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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第9章 ユートピア遊園地の平和な一時
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ユカリの書 第2話 オバケ屋敷でのユカリ ― 5 ―

 私たちは1階へ降りてすぐ近くのロビーの前に出てきた。

 でもすぐには行かない。なんでかって言うと、ここは外と中を行き来できる場所。

 つまりは人通りも多い場所だそれに身を隠せる場所が多くある。つまりは絶好の驚かしポイントなので、絶対に何かあるに違いないのだ。

 お姉様のビビったポイントは1ポイント。5ポイント以下の景品を狙っているからには、ここで驚く訳にはいかない。細心の注意を払って外にまで行かなければならない。


「んー、誰も居ない感じがするけど……。でも気配を消して待っているかもしれないね」


 私も人の気配は感じない。しかし、明らかに何かがあるだろう。


「……お姉様。1つ提案がある」

「ん? 何?」

「私のビビったポイントは12にもなってる。もう驚かされても意味が無い。なら私が先行して確かめてくる」

「え? 大丈夫なのユカリちゃん。そんな1人でいくなんて」

「が、ガンバる。それにお姉様を守るにはこれが1番いい案。私が犠牲になれば、お姉様が助かる……」

「だ、ダメだよぉーっ! ユカリちゃんを犠牲になんてできないっ!」

「……私もしっかりしないといけない」


 私はお姉様の裾を掴んでいた手を離した。


「お姉様がガンバって竜を克服した分、私もこんな事にいちいち怯えていたらダメっ! 私もガンバらなきゃいけないからっ!」

「ユカリちゃん……」


 そう。私だってこの弱点を克服しなければ、これから先にこの事で大きな失敗をしてしまうかもしれない。

 だからこの恐怖に、鞭を打って耐えよう!


「わ、私の勇士をっ! ひぃっ。お姉様っ! ふぅっ。見ていてくださいっ! はぁっ」


 私は何度も深呼吸して、手に力を入れた。


「来るなら……、来いっ! うわぁぁぁああああああーーーーーーっ!!」


 気合と共に駆け出した私は、ロビー中央にまで全速力で向かった。


「掛かってこいっ! オバケ共っ! 私はここに居るぞっ!」


 私は全神経を周りに集中させた。出てきたら反撃してやるっ!

 いや、反撃と言っても攻撃したら失格になって追い出されるから、驚かし返すと言う反撃だ。


「…………っ」


 が、何にも起らない。いつ来るっ!


「…………」


 しばらく待っても、本当に何にも起らない。


「……気合が空回りした」


 私はガックリとうなだれた。なんかカッコ悪い……。


「お姉様、大丈夫で」


 カチッ。

 プシュゥーーーーーーーーッ!!


「ピィキャアアアアアアアアァァァァァァーーーーーーッ!!?」


 突然地面から勢いよく吹き出した白い煙に、私は腕を右往左往に振りまわしたっ!


「ユカリちゃんっ! 大丈夫っ!?」


 白い煙が晴れたそこには、格闘家の時の構えをしている私がいた。臨戦態勢だけは体が本能で動いているなこりゃ。


「な、何が起ったっ!?」

「スモークマシンだよ」


 あ、あぁ、炭素ガスを噴き出すスモークマシンか。


「あっ。これだね。このセンサーに足が通ると反応するんだよ」


 そう言ってお姉様がそこに足を出す。

 プシュゥーーーーーーーーッ!!

 私たちの足元から勢いよく噴き出す白い煙。

 ……くっ、不覚だ……。このオバケ屋敷には、トラップもある事もすっかり忘れていた。


「大丈夫だった? ユカリちゃん」


 ま、まぁ……。お姉様の為になったのなら、私の努力も報われたな。


「っと言うと思ったかーっ!!」


 突然お姉様の声色が変わり、前髪で覆われていた顔がバッと開いて、その表情がバケモノになっていた。


「ギィヤアアアアアアアアァァァァァーーーーーッ!!?」


 な、なんでっ!? お姉様っ! ウソっ! ドウシテッ! な、何が何やらわか、わが、わかりませんっ!?


「ぷっ、ぷくくっ! あーっははははっ! ユカリさん、思いっきり引っ掛かりましたねっ!」


 お姉様の姿をしたバケモノが、どろっと溶けだして液体状になった。

 その液体が動き出して形を形成していくと、そこに現れたのは斎藤だった。


「さ、斎藤っ!? な、ナゼっ!」

「いやー、ユカリちゃん。ごめんね。ちょっと前にそこで嵐に驚かされちゃった」


 そう言ってお姉様は、先ほど私たちが別れた場所から現れた。


「お、お姉様っ!? ほ、本物っ!」

「うん、本物だよ。ほら」


 そう言ってお姉様が前髪をどけて、ちゃんとお姉様の顔をしたお姉様だった。あぁ、もう何が何やら訳がわからくなってる……。


「斎藤……。まさかあのミックスジュースか。カメレオンウォーターを使った?」

「正解です」


 そう言うと斎藤の姿がまた液状となって、今度は私の元の姿そっくりに変わる。

 このミックスジュースは、液体状となってどんな物にも形を変えられる。ミックスジュースの中では操るのに高度な技術が必要となる難しいメタモルフォーゼだ。

 市販で売られている事は滅多になくて、かなり貴重で値段が高いミックスジュースだ。

 斎藤がこんな物を持ってきてるなんて、思ってもみなかった……。


「聴き覚えのある声がロビーの方からしてくると思って来てみたら、花音さんを見つけてたのですよ。花音さんを驚かせたら、その先にもユカリさんが居るので、花音さんには黙っていてもらい、ユカリさんも驚かせました」

「くっ……、斎藤にしてやられた……」

「あははー、私も突然下からぶわって現れた嵐に、驚かされちゃったよ」

「ユカリさんも、まだまだですね。もっと精進しないといけませんよ」

「うぅ……、私だって……、ガンバったのに」


 斎藤は私の顔でニッコリと笑うと、頭をポンポンと叩いてくる。


「……ねぇ、嵐。アナタは本当に嵐?」

「え?」「なっ!?」


 そうお姉様に言われた斎藤は心底驚いていた。


「嵐と違うよ。しゃべり方もちょっと違うし、私の事をさん付けしてたでしょ。私とは呼び捨て仲間だよね。それにカメレオンウォーターを使っていたら、誰にでも慣れるもの。アナタは斎藤 嵐じゃないね」

「……ふっ、くっくっくっ!」


 私の顔が実に悪役な笑い方をしていた。私の顔で遊ぶの止めてほしいのだが……。


「少し斎藤の情報を集めただけじゃ、やっぱ身近な人物と接触するとバレるな。少しでも違う違和感があると、そこからボロが出ちまうぜ」


 そう言うと私の姿がまた液状となって形作られる。

 そしてその姿は兄さんになった。


「兄さんっ!?」

「涼さんだったんだっ!」

「中々に鋭いな花音は。油断していたぜ」

「兄さん……。まさかここで会うなんて……」

「コンサート会場で会えるとばかり思ってた……」

「まぁオレだってせっかく来たんだ。コンサートライブが始まるまでそこらで遊ぶさ。でもまぁ、ユカリとこうしてばったり会うとは、オレも思っても見なかったぜ」

「本当だ。そして私をあんなふうに驚かせて……。兄さんのバカ、嫌いっ」

「はっはっはっ、わりぃな」

「あ、あのっ!」


 お姉様が顔を赤くして、兄さんの前に歩み出た。


「私っ! 涼さんの事が好きですっ!」

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