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幕末奇譚 『志士 狂桜の宴』  作者: 夏月左桜
奇譚ニ幕 進取果敢
7/89

其之ニ 新撰組

 屯所を出た土方は、沖田を伴って町へとやって来ていた。

 二人とも今日は非番なので羽織を着ていない。

「甘いものでも食べますか」

 嬉しそうに沖田がはしゃぐ。

「なんでおまえと並んで甘味屋なんぞ行かねぇといけねぇんだ」

「あれ? 岡場所にでも行くつもりだったんですか?」

 岡場所は今で言う遊郭だが、公許の遊郭と違い、私娼が集る場所として呼び方で区別されていた。

 身分を問わず、岡場所へ通って来る者は多い。気に入った相手との一夜は、殺伐とした今の世を生きる者にとって欠かせぬ一時ともなっている。

「おまえの頭ん中には甘味か色しかねぇのか!」

 凄んでも沖田には通用などしない。

 土方が一睨みすれば、大抵の者は猫を前にした鼠になってしまい、ろくに話しをすることもままらなくなる。普通に接して来る者と言えば、鼻歌交じりで横を歩く沖田を始めとする元浪士組三番隊に居た者くらいだろう。

「いいじゃないですか。頭を使うには甘い物が一番なんですから」

 人当たりの良い男。

 沖田の第一印象は皆そう思う。事実、隊士から相談を持ちかけられる多さは隊で一番だった。その風貌からは、一番隊組長を勤め、撃剣師範の腕前を持つ剣客と知る事はできない。隊士達がその肩書きを嫌と言うほど思い知らされるのは稽古に出た時である。新米隊士はそこで始めて沖田への見方を一転させる。その稽古は隊に於いて一番厳しく、鬼の副長の異名を持つ土方よりも恐れられている。

 剣で斬るな、体で斬れと、鬼の形相になる沖田を、猫の皮を被った虎の子だと土方はよく言う。

「仕方ねぇな、つきあってやるよ」

 男と連れだって云々とブツブツ言いならが、沖田の後から甘味屋へと入って行った。


 稽古が無い時、和奈は進んで藩邸の雑用を手伝うようになった。

 聞きなれない用語や、慣れない道具の使い方を覚えなくてはならず、龍馬もいい経験になるだろうと賛成してくれたので、大久保に伺いを立てて許可を得た。

「けんど、まだ一人じゃー出たらいかんちや」

 そう言われ、藩邸からの外出は許可されなかった。

「どうして出ちゃ駄目なんですか?」

 新撰組が町の警備と巡回していて、不審な人間と見ると片っ端から捕まえて行くのだと龍馬は答える。

 桂も、新撰組に出くわしたらと言っていた。

「やき、まだ出してやれやーせん。万が一出さないといかん時があって、出ることになったら、新撰組に関わったら駄目やか。もし見つかったら迷わず逃げ出しちょき」

「逃げるんですか?」

「ほうじゃ、必死でな」

 龍馬は両腕を振り子のように振り、走るまねをして見せる。

「あはっ。判りました。逃げ出します」

「わりぃ人間ばかりがやないんけんど、中にゃ分別を知らん男もおるからのう」

 それはこの時代に限った事ではない。昭和の世でも分別を持たない人間はいくらでもいる。

「わしも必死で逃げるぜよ」

「龍馬さんでも? でも刀持ってるじゃないですか」

「うん、まぁ色々と事情があって、新撰組に見つかると怒られるちや」

「なんで怒られるんですか!?」

「なんでって、そうだなあ」

 町の治安を守る新撰組に怒られるとしたら、何か悪い事をしでかしているのだ。

「わしからが成そうとしちゅうことを、今の幕府のもんは理解しようとしやーせん。やき新撰組のもんにとったら、わしらは敵という立場になってしまっちゅうちや」

「敵、ですか?」

「敵とはちっくと違う。ただ志のために取る行動が違うだけだ。それが原因でいがみ合っちゅう」

「じゃあ、桂さんや武市さんもですか?」

「桂さんと高杉くんの長州藩は、薩摩藩と会津藩によって京から追われちゅう。藩邸こそ在るが、幕府からすれば厄介もんに違いはない。武市は土佐上士やき、見つかっても相手は手を出せん」

