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ユカリの書 第2話 復讐の策謀 ― 4 ―

 そして今、私は体育倉庫ではなくてその外にいる。

 体育倉庫にはパソコン部の部長、七瀬(ななせ)がいる。

 マットの上に座って斎藤が来るのを待っている姿を、私は手に持つノートパソコンのモニターで確認する。


「あの、本当に大丈夫ですか?」

「任せて。七瀬は私の指示通りに話してくれるだけでいい。もし斎藤に捕まったのなら、全部顔の知らない組織長に、パソコンを壊されると脅されてやった事だと言えばいい」


 そうスマートフォンを通して会話をしていると、ガラッと体育倉庫のドアが開いた。

 入って来たのは間違いなく斎藤だ。


「まさかパソコン部の部長が、復讐メンバーの組織長だったとは……」


 入って来てまず一言、そう言った。


「いえ、すみません。私はその組織長の代理人として、ここに居ます」


 七瀬がそう答える。


「七瀬は組織長の声を斎藤に伝える連絡役と答えて」

「私は組織長の声を斎藤さんに伝える連絡係です」

「直接会うと言う訳ではないのですね。正体を隠して会談とは、慎重な方ですね」


 携帯の会話をボイスチェンジで声色を変えて直接話をしてみる手もあるが、私の口調、口癖などから人物が特定しかねない。

 話すのが苦手だし、そんな別人のように器用に会話なんてできない。

 なので七瀬を通してから、私の声とは全く変えて伝えなければならない。


 そして斎藤の様子はカメラを通して外にいる私のノートパソコンのモニターへ。

 声も聞き取りやすいようにマイクも用意した。

 映像と音声はケーブルを通して、外に居る私のモニターへと送られる。

 これらはパソコン部の備品を借りている。七瀬の全面協力がとてもありがたい。


「それで、こんなことまでして私と話したい事はなんでしょうか?」


 私は七瀬へ指示を出す。


「斎藤さんが本当に復讐へのメンバーとして加入してきたのか、その真意を問いたい。だそうです」

「なるほど……。私が生徒会副会長であるからでしょうね。私も入る時に、疑われるとは思いましたよ」

「何が目的ですか?」

「そんなこと聴かずともわかりませんか? 私はあの大神にさんざん傷めつけられ、親友の心を傷つけられた。アレほどの事されて、恨みが無いなんて考えられませんと思いませんか?」


 確かにそうだ。動機は必ずそう来るとは思っていた。


「では、その復讐する大神に対して、何をしたいと思っていますか?」

「掲示板に書かれていた黄炎竜(こうえんりゅう)の大神を倒してプライドをズタズタにする。しかしあの竜と対峙するのに、大神と闘った経験者を求めているのではありませんか? ユカリさん」

「えっ?」


 最後、なんて言った?


「七瀬さんの表情からすると、図星の様ですね。ユカリさんも詰めが甘いですよ。やり方が慎重すぎます。これほど警戒し、策略する人物は、この学校の中でも数が知れています。そして最近、パソコン室にそんな行く事が無いユカリさんが、パソコン室へ頻繁に出入りする姿も目撃されていますよ」


 ……全て見透かされていたか。

 さすが斎藤だ。だてに生徒会副会長、兼生徒会長をしている訳ではないか。


「あの……。すぐそちらに行くそうです」


 私はノートパソコンの電源を切って、体育倉庫の中へと向かった。


 体育倉庫の中へ入ると、第一声に私は斎藤へ文句付けた。


「せっかく準備したのに……」

「もう少し遊びたかったですか?」


 斎藤はしてやったりな顔をしていた。


 私は七瀬にペコっと謝った。


「備品まで貸してもらい、ここまでしてもらったのに、上手くいかなくて申し訳ない」

「そんなのいいですよ。ちょっとサスペンス感があって、ドキドキして楽しかったですし。あの、私は片づけてきていいですか? 外に出してあるパソコンが気になりますし」

「お願い」


 七瀬は外にあるパソコンの片づけに出て行った。


「それで、斎藤。本意はどっち?」

「復讐です。生徒会としては止めに入る立場であるのは、私もわかっています。しかし……」


 斎藤の表情は変わらなくても、その目を見た瞬間に背筋が凍る思いが走った。


「道徳に逆らってでも、憎しみが溢れて抑えが付けられませんよ」


 獲物を射ぬく殺意に満ちた目だった。その本気が伝わってくる。


「今まで築き上げて来た物を、全て失ってでもやるの?」

「えぇ、それが私の怒りと屈辱、そして大切な友に報いる道となるのなら」


 斎藤が私に向かって手を差し出す。


「お願いします。私の力をメンバーに加えて頂けませんか?」


 私は差し出された手を握り返した。


「もちろん、喜んで。斎藤とお姉様の(かたき)を討とうっ!」


 そして私たちは生徒会が裏で手引もしてくれるようになり、大神への復讐メンバーの組織は、全生徒の半分を上回る大きな組織へとなって行った。

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