〈Side A〉
──ブリジット。
それは、もしかしたら──。
ぼくは言葉を飲み込む。
ブリジット・シャルロット・バーキン。
あざとさ重視のブロンドツインテ。
いつだって、この子は。
大概で。
小癪で。
腹立たしく。
小憎らしく。
忌々しく。
──けれど、頭に来るほど可愛い。
ブリジットは、ぼくにとって、『特別』だ。
七割以上は悪い意味で、だが。
10代半ばから後半の少女。
オシャレや流行りの音楽や恋愛に興味深々の今ドキ女子。
・・・と、一口に言い切れない。
世間一般の所謂女子との乖離は著しく、容易にカテゴライズできない。
かと思いきや、当たり前に女子な振る舞いや、年頃の少女に似つかわしい表情を見せたりもする。
実に複雑怪奇な、清楚可憐な、天衣無縫な、天下無双な、金髪美少女。
彼女の人となりを表すにはきっと世にありふれたどんな言葉も相応しくないし、逆にどんな言葉も似合わしくもある。
そんな彼女だからこそ、きっとぼくはとても興味があるのだし、見てて飽きないし、たっぷり腹も立つし、──そして、『特別』に思うのだろう。
だからぼくは、彼女の言葉の裏側に見え隠れする感情を疑わなくてはいけない。
──疑う? それは、違うかも知れない。
それは、きっと、ブリジットに『理由』を求めているだけだ。
そうでは、無いはずだ。
信じてはいけない、のだ。きっと。
信じる力は、ぼくには無いのだ。
信じる価値は、ぼくにはないのだ。
ぼくはもっと、適切に、ぼく自身を評価するべきだ。
過大にではなく。過小にもならず。
適切に。ロジカルに。少しだけシニカルに。時にはアイロニカルに。
──それが、ぼくと言う人間の、たぶん、ポジションだ。
だから、ぼくは、こう答える。
安直なシンパシーや蜃気楼のようなアフェクションに心をやつすのは残念ながらキャラじゃないし相応しくもないからね。
Aさん「──それはね、ブリジット。」
Bさん「え?」
Aさん「きっと、きみが少しずつ、おとなに近づいて来てるってコトだと思うよ。」
Bさん「そう・・・なのかな。」
Aさん「うん。きっとね。」
Bさん「──そっか。
うん、そうかも知んないね。」
Aさん「うん。」
春の霞に伸ばした手は空を切るだけなのだから。




