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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第9章 ユートピア遊園地の平和な一時
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ユカリの書 第2話 オバケ屋敷でのユカリ ― 3 ―

『わあぁーっ!?』


 そんな健の声がさっき向かって行った方から聞こえてくる。どうやら驚かされたらしいな。


「負けてられないね。私たちもっ! そしてお札5枚集めないとっ!」

「はぁ……。ここは人間しかいない。ここは人間しかいない」


 私はそう言葉を吐きだしながら心に思いを止めておこうとする。

 そうだ。驚かすのは人間しかいない。幽霊なんていない。

 健みたいな人たちなんだ。そんな人たちに良いようにされていいのか私は。相手は人間だ。本物じゃない。情けないぞ私。


「この部屋は入れそうだね」


 入るのですかっ!?

 お姉様がドアを警戒心なく開けた。

 待ってそれ急に出てきたらどうするつもりなのお姉様っ!?


 まぁそれは無かったけれど……。お姉様が部屋の中へと入って行くので、ひっついている私も連れて行かれる。

 中は……病院患者が寝る場所だ。

 あの大会の残虐事件で、お姉様と斎藤が寝ていた場所とそっくりだ。


「よぉーし、ベッドの中とか調べよう。お札があるかも」


 そう言ってなんか人が入ってそうな膨らみのあるベッドに近づいていく。

 なんで態々それを調べようとするっ!

 私は側に近寄りたくないので離れる事にした。壁に寄り添ってお姉様を見守る。


「ていっ!」

「ひぃ……っ!」


 布団を掴んで思いっきりひっぺ返した。私は堪えられずに目を反らす。


「なんだ。ただの枕だったよぉ」


 お姉様が残念そうに言ったので見てみると、たしかにタダの長い枕だった。


「あっ、でもお札だっ! やったぁーっ!」


 そう言って布団の中にあったお札を見つけて、喜んでこちらに見せるお姉様。


「あぅあぁーーーーっ!!」


 上から突然、私たちの間に何者かが現れた。


「きゃああああああああーーーーーーっ!!?」

「やっぱ上にいたかー」


 血まみれの患者服を着た女の人が、足に紐をくっつけてまっさかさまの姿で落ちて来た。


「ひーっひひひひっ!」


 その人は紐を体内にしまうと、足早に部屋を出ていってしまった。


「クモの能力を持った人だったね。壁にも貼り付ける上にクモの糸を使って頭上から驚かす。こう言う方法があると思ってたよ」

「お姉様……、冷静すぎ……」


 正直私はお姉様の分まで驚いてないか? 2人分の疲労感を今味わっている気がする。


「かなり手慣れていたし、スタッフさんかな?」


 そうかもしれない。驚かせ方が健と違って真に迫っていた。ここには常に徘徊しているオバケ役のスタッフもいる。

 その人たちは客たちよりとても上手い。


「しかしお姉様。よく上に居るとわかったね」

「うん。お札見つけた時に、置いたスタッフさんが近くにいるかもって警戒してたんだけど、ビンゴしちゃった」


 そのオバケ役のスタッフがお札をランダムに置いて周っているので、お札があるところ、プロのオバケ役有りと思っていてもいい。

 それを忘れて私は油断していた……。

 ちなみにそのスタッフにもビビリ度測定機が付けてあり、スタッフ相手に驚かす事に成功するとポイントに加えてお札も貰える。


「はぁ……。あ、もうビビったカウンターが3回だ」

「3回っ!? え? 2回驚かされたよね? 1回は何で驚いてるの?」

「わ、わからない……」


 もう私はずっとメーター振り切ってるんじゃないか?


「しょうがないなぁユカリちゃんは。私は……。まだ0回だよ」

「お姉様は全然ビックリしてない。どうやってるの?」

「先読みしているから~」


 先読みか。

 それなら私だって負けない。

 そうだ。お姉様が言う通りに先読みしていれば怖くない。

 このベッドの下から人が出てきてもおかしくはない。その枕だったと思った物から突然人だって現れるかもしれない。今私がひっついている壁からもゴーストタイプを使ったヤツが、壁をすり抜けて驚かしてくるかもしれない。

 アレ? 何もかもが怪しく思えて来た。疑心暗鬼に陥っている。落ち付け私。


 取り合えずこの部屋の中を全て捜索しつくした。お姉様と一緒に部屋を出て、先へ進み始める。相変わらず背中にひっつきながら歩く。

 みんな人間なんだから、そんな怖がらなくても大丈夫なんだ。

 私は同じ事を呪文の様に心に言い聞かせていく。頼むから早く終わってくれこの時間。


 お姉様が廊下の角を曲がる前に先を覗き込んで確認した。


「あ、なんか居る」

「ひぃっ!? な、何が居るぅ!?」


 何かが居たようだ。何が居たんだ。何がじゃなくて人間が居たんだ。それであってくれ! 