「えっと、薩摩藩って、ここ、薩摩藩邸ですよ?」

「薩摩は長州にとったら敵も同然やけんど、大久保さん個人はわしらと同じ志を持っちゅうお人やか。まあ、表立って協力しちゃーせんけど、手を出せる範囲の事にゃ協力してくれちゅうから心配はいらん」

 藩と言うのが国の事だと名前から理解は出来たが、一つの国の中で幕府側とそれに敵対する側があるところで、和奈の思考は停止した。

「全部一度に理解ようとしのうていい。わしらとおる事を知られてはおんしの身が危険になる。やき新撰組は一番会っていかん相手だとゆうのを覚えておいとおせ」

「龍馬さんの土佐藩も、敵対してるのか」

「いや、土佐は幕府寄りだ。わしらは土佐を脱藩しちゅうから、見つかれば大事になるき」

 脱藩という言葉を聞いた事がある。そう、桂と会った時、そう聞かれた。

「脱藩って?」

「許可を得ず、定められた期間を過ぎても戻らんと、藩を抜けたとされ手配書が出される。それを脱藩とゆうんだ」

「もし見つかったら?」

「藩によっては脱藩を黙認するところも多いが、土佐は厳しうてのう。見つかって送還されたち、悪うて死罪になるき」

「死罪!? 国を出ただけで!?」

「悪うてだ。やきおんしも、長州へ行ったら勝手に藩から出るのは止めとおせ」

「肝に銘じておきます」

 大きな欠伸をしながら龍馬が背伸びをする。

「眠うていかん」

「って、あんだけ寝るの早いじゃないですか」

「眠いものは仕方がないきね」

 娯楽と呼べるものが少ない時代に、夜更かしなどできようはずもなく、夕食が終わり用も無ければさっさと寝てしまう。

 それは和奈とて同じで、皆が寝てしまってはどうしようもなく、早々に布団へと潜り込んでいる。そのお陰もあって、半月も経った今では、空が白み始めると自然に目が覚めるようになっていた。

「まあ、これだけ平らげたら眠くなりますよね」

 出されたご飯だけでなく、残っていた三人分ほどの白飯を綺麗に食べてしまっている。

「じゃあ、これおみつさんに渡してきます」

「和太郎は和太郎はしょうまっこといい子やか」

 今にも寝てしまいそうな龍馬をそのままに、積み上げた膳を持って台所へと運んで行くと、かまどを据えた土間の横で、片付けも途中に女中達が囲炉裏を囲んでなにやら話しこんでいた。

「あの、すみません」

 声をかけると、女達の中からおみつが出て来て、和奈の手にあった膳を受け取る。

「おおきに」

「なにかあったんですか?」

 おみつは上女中として、女中を取り仕切っている女性で、なにかと和奈達の面倒を見てくれている。

「いえね、長州藩邸に使いに出かけたお京ちゃんとお宮ちゃんがまだ帰ってこんのどす」

 お宮という女中は知らなかったが、お京は一度部屋の掃除にと来てくれたので覚えている。

「時間がかかり過ぎてるさかい、捜しに行こうかと話してましてん」

「いつ頃でかけたんですか?」

「昼餉のこしらえが終った頃やったさかい、未の上刻くらいかと思うて」

 今は未八ツ(十四時)過ぎくらいだ。そろそろ二時間は経つ。女の足とは言え、藩邸まで遠い道のりではない。

「僕が見てきます。長州藩邸へ行ったんですね?」

「ええんでっしゃろか」

「おみつさんは忙しいでしょう? もう用事がないし、ちょっとだけ行って見てきますよ」

 何か胸騒ぎを感じて、部屋に戻らず裏口へ向かうと藩邸を駆け出した。

(出るなって言われたけど)

 龍馬に言えば自分が捜しに行くと言うのは解っている。

 藩邸は御所の近くに在ることから、警戒は特に厳しい。もし龍馬の手配書が回っているなら、見つかれば捕まるだろう。しかし素性を知られていない自分なら、例え出くわしたとしても言い逃れはいくらでも出来る。捜しにでて二人を見つけられなければ、戻って相談すればいい。そう和奈は考えた。

 まだ藩邸周りの地理しか頭に入っていないが、縦横の道が交差する京の町は、時を経ても変わらず、三条大橋や、御所など有名な場所さえ判れば大体の位置は把握できるし、脇道や小さな通りに入りさえしなければ、道を間違えることはない。

