〈2〉
ぼくは今よりももっと小さかった頃、この小さな街に住んでいました。
きれいな川が流れてて、たくさんの森や、花園や、小さな泉がいくつもあるような。
でも、その頃の記憶はぼくにはほとんどありません。
だから、
「ほら、ブリジット。この服に着替えて。」
「えぇ〜? こんな真っ黒な服いやだよう〜。お花のもようがついてるのがいい〜」
「──ごめんなさいね。明日は可愛いワンピースを買いに行きましょうね。」
いつもきれいな服を着ているママンも。
ママンのおにいちゃんやおねえちゃん、ぼくにとってのおじさんやおばさんたちも。
おじさんたちに手伝ってもらってやっと立ち上がることができるおばあちゃんも。
みんな黒い服を着てるのが、とても変だと思いました。
でも、たぶん、この街ではこれがふつうの服なんだろうなと思いました。
おばあちゃんもおじさんもおばさんも、ぼくの知らない言葉をしゃべっていました。
おばあちゃんたちとお話しする時は、ママンも、知らない言葉を使ってました。
たぶん、ぼくはちっちゃいから、みんながなにを言っているのか分からなかったんだと思います。
おとなのひとになれば同じ言葉が使えるようになるのかな?
それとも、ぼくには聞かれちゃいけない話だったから、わざと違う言葉でしゃべってたのかな?
あんまり嫌がるとママンが泣き出しちゃったので、ぼくはびっくりしました。
ごめんねと何度も言いながらぼくをぎゅっと抱きしめるので、すなおに黒い服に着替えました。




