ユカリの書 第2話 復讐の策謀 ― 3 ―
「ねぇ、知ってる? あの大神へ復讐する為のメンバーが立ちあがってるんだって」
「それホント? 誰がやってるの?」
「それは誰かってわからないけれど、復讐メンバーに加わるには学校内のパソコンでしかいけない掲示板に、自分の名前と携帯のメールを入れるんだって」
「復讐って何をするんだろう……」
「それはその掲示板に内容が書かれてるみたいだよ。けど、あの大神に手を出すなんて、怖いよね……」
「だよね。選抜メンバーの人たちがとても可愛そうだったけど……。私もあんな目にあいたくないな」
廊下をすれ違う女子生徒がそんな噂を話している。
大神へと復讐するメンバー組織長はこの私だ。
出来るなら誰も犠牲を出さずに私1人で大神と戦いたかった。
けれど私1人で立ち向かったところで、何もできずに無念のうちに返り討ちにあうだけだ。
やはり人手がいる。
それには私と同じ志を持つ者の協力が必要となってくる。
学校の中を探し廻って、大神への復讐心を持つ者はやはりいた。
パソコン部の部長も私の意見に賛同してくれて、現在はこのようなメンバー集めの方針が決まった。
こんな事、先生にでもバレたらすぐに止めさせかねない。正体がばれない様に慎重に行動しなければならなかった。
今朝の朝礼でもこのような事は止めるようにと生徒指導の先生が話していたが、サイトの観覧を止めてもすぐに新しいくアドレスに変えて立ち上がると言うイタチゴッコ状態。
この犯行を行っている根元から排除、つまりは私を捕まえなければこれは止まる事はない。
私は誰に止められても止めない。
必ず大神へ、我らの受けた傷の代償を追ってもらわなければならない。
出来る事ならメタモルバトルが得意な生徒を6人は集めたい。
そして実力がなくとも数で補う事もできるから、出来るだけ多くの賛同者が集まってくれるだけでも構わない。
大神を倒す方法。
それはまず大神の目を潰し、視力を奪う事が重要だった。
普通メタモルバトルのルール状、目潰しは違反とされてる。
だが私たちが大神と戦う理由は復讐。あの惨劇のお返しには、目潰しなんてお釣りが出るくらいの行為としか思えない。
視力を奪えばこっちの物だ。手足を拘束して動けなくし、後は鱗を剥ぐなり、毒を注入するなりとジワジワと傷めつけてやればいい。
しかしその肝心の目潰しを行う方法が出来る実力者が集まらなければならない。
大神に近付けるまでの度胸と運動神経の持ち主。
もしくは遠距離からの狙撃で、小さい的をピンポイントに狙える者。
その狙撃の名手と言える人は、この学校で1人しか知らない。
和弓の扱いは日本屈指の達人の名家の生まれ、斎藤家の長女。
斎藤 嵐。
お姉様の幼馴染で、あの悲劇の犠牲者の1人。
あの後は体調の方もだいぶ回復して、通常どおりの学校生活を送れるようになった。
そしてアレから毎日、1人で誰にも知られずどこかに行く事が多くなった。
何をしているのかとこっそりついて行っても、すぐにバレて追い返されて、ドコに行って何をしているのかが分からなくなる。
私は心配になる。しかし斎藤は心配しなくてもいいと言う。けど、悩みがあるなら相談くらいしてほしい。
いつもお姉様としか悩みを打ちあげないが、お姉様はあんな状態だ。この時ぐらい、私にも頼ってほしい。
そう頼られて無いってことは、まだ私の事を許してくれてないってことだろうな。
あの日を境に少し近づけた感じがあるけれど……。私の勘違いだったな。
斎藤が力になってくれれば、これほどの心強い事はないけれど。
生徒会副会長である斎藤が、こんな危険な企みに賛同する事は無いだろう。もし私がやっているとバレてしまえば止めに入る立場だ。
惜しい実力者であるが斎藤の事は諦めて、他に腕のいい狙撃主を探している。
私は周りに誰もいない事を確認してから、パソコン部の部室の前にやってくる。ドアに合鍵を刺しこんで中に入った。
パソコン部の部長に借りているので、この鍵は兄さんの様に盗んではいない。
掲示板の管理と賛同したメンバーのチェックをする為に、一時的に借りているだけだ。
パソコンを起動して掲示板を開き、管理画面を起動する。
昨日の放課後にチェックしてから、賛同者が4人増えたな。でも、まだ人数的に足りない。
それに大事なのは実力者だ。この桜咲小学校にいる実力者をチェックしてあるが、その人たちが入ってくれて入れば、その場で大喜び上げてしまうのだが……。
三浦……大園……、夜全。おぉっ! 願いは届いて狙っていた人が入ってくれた。やった!
そして最後の1人は斎藤……。
「えっ?」
その斎藤の下の名前を見ると嵐だった。
この学校に同じ名前の人はいたっけ?
斎藤と言う名だったら、他にも居そうだし……。
そして嵐って付くなら、それは日本中探せば居るだろう。偶然この学校に2名いると言う確立だってあるだろう。
私は斎藤が記入したアドレスと、私の持ってるスマートフォンに登録してあるアドレスと見比べる。
一緒だった。まぁ、間違いないとは思っていたが、これは……。
私は戸惑った。これは本当に私の志と同じく立ち上がったのかと。
もしくは生徒会としてこの行為を止めるべく、自ら潜入調査に来たのか。
その真意がわからない。
「…………」
私は斎藤のアドレスに、復讐メンバーに送るように新しく作ったアドレスで、組織長と斎藤で会談すると指示を送った。
待ち合わせは人気の無い体育倉庫。
その真意を確かめたいと思った。もし、一緒にメンバーとして来てくれるなら……。
その内容を送ってから私は斎藤と会う為の準備をする事にした。