 和奈は警戒が厳しい御所の周りは避け、三条通りを目指した。

 町にあまり人影がないのは、大きな通りから外れると一気に雰囲気が変わるためだ。商店などの立ち並ばない場所のせいもあるが、武家屋敷や公卿の住居などが犇くこの界隈に、町人が用もなくやって来ることはない上、不安定な情勢で京から出る町人や商人が後を絶たない。よって人気が少なくなっても仕方がなかった。

 目の前に三条通りが見えた所で、左手の路地の方から聞きなれた声が聞こえて来た。

(この声、お京さんだよね)

 声のした方へと、和奈は急いで足を進めた。

「放してください!」

 やはりお京の声に間違いないと、声を便りに一つ目の角を左へ曲がる。その先に、浪士に手を掴まれているお京と、長屋の壁に背をつけ立って居るもう一人の女中の姿を捉えた。

「すいませんで済むのかと言ってるんだ!」

 男は威圧するように大きな声で怒鳴る。

「お京さん!」

 和奈は駆け寄り様に、お京の手を掴んでいた浪士の腕を思い切り払い退けた。

「和太郎さん!?」

 二人の間へ割って入った和奈は、お京の手を引いて背後へと下がらせた。

「なんだ、おまえは!」

 何回聞かれた台詞だろうかと、苦笑を浮かべる。

「なにが可笑しい!」

 馬鹿にされたと思ったのか、浪士が少し後ろへ下がり柄に手を沿え身構えた。

「うちの子が何したんですか?」

「何しただと? 聞きたいなら教えてやる。こいつわなぁ、俺の脚を踏んづけて謝りもせず、そのまま行こうとしやがった。無礼にも程があるってもんだろう!」

 この時代にもこういう馬鹿な輩がいるのだと、たまらなくなる。

「そんな事で女性に絡むなんて」

「そんなことお!?」

 男が刀を抜こうと前屈みになり、和奈もお京を背にさらに後ろへと下がせた。

「謝りました私!」

 お京の声に男が刀を抜く。

「謝ったと言ってるじゃないですか」

「女の前と、格好の一つもつけたくなるよなあ。なら、ちっとばかし相手になってもらおうじゃないか」

 柄を握りしめ、間合いを測った和奈は利き足を少し前に出しつま先で袴の裾を踏む。こうすれば足先が見えず、相手は剣閃を予測しずらくなる。

「お京さん、もっと後ろへ下がってて」

 はい、と震えた声がしてお京が離れるのを確認したと同時に、男の腕が動いた。瞬間、和奈は振り下ろされた刀を横に交わし、男の腹へと足を蹴り込んだ。

「このくそが!」

 上段から打ち下ろされてくる刀を抜刀しながら受けめるが、和奈の力ではそこまでが精一杯で、弾き返す余力などない。

(くそ!)

 鍔迫り合いを保ったまま、相手の押す力を利用して腕を突っぱねると、和奈は間合いを取ろうと後ろへ飛び退いた。

 切り込む間合いを外せば、相手もそう簡単には懐へ飛び込んでこれない。

「きゃああぁ!」

 叫び声に、和奈は眼だけを横に動かした。

「お宮ちゃん!」

(もう一人いたのか!)

 何処に居たのか考える間もなく、男は振り上げた刀をお宮目掛けて打ち下ろした。

「なっ!」

 ざわっ、と和奈の気が乱れた。

「おまえぇ!!」

 目の前の男をそのままに、和奈は地面を蹴る。

 走り来る和奈に気づいたもう一人男が体勢を変え、血に染まった刀を構えた。

 腰の位置を低く取り、男が刀を振るその直前、相手の右脇から肩へと斬り上げる。

「がはっ!」

 ビシャリッと、嫌な音とも共に肉片が飛び散り、脇腹を押さえて蹲った男の隆椎へと、和奈は躊躇いなく刀を突き下ろした。

 人の肉が裂けていく感触が、刃を伝って手の平へと伝わってくる。

 大きくなった鼓動の音が耳の内側に広がり、外界の音を遮断する。視界には、首に刺さった自分の刀が映る。

「和太郎さん!」

 お京の叫び声で我を取り戻した和奈は、刺した刀を引き抜き、体を返して一気に駆け出した。

「死ね!」

 お京の頭上に掲げられた刀。

(間に合わない!)

