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惚れたあの子は、ガチ腐女子☆

俺は、ファミレスでバイトしている。


高校からずっと続けていたファミレスのバイト 、もう働いて四年になる。


俺が二十歳を迎えたとき、転機が訪れた。


バイト先に、可愛い女の子が入ってきた。


神島さくや、18才。小柄な体系、幼さなの残る 笑顔、ぱっと見は中学生みたいだ。


てきぱきと仕事をこなす彼女に、俺はひかれて いった。


バイトの休憩中、俺は彼女に話しかけた。笑わ せようと必死に頑張った。


彼女の笑顔を見ると、疲れなんて吹き飛んだ。


彼女と出会って三ヶ月、俺は彼女に告白した。


彼女からの返事は、友達からお願いします、だ った。それでも良かった。


初デートの日、俺は指定した時間より20分も前 に来ていた。女の子と二人きりでデートなんて 、初めてだった。


彼女はどんな恰好でくるだろうか。可愛らしい 清楚なワンピースだろうか?やはり女の子はス カートじゃないとな、などと妄想にふけってい ると、あっというまに待ち合わせの時間がきた 。そろそろ来る頃だ。


『おい、なんだあれ?』


『すっごい、あんなのはじめてみた』


ふいにまわりがざわつきはじめた。


なんだろう、と思ったら、前から不思議な女の 子が歩いてきた。


ヒラヒラのついた帽子?のようなものをかぶり 、足元まである緑色のロングスカートのワンピ ースを着た女の子。


『おまたせしました』


その不思議ちゃんは、俺に笑顔をむけ、あいさ つをした。


彼女だった。


『…え?さくやちゃん?』


『そうですよ?』


やっぱり彼女でした。


『あ〜、なんかすごい恰好だね?個性的…とい うか…』


『本当は水銀燈がよかったんですけど、今日は かわいめな感じで、翠星石コスで来ちゃいまし た』


そういうと、彼女は可愛らしくクルッと回った 。ロングスカートが少しだけヒラッと舞い上が り、少しだけドキッとした。


『え…水銀?』


『水銀燈です!知らないんですか?ローゼンメ イデン』


彼女はきょとんとしていた。知らないなんてあ りえない!みたいな顔をされてしまった。


『ローゼン…めいでん?それってドラマかなに かかな?』


『アニメですよ!もともとは漫画ですが。人気 漫画がアニメになるのは当たり前な話じゃない ですか!』


なんか怒られた。


というか…。


まわりの視線が痛い。


みんなこっちを見て、正確には彼女を見て、ク スクス笑っている。


『と、とりあえず行こうか?』


『はいっ!』


俺と彼女の初デートがはじまった。素晴らしい スタートだ…。


俺の予定したデートコースはこんな感じだった 。


まずは、駅前の噴水前で待ち合わせ⇒駅ビルの 最上階にある展望台にいき、景色をながめなが ら、あれが俺の家〜とか言い合う⇒展望台にあ る、プラネタリウムを二人で見る⇒お昼になっ たら、オシャレなカフェで食事⇒そのあとは俺 の車でドライブ。


全部却下だ!五時間かけて考え、下見までした 計画、全て白紙に戻す!


なぜかって?彼女がめちゃくちゃ浮いてるから だ!彼女は小柄で可愛らしいよ!人目につくよ !男どもが彼女を見てしまうのはわかるよ!


そうじゃない!彼女の服装がめちゃくちゃ目立 ってるんだよ!泣きたいよ!


