 一か八かの必殺技を使ってやるっ


「うぁぁぁああああああああっ!!!!」


 突然の雄叫びおともに神速の居合で刀を振りかざした。


 ザシュッ!!


「なっ!?」


 刀が何もない空間を斬った。大神に刃は当たってはいない。


「いつっ!? うっ? な、なんだっ!? ごぶっ、ごぶえっ!?」


 だが大神は口から血を大量に噴き出した。


「何が起こっているのですかっ!?」


 この技の名前はまだ無い。

 私が刀から放った闘気の斬撃は、この刀で斬れる物であれば斬りながら数メートル先まで抜ける。

 つまりはあの硬度な鱗は斬れないが、それを貫通して中身の柔らかい肉は斬り抜けると言う事だ。内臓はもちろん。脳だって斬れる。


「あっ、あぎゃあああああーーーーーっ!?」


 大神は女子生徒を離して両手で頭を抱えた。


「キャアアアアァァァァァッ!?」


 私はもうダッシュして、女子生徒を地面に落ちる前に受け止めた。

 そのまま走り続けて、大神から遠く離れた場所に彼女を下ろした。


「遠くに逃げて」

「あ、ありがとうっ!」


 女子生徒はお礼もそこそこに慌てて逃げ出して行った。


「あぐぅっ! ぐっ、ぐぎぎいーーーっ!?」


 大神を見るとまだ痛みに悶えていた。縦半分に斬ったから、脳や内臓まで斬ったのにまだ生きるとは、竜と言うのはしぶとい奴だな……。

 普通のヤツに試してた時は、即死だったのにな。


「な、何をしたのですか?」


 斎藤が私の側に駆け寄って来て、大神の様子を聴いてきた。


「新しい技で、大神の中身だけを斬った。脳と内臓を斬ったから必ず倒せる。普通、あっという間に死んでもおかしくないのに、私も驚くほどしぶとくてウザい」

「おべっ!?」


 その人声と共に体がピクンっ! と痙攣(けいれん)すると大神が光り出して元の姿となっていった。


 勝った……。あの大神に勝ったっ!

 お姉様っ! 私はやりましたっ! アナタの敵をこの手で打つ事が出来ましたっ!!


「こ、これは一体……」


 大神は自分の現状が信じられないと言う感じに、周りを見回していた。


「私は勝ったぞっ! 大神っ! オマエの負けだっ! 大人しくここから出て行けっ!」


 私は大神の前に立ちはだかり、その勝利の宣言をする。


「う、嘘だ……。こんなことは……こんなことは……っ!」


 大神が顔を伏せてワナワナと震えている。


「許される訳がないだろうがーーーーーっ!!」


 大神はマジックリングからアタッシュケースを出すと、その中のミックスジュースを取り出した。


「あっ!? 待てこのっ!」


 私が止めようと掴み掛かったが、すでに飲みほした後だった。


「くそっ!」

「殺してやるよぉーっ!! オマエは死刑決定だぁーっ!!」


 大神は煙に包まれていく。

 こうなってしまってはもう遅い。私は大神から離れた。


「グルアアアアアアッ!!!! コロスーーーーーーッ!!!!」


 大神は再び竜の姿となって即、私に向かって腕を振りおろしてきた。


「ふんっ!」


 私は残像を残してその場から居なくなる。

 大神は残像を空振りしたが、その場の地面が大きくえぐれるほどの威力だった。


 もう1度あの技を出して大神を仕留めるしかない。

 しかしこれはすぐに出せる訳でもない。

 多くの闘気を刀に集中させていかなければならない為に時間が掛かる。

 責めて2分は錬気を溜めて行く時間が必要になる。

 その間は逃げながら力を蓄えて行くしかない。


「うらぁっ!! 死ねっ! 死ねぇーーーーっ!!」

「くそっ! シツコイっ!」


 だがまだこの技に慣れていない。動きながらだと集中しにくいぞ。

 それに疲れも何も無いフルな状態だったから、すぐに十分な錬気を集められた。

 しかし1回使うとかなりの疲労が私を襲い、連発しようにも次を出すのにとても苦労する。

 これは2分以上は掛かってしまうな。どれだけだろう……5分か? それ以上か……。

 そんな悠長(ゆうちょう)に闘っていたら、暴走した大神がまた大変な事をやらかすかもしれない。

 その前に何とか大神を仕留めないと……っ!


「このっ!」


 斎藤も戦闘に加わって、アーチェリーを大神の目に向けて撃ち込む。

 しかし大神は矢を手やしっぽで払い落して、前みたいな事は中々できそうにない。


「ユカリさんっ! さっきの技をもう1度お願いしますっ!」

「やってやるけど待てっ!」

「死ねぇっ! 死ねぇっ! 死ねぇーーーっ!!」


 大神の繰り出す蹴りやしっぽの攻撃を必死に避けて行く。

 こんなんじゃ、錬気を溜めるのに集中が出来ないっ!

 この技に頼らずに、他の方法を考えた方がいいかもしれない……。

 何がある?


 C4プラスチック爆弾をあの口の中に入れて爆発させればイケるか?

 それまでにどうする?

 放り投げて上手く入るかどうか……。


 …………私が大神へ喰われると共に起爆スイッチを押すか。

 お姉様……。私もあの時と同じように……。


「やるしか……。んっ?」


 っと、大神の頭の(はる)か後方から、何か物すごい勢いで飛んでくる物に目が行った。アレはなんだ?

 アレは…………ミサイルっ!?


 ドカァーーーンッ!!

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