 脇差を左手で抜き取り、男目がけて投げ放つ。

「!」

 お京を斬るはずだった刀は脇差へと目標を変え、懐へ滑り込ませる時間を男は和奈に与えてしまった。

 刀の切っ先を下から体へと滑らせる。

「ま・・・待てっ!」

 半着の懐が割け、薄っすらと血が滲むのを手で押さえながら片手を突き出した男を見て、和奈の動いていた足が止まった。

「甘いんだよ!」

 男の刀を避けようとした体に剣先が掠る。

「つっ!」

 右腕に痛みを感じ、ちらりと目線を落とす。

(斬られた)

 隙を逃すまいと男が斬り込んで来るが、間合いを詰められ交わすことが出来ない。

(殺られる!)

「そこまで!」

 和奈の懐に届くはずの刀は、横から割り込んできた刀によって止められた。もし横槍が入らなければ、和奈の腹は腸まで切り裂かれていた。

「邪魔をするな!」

 いきなりの乱入者に驚いた男は、後へと下がる。

「承服しかねる。おまえこそ退け、退かねば斬る」

 この剣気、と、和奈は体が萎縮して行くのが解る。

 これで二度目だった。

「青二才が偉そうなことを!」

「あんた、僕を知らないんだ」

 そう発っせられた言葉に、男の動きが止まった。

「新撰組一番隊組長、沖田総司」

 放たれる剣気に圧倒された和奈は、新撰組の名を聞きながらその場へ座り込んでしまった。

「お・・・沖田だと?」

「いいとこ取りじゃねぇか、総司さんよ」

 すでに刀を抜いて肩に担いでいる男が、スタスタと路地から出て来る。

「あ・・・あんたは、土方」

「やだなあ。そう言うのを、無礼、って言うんですよ」

 沖田は平然と男の腹に刀を突き出した。

「そっ・・・んな」

 そのまま柄を返し、横へと一気に刀を引く。

 和奈の目前で、男の体から離れた肉片と血が広がっていく。

「かはっ!」

 息絶えながら男の身体が沈み、路地に転がる死体は二つとなった。

 腰が抜けたように座り込んでいる和奈許へ駆け寄って来たお京は、その肩に両手を置くと沖田と土方を見上げた。

「おい」

 びくっ、と、肩に置かれたお京の手が反応し、和奈は顔を上げた。

「あっちの女も知り合いか?」

「え・・・?」

 ゆっくりと顔を動かした先に、地面に倒れた人間が居る。

「わ、私と同じ女中です。謝ったんです私、足を踏んでしまって。謝ったんです!」

 お京は背中に額を当て、泣き出してしまった。

「難儀な目にあったな。おい、おまえ。女を助けに入るならもっとましな腕にしとけ」

 睨むように土方を見上げたが手が、体が震えて止まってくれない。

「初めて人を斬ったのか。悔しいなら強くなるこった。それから、助けられたらまず礼だ」

 腕を掴み上げられ、土方に支えられる様にして立ち上がった和奈は頭を下げた。

「ありがとう・・・ございました」

 声、足共に震える姿に土方は笑いを隠し切れなかった。

「土方と聞いて俺を睨みつけてくる奴は少ねえ。いい度胸してると褒めてやる」

「睨む前に斬ってたら、睨みたくても睨めないですけどね」

 うるせえ、と沖田に怒鳴る。

 笑顔を浮かべ、土方と話す沖田からはすでに剣気が消えいた。

「おまえ、名前は?」

「村木、和太郎と言います」

「一応覚えといてやる。女を運んでやろうか?」

 和奈は頭を振った。

「僕が・・・連れて帰ります」

「そうか。こっちは俺達がやっといてやる。後始末なんざ、出来ねえだろ?」

「・・・はい」

「沖田。近くを見廻ってる連中に始末させておけ」

 はいはい、と刀を鞘に納めながら、沖田は出て来た路地へと入って行った。

「平気か?」

 初めて人を斬った場合、大抵は平常に心を戻すまでに時間を要する。

「はい。もう、大丈夫です」

「・・・だが、あっちはそうもいかねぇみたいだがな」

 後ろに居たはずのお京は、お宮の側に蹲りその身体をゆすりながら必死に名前を呼んでいる。

 和奈はそれをただ見ている事しかできなかった。

「さっきも言ったが、女を守りてぇならもっと強くなるんだな」

「強くなる・・・」

(なんだ?)