『あの〜』


『は、はい?』


彼女が俺を見上げて話しかけてきた。俺の身長 は180、彼女はおそらく160ないくらいなので、 自然とそうなる。


『ちょっとよりたいとこがあるんですけど、い いですか?』


『え?えぇそりゃもう!喜んで!』


俺、しどろもどろ。


自然と会話がはずんだ。駅前はよく来るのか〜 とか、あの場所でこんなことがあった〜とか… 。不自然なのは、彼女の服装だけだ。


エスカレーターをのぼり、駅ビルの最上階につ いた。


そこにあったのは、ネットカフェと…アニメイ ト。


知識としては知っていた。アニメイト。アニメ などのグッズ、マンガや雑誌などが売っている お店。


『ここはよく来るの?』


『はい!週に五日ほど!』


いい笑顔で言われた。ちなみに、彼女は週に五 日ほどバイトしている。


初めて入ったアニメイト。


彼女がアニメイトに入ると、店員がよってきて 、二人でなにやら話をはじめた。いや、仕事し ろよ。


彼女と二人で、お店を一通り見てまわった。


表紙にやたらと目がデカイ女の子の書かれた漫 画や、表紙にやたらとアゴのとがったイケメン が書かれた小説などを、彼女は次々とかごに入 れていった。


買い物してるあいだじゅう、彼女はよくわから ない話ばかりだった。


今期のアニメがどうたら、作画がどうたら、あ れがアニメ化するだの、このキャラのあのシー ンが神ってるだの、言ってることの99.9%が理 解不能だった。でも、彼女はとても楽しそうだ った。


全然知らない物ばかりだったが、一つだけ気に なった物があった。新撰組の書かれたアニメグ ッズだ。


やたらイケメンで、やたら髪が長いが、そろい の羽織を着て、誠の旗をかかげ、刀をさしてい るさまは、まさしく新撰組そのものだった。


俺がなにげなくグッズを手にとると…。


『お目が高い!それに目をつけるなんて素敵で す!』


彼女が、俺を見て目を輝かせていた。


『そのアニメは×××で、あれがどれでそれがこ うでなんたらかんたら』


彼女は、ものすごい勢いでそのアニメを語り出 した。よくわからなかったが、新撰組の主要メ ンバーの名前だけは聞き取れた。


彼女が、レジで会計をはじめた。総額1万円2 千円…。ちなみに、ファミレスの時給は740円 だ。


会計をすませた彼女の顔は満足げだった。


不思議な物で、最初あれだけ恥ずかしかった彼 女の服装も、だんだんと慣れてきた。とてもよ く似合っていたし、なにより、彼女はやっぱり 可愛い。


そのあとは、適当に駅ビルの中をうろついた。 雑貨屋の中をながめたり、新発売の家電品をた めしたりして、カフェでランチをたべた。


とうしょの予定どうり、俺の車でドライブをし た。彼女のウォークマンで曲をかけた。なにか のアニメの主題歌らしく、なにげにいい曲だっ た。


車で向かった場所は、大きな湖。とても景色が いい。


二人で並んで、波の音を聞いていた。


『今日は、楽しかったです』


『俺も、楽しかった、すごく』


本心だった、とても楽しかった。


『先輩に告白されて、嬉しかったです。でも私 、こんなんだから…』


『最初はとまどった。ぶっちゃけ、そのかっこ 、恥ずかしいと思った。でも今は、変だとおも わないよ?むしろ、とてもよく似合ってる』


『嬉しいです…』


俺は、彼女と向かい合い、まっすぐに彼女を見 つめ、言った。


『俺と、付き合ってくれないか?こんな俺でよ かったら』


『こんな私で…いいですか?』


彼女の目元が、少しだけ潤んでいた。


『君だから、付き合いたいとおもった。今日一 緒にいて、いっぱい話して、いっぱい笑って、 それで思ったんだ。やっぱり、俺は君のことが すきだって』


『先輩…』


『さくやちゃん…』


二人の距離が、すこしづつ縮まった。


『BLが大好きでもいいですよね?!』


『…はい?』


『ゲームとか漫画とかアニメにしか興味がない 私でもいいんですよね?』


『んんっ?』


『バイトのとき以外はコスプレ衣装しか着ない けど、許してくれるんですよね?』


『……はい』


『私、バイト中はオタクってばれないようにヌ コかぶってたんです!でもでも、本当の私はこ んなんだから、先輩にはウソつきたくないし、 ありのままの私を〜って言うか、付き合うなら ごまかすとかだるいじゃないですか?でも、先 輩はこんな私を受け入れてくれるんですよね? ね?あ、私のことは、さくにゃん♪って呼んで くださいね☆』


彼女の満面の笑み、それはそれは可愛かったそ うな。


好きになった女の子が、まさかの腐女子。


俺は、これから嫌というほど知ることになる… 腐女子の恐ろしさを。



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