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【揺花草子。】(1)  作者: 篠木雪平
第7話『ゲット・バック』
28/30

 薄暗い部屋。

 夏の熱気が渦巻く。

 多忙を恃みに掃除はおざなりで、通販の見慣れた段ボールが部屋の片隅に幾つもの塔を形成している。


 静寂。

 静止。

 或いは、無。


 ぼくがこの部屋に居ない時、その空間は積極的な意味を持たない。

 ただ、ぼくの残骸もしくは残滓が沈殿しているだけの無機的な場所だ。


 その空間に、意味をもたらすキーワード。

 この空間が、確かにぼくにとって意味があると再認識するための儀式。


 ぼくは、暗闇に向かって、言葉を置く。


「──ただいま。」


 返答は無い。

 当然だ。

 誰も居ない筈の部屋で暗がりの向こうから応答があれば、それはもう充分なホラーか愚にもつかない事件だ。


 けれど、ぼくは、今日も唱える。


 今は、暗闇に空虚に溶けて行くだけだけれども。


 いつの日か、その言葉に、意味を載せられる時の為に。

 待つ人に、笑顔をあげられるように。


 ──だからぼくは、「ただいま」を言う練習をする。


 「お帰り」って笑ってくれる人が、現れてくれた時のために。








「・・・阿部さん全力でキモいです。」

「台無しか!!」

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