 心ここに在らずと立ち尽くす和奈に違和感を感じつつ、得体の知れない恐怖感が背筋を這い登ってきた。

「なれるでしょうか」

 稀に、蠅や蚊を叩き潰す時と変わりなく斬る者も居る。そう言った者達の多くは人斬りへの道を進む事が多いのだが、目の前に居る和奈の場合はそれともどこか違っている様に思えた。

「なれるかなれないかは、おまえさん次第だろうな」

「僕次第・・・」

「こいつらは浪士だから大事にはならんが、どこぞの藩士相手だったら切腹もんになるかも知れねぇ。喧嘩を買う相手は選べってことだ」

「気をつけます」

「いい心がけだ。じゃあ・・・気をつけて帰れよ」

「はい。本当に、ありがとうございました」

 気にするなと言い残し、沖田が消えて行った同じ路地へと消えて行った。

 泣き止まないお京の傍らへと歩いて行きお宮の体を抱えあげる。

「一人で歩けるな?」

 こくりと頷いたお京を後ろに、ずっしりと重たくなった遺体を抱え、和奈は歩き出した。

 足を踏んだだけで人に刀を振り下ろす。命とはそんなに簡単に奪われていいものではない。理不尽な言い掛かりで奪われる物でもない。

「冗談じゃない」

 抱えた身体の重さが悔しかった。

 血の匂いにむせるのを我慢しながら、藩邸へ続く道を急ぐ。

 人気が少ないのが幸いとなり、誰かに見つかることもなく二人は藩邸の門を潜ることができた。

「和太郎!」

 和奈の姿が見えず、邸内を捜していた龍馬は、おみつから事情を聞いて出ようとしていたところだった。

「おんし・・・」

 和奈の全身に付いている血の跡を見た龍馬は、奥歯を噛み締め苦渋の色を浮かべた。その血が、お宮を抱えて付いたものではなく、人を斬った時の返り血だと判ったからだ。

 絶句したまま立ち尽くしているおみつに以蔵を呼んで来くれと頼み、和奈にお宮の体を下させる。

 労わるようにそっとお宮の体を床に置いた和奈は、乱れて目に掛かった前髪を丁寧に直してやった。その顔は、寝て居るかのように見えた。

 玄関へと下りて来た以蔵は、その光景をみて息を飲んだ。

「なんなんだ、龍馬」

「説明は後でするき、はよぅお宮さんを奥へ運んでやってくれ」

 以蔵は小さく、ああ、と答え、お宮を抱き上げると奥へと消えた。

「お京さん、無事でよかったのう」

 優しい声に、しゃくり上げていたお京がまた涙を流した。

「でも・・・お宮ちゃんが、お宮ちゃんが」

 繰り返すその肩を抱えたおみつは、その場からお京を連れて行った。

 二人を見届けた龍馬は、立ち尽くしたままで自分の手をじっと見ている和奈の前にたち、その肩に手を乗せる。

「一人で出るなと言うたがやき。なんでわしに知らせんかった」

「・・・大久保さんも居ないし、龍馬さんが出て、もし新撰組に見つかったらと」

 龍馬はもう片方の手を和奈の頭に回すと、自分の胸元に抱え込んだ。

「おんしはいらん心配はしのうていい」

 すみませんと呟いた体は、腕の中で小刻みに震えている。

「まっこと馬鹿もんじゃ」

 両手を放し、呆然とした顔の和奈の腕を取る。

「とりあえず、その風体をなんらぁせんとのう」