「相手はこっちに気づいてなさそうだね。よぉーし、チャンスだよ! 驚かせちゃおうか」

「い、いっ、いぃ、今やらなくてもいいと思う。後でででも」

「しぃー。気づかれちゃうよ。さっき教えてもらった通りにいくよ」

「マジぃー……」

「ほら、そこに隠れて。私はあの人をこっちに誘い込むから」


 お姉様は相手が居る廊下に髪を乱れさせながら寝そべる。

 えぇっと、段取りはお姉様がうめき声を上げながら廊下で倒れる。

 相手が気が付いてこちらに近づいて来る。

 なんだ、ただの素人かと油断したお姉様の横を通り過ぎた時、私が出てきて驚かす。

 お姉様に意識を注目させている時に、私が別の場所から急に現れたら、そりゃ驚くだろう。

 私は廊下の角に隠れておく。


「う、うぅ……。う~ら~め~し~や~」


 お姉様はその場でうめき声を上げた。うらめしやって……。

 相手もお姉様に気が付いたらしく、こちらへ慎重に近づいてきている。


「な、なぁ……。そこにおるのに近づかなくてもえぇやんかっ……」

「大丈夫なの。こんな見え見えなお芝居なんて怖くないの」


 相手は2人か。

 1人は首が長く伸びている。首長女か……。

 もう1人は着物を着た女の子か。こちらは何のメタモルフォーゼをしているか見当が付かないな。

 2人はお姉様へ注目しながらこちらに来ている。これなら作戦通りにいけるか。


「た~た~り~じゃ~」

「お芝居が下手なの。残念なの。もっと面白いと思ったのに」


 お姉様が相手にゆっくり這いずり近寄っていく。


「な、なんもせぇへんようになっ!」


 ビクビクしながらお姉様の横を通り過ぎて行く首長女。い、今かっ?


「わぁーーーーーーっ!!」

「きゃあああああああーーーーーーっ!!?」

「きゃあっ!?」


 よ、よしっ! 驚かせることが出来たぞっ!

 首長女の人は着物を着た女の子をおいてけぼりににしてもうダッシュで逃げていった。


「ま、待ってなのーーーーっ! アンジェお姉ちゃんーーーーっ!」


 女の子が慌てて首長女を追いかけていった。


 ん? アンジェお姉ちゃん?

 薄暗いのと顔を覆う程の長い前髪で視界が悪い私。さらに相手のメイクもオバケ仕様に変わっていたから気が付かなかったけれど……。

 声からして私が戦ったアンジェシカだと、今やっとわかった。

 まぁ子琵パーキングエリアで見かけたから、ここの遊園地に居てもおかしくはないと思っていが、まさかこんな処で会うとはな。

 場所が場所でなきゃ、話などをしたかったけれどな。


「やった。大成功じゃんっ!」


 お姉様が床から長い髪をがばっと上げて、すくっと立ち上がるとカウンターを見た。カウンターにはビビらせた回数が2ポイントになっていた。

 私のカウンターにも同じように2ポイント。それでなんでかビビったカウンターが5ポイントにまでもう達していた。え? 何? 私もう終わり?


「これで後3ポイントだねぇ」

「私、もうビビった5ポイントで終わった……」

「えぇー……」


 お姉様が呆れていた。わ、私だってどこで、なんでこんなビビったと思っている。

 ちょっと私のだけ反応よすぎるんじゃないか? このセンサーは……。


「次はドコに行こうか?」

「わ、私は出来るだけ明るい場所に出たい」


 アンジェシカの事で、相手の識別がこの薄暗さじゃ付きにくい。

 それがさらに怖くなってきてしょうがないのだ。


「それじゃ、外に出ようか。月明かりで全体がちゃんと見えてたし」


 っと言う事で外に出る為に、私たちはまず1階まで下りる事になった。

 今居る場所は階段の標識で2階にいる事がわかった。

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