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仮想三国志  作者: 三国 寿起
5/8

~蒼遼伝5~

戦い当日。

蒼遼は、隊列を組んだ兵士たちを万感の思いで見ていた。自分が立案した策を、この大軍団で実現させると思うと、武者震いを感じずにいられなかった。

「士叡。」

傍にいた馬超が、口を開いた。

「良い表情をしている。初めて異民族討伐の軍に従軍した時とは、全く違うな。」

「あの時は、ガチガチでしたから…。ただ、今回は自分の策をこの大軍団で実行できると思うと、胸の高まりを抑えられません。」

「ふっ…。お前のその表情を見ると、不思議と負ける気がしない。」

そう言うと、馬超は馬に跨った。

「さあ馬に乗れ、士叡。そろそろ、満寵殿の軍が動き出すころだ。」

蒼遼が馬に跨ると、今まさに満寵軍が進撃するところだった。

蒼遼が属する馬超と逆側にいる龐悳の騎馬隊は、それぞれ壺関から見えにくい崖の陰に隠れる形で駐屯している。馬岱の歩兵部隊と鍾繇の攻城兵器部隊は、満寵軍の後方に待機していた。

馬超と蒼遼が槍を手にすると、遠くの方で金属音が聞こえ始めた。剣と剣とがぶつかる音、満寵軍と郭援軍が戦を開始したことを告げる音でもあった。

「いよいよだな。」

馬超の目つきが、戦をする時の鋭さに変わっていた。それを見て、蒼遼も気を引き締める。そこに、斥候が馬超と蒼遼に情報を伝えに来た。

「報告!満寵殿の部隊が後退を始めました。敵軍は満寵殿の部隊に歩兵部隊で追撃を掛けるのみで、弓矢での攻撃は行っておりません。」

「弓矢を打っていない…。満寵軍が後退に転じたため、安心しているのでしょう。」

「それこそ、騎馬隊が突撃するのに絶好の条件よ。満寵軍の旗が見えたら、突撃して大いにかき乱してやる!」

しばらくして、満寵軍の旗が顔をのぞかせた。

「行くぞ、全軍突撃!」

馬超の号令と共に、騎馬隊が一斉に駆けだした。蒼遼は、先頭を駆ける馬超の右斜め後ろに付いた。

騎馬隊が、出発地点と奇襲地点との半ばくらいに差し掛かった頃、郭援隊の先頭が顔をのぞかせていた。

この後の作戦予定では、馬超と龐悳の騎馬隊が両側から敵部隊を挟み撃ちにすると同時に、満寵の歩兵部隊も反転して攻撃。敵軍が混乱している隙に鍾繇と馬岱が率いる攻城兵器と弓騎兵と歩兵の混成部隊が壺関を破る手筈になっている。壺関で守備をしている本隊は、馬が駆けるときに出る土煙で奇襲のことは気づいている筈だが、勝ちに逸っている部隊を止めるのは難しい。ましてや、本隊から引き離されていれば尚更である。

崖の切れ間、郭援隊の端にいた兵士の数人が騎馬隊に気づき驚きの表情を浮かべる。が、時すでに遅し、その瞬間に騎馬隊に蹴散らされていた。

蒼遼の属する馬超率いる騎馬隊は、郭援隊の奇襲に成功した。反対側でも喊声が聞こえた。龐悳率いる騎馬隊も、同時に奇襲に成功したようだ。両側から騎馬隊に挟み撃ちにされて、郭援隊は大混乱に陥っていた。後退を続けていた満寵隊も反攻を開始し、流れは一気に鍾繇・馬超連合軍に傾いた。

蒼遼が迫る敵兵を打ち倒していると、すぐ横で華麗に細剣を振るう人物の姿が見えた。共に従軍していた韓玲であった。二人がすれ違う直前、韓玲は蒼遼に向かって軽く微笑んだ。蒼遼もそれに応えて軽く頷くと同時に敵兵を斬り払った。

馬超と龐悳もそれぞれの武器を持って、敵兵を斬り伏せていく。二人の戦い方は両極端な戦い方であった。

馬超はお気に入りの錦の直垂と白色の鎧、そして獅子頭の兜を身に着け、朱色の槍を手にしていた。そこが戦場とは思えぬような流れる動きで敵を打ち倒し、馬を駆けていく。馬超が、涼州で錦馬超と呼ばれる所以である。

一方の龐悳は全身黒一色の鎧に身を固め、これもまた漆黒の戟を手にしている。龐悳の戦振りは、愛用の戟にて豪快に敵を斬り倒す戦い方。その姿は、さながら鬼武者の様である。

馬超・龐悳の部隊が敵を蹂躙していると、少し先で馬に乗って大剣を振り回し戦う人影が見えた。この部隊の指揮官である郭援であった。

一足早く駆け出したのは龐悳であった。馬超もその後に続く。龐悳が郭援に向かって戟を振り上げる。龐悳の存在に気づいた郭援が、大剣でその攻撃をいなす。その周りで龐悳に向かってくる敵兵を馬超が槍を振るって阻んでいた。

四合、五合と打ち合ったが、六合目で龐悳の戟が郭援の大剣を叩き落とした。呆気に取られる郭援に、龐悳は最後の一撃を振り下ろした。

「敵将・郭援、この龐悳が討ち取ったぞ!」

戦場に龐悳の大声が響き渡った。馬超がそれに呼応して槍を突き上げる。蒼遼も槍を上げて兵士を鼓舞した。味方の兵士が一斉に歓声を上げる。一方、主を失ったことを悟った郭援隊の兵士は一気に瓦解した。散り散りになって逃走する兵士の中を、鍾繇率いる攻城兵器部隊とそれを護衛する馬岱率いる弓騎兵部隊が進軍していく。

戦い遂に、後半戦に差し掛かろうとしていた…。


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