 風呂場へと和奈を連れて行った龍馬は、脱衣場へと入れた。

「火を付けてきちゃるき、ちっくと待っちょり」

 待てとの言葉で、壁に背をつけた和奈の体がズルズルと落ち、足を抱え込んで座った視線の先に、血に汚れた足袋を見つける。

 人を斬った。

 やけに白い首元。少しせり出した骨。そこに突き刺さる刃。あふれ出す血。繰り返し同じ場面が頭に浮んでくる。刃を伝い、肉を突き刺した感触もまだ手の中に残っている。

 そうだ、自分は人を殺したのだ。

 ギュッっと膝を抱える腕に力を込めた。

 四半刻ほど経った頃、着物の袖を襷掛けにしたままの龍馬が顔を覗かせる。

「沸いたぞ。ゆっくり浸かって出てこいや」

 のそりと立ち上がった和奈は、着物を脱くと血に染まったサラシをそのままに、中へ入って湯船から湯を汲み、全身へと浴びた。

「っつ」

 腕に痛みが走り、ぼやけていた意識がはっきりと戻ってくる。

「斬られたら、やっぱり痛いんだ」

 自分が刀を突き立てた男も、痛いと感じたのだろうか。

 血が湯と混ざって流れていくのを見つめながら、サラシをとって湯船へと体を沈める。

 腕の痛みはさらに増すが、死んだ者のことを考えれば我慢もできた。

 理由はどうであれ、人を殺してしまった。殺そうとして刀を振るったわけではないが、刀を首に突き立てれば死に至ると解っていたはずだ。

 再び柄から手に伝わって来た感触が蘇り、裂けた皮膚から流れる赤い血が脳裏に浮かぶ。

 目を閉じ、顔を半分だけ湯へと沈める。

 後悔どころか、何んの感情も抱けない自分に鳥肌が立つ。

(なんだと言うんだ)

 理不尽な理由で人を斬る事など決してしてはならないと思っている。それなのに、人を斬った事に嫌悪さえ抱いていないことに恐怖を覚えた。

 あれは、あの時は仕方がなかった。

 和奈はそう自分に言い聞かせた。


「大丈夫か?」

 外で待っていた龍馬は、放心した様子で出て来た和奈の腕を掴み上げた。

「あつっ!」

 腕を引いた和奈から手を放し、手首を持ち上げると肩まで袖を捲り上げる。

 皮膚が裂けて血が滲んでいる。

「斬られちょったがか。まっこと、おんしはなんちゃー言わんのう」

 意気消沈したままの和奈を部屋へ連れて行き、荷物から薬を取り出すと傷口に塗って手当て施した。

「無理をしな。一人でおるがやないき、わしが側におる、以蔵もおる」

 龍馬が怒っているのは声で判った。

「おんしは望んでここにおるわけじゃーないぜよ。いずれ帰る事になるかも知れん。いや、帰るべきじゃと思っちょる」

 まるで自分に言い聞かせているように龍馬は続ける。

「人を斬ってしまっては戻った時に辛かろうと・・・なのにわしは武市に稽古を続けさせた。おんしに人を斬らせた責任はこのわしにある」

「龍馬さんのせいなんかじゃありません」

「・・・おんしは、帰る術があるなら帰りたいじゃろう?」

 その質問に、和奈にはすぐに答えを口にできなかった。望んで来たのではない、それは確かだ。また、帰る事を望んでいないのも確かなのだ。

 この時代に生まれた人間ではないのだから、帰れる術があるなら帰るべきなのだろう。

(でも私は人を殺してしまった)

 その事実はなくなってくれない。

「帰る方が良いのは判っています」

「おんし、まさか」

「桂さんは言いました。ここへ来たのは偶然ではなく必然なんだと。僕は、その理由を知りたいんです。いえ。知らなければいけない気がするんです」

 女子という身の安全を考えた桂は、和奈に男装を強要した。果たしてこれで良かったのかと龍馬は自問自答するが、今となっては遅すぎると諦めるしかない。

「困った子じゃ。命を落とす事になるかも知れんと言うがやき」

 武市も女子と知りながら剣術の稽古をつけているだろう。和奈を死なせないゆえの選択だろうが、剣術は相手を殺す技ともなる。現に和奈は人に刀を振り下ろしてしまっている。

「ここに居させてもらっては、迷惑でしょうか?」

 龍馬は深いため息をゆっくりと吐き出した。

「おんしがこれからを決めるちゅうなら、わしはなんちゃー言わん。誰も迷惑とも思っちゃーせんから気にしな」

 嘘でも、その場しのぎでもない言葉を掛けてくれる龍馬に感謝した。

「今度からはちゃんと伝えに来ると、約束してくれるか?」

 二階の端にある自分の部屋へと入った和奈に、龍馬は確認する。

「はい」

「よし。なら、ちっくと休むといい」

 障子を閉め、階段の所で首だけを出して待っていた以蔵と共に一階へと下りて行く。

「和太郎は?」

「大丈夫じゃろう」

 庭を見渡せる縁側へやって来ると二人はそこへ腰掛けた。

「おみつさんに事情を聞いてもらった」

「うん」

 浪士揉め事になり、和奈が駆けつけてくれたところから、藩邸に戻って来るまでの顛末を龍馬に話す。

「ほうか。土方くんらに助けられたか」

「新撰組にあいつの面を知られた。どうする、龍馬」

「どうもこうも。わしらと繋がりがあるとまでは知られちゃーせん。出入りもここ薩摩やき、心配はいらん」

「・・・先生はあいつに、人を斬る術を教え込んでいる」

 そう言って自分の腰にある鞘を手でなぞる。

「武市から聞いて知っちょった。反対はしたが、護身だけでは己すら守れぬと言うてな。身を守るた-」

「理屈はどうでもいい! あいつは人を斬ったんだぞ!」

 人斬りと呼ばれる己は、武市の許で剣を振るうと心に決めている。しかし和奈は攘夷に加わろうと里から上洛して来たわけではない、人を斬る覚悟があった訳ではないと以蔵は龍馬に食って掛かる。

「珍しいのう。おんしが武市以外の心配をするとは」

「茶化すな!」

「死んだらそれで終わりじゃ、なんちゃーならん。武市はそう思ったから、おまえにも慎太郎にも剣を教えた。その剣をどう活かすかは己が決める事やき」

「!」

 いきなり立ち上がった以蔵は、これ以上話しても無駄だと部屋へ戻って行ってしまった。

「できるならば、人なんぞ斬らせたくはなかった」

 もっと自分を頼れと言うのだった。もっと強く一人で出るなと言えば良かった。女子の身で、人を斬らせてしまった、なんと自分は不甲斐ないものか。

 握り締めた拳を、龍馬は床へと思い切り叩き落とした。

 

 布団に潜り込み、震えの止まらない体を抱え込む。

【もっと強くなれ】 

 土方の声が幾度も頭の中で反芻される。

 もっと剣の腕があればお宮を守れたのだろうかと自問してみても、答えなどだせるはずもない。剣の腕があったとしても、人を斬ることになったかも知れない。

 中途半端に刀を扱える自分のために、桂は護身のためと武市に稽古をつけてくれと頼んでくれた。護身のための剣術は己の身を守る術で、他人を助ける術ではない。そんなものが役に立たたないのを、身をもって知った。そう。殺伐としたこの時代で必要とされるのは、人を斬るという技に他ならない。

(人を守る為に人を斬る)

 矛盾だった。

「和太郎さん、いらっしゃいますか?」

 お京の声に体がピクリと反応する。

「少しお話がしたいのですが、お邪魔してもよろしいでしょうか?」

 布団を抜け出した和奈は、躊躇いがちに障子を開けた。

「お礼を-」

「礼なんかいらない。僕は・・・お宮さんを助けられなかったんだ。礼を言われる立場じゃない」

 お京の顔が辛そうに歪められた。

 お京は武士ではなく、ただの女性だ。刀を振るわない身である方が、術を知る者より辛いに違いない。

「すまない」

 続ける言葉を上手く見つけられぬまま、俯いてしまったお京の前に座りこむ。だが何を言えばいいのかさっぱり検討がつかない。

「私がもっと注意して歩いていれば、お宮ちゃんは死なずにすんだんです。なのに、私だけが助かってしまいました」

「違う、お京さんのせいなんかじゃない。あいつらが、悪いんだ」

 世が悪いから理不尽な行いが横行する。粗暴な輩から身を守るため、誰かを守るためには、この手を血に染めなければならない。

「僕がもっと強ければ、お宮さんも助けられたかも知れない。だから、お京さんのせいなんかじゃないんだ」

 大切な人を失わないためには、強くならなければいけない。心の底から、和奈は強くなりたいと思った。

「でも、助けていただいたのは私です。本当に、ありがとうございました」

 頭を下げたお京の腕を取り、顔を除き込んだ和奈の鼓動が飛び跳ねた。

 今にも泣き出しそうな顔で、お京は笑みを浮かべていたのだ。

「お京・・・さん」

「私でなく、お宮ちゃんが助けられていたら、きっとおなじことをしたと思います。捜しに来てくれて、ありがとうございました」

 両手をつき、お京はもう一度頭を下げた。

「・・・ありがとう」

 涙に視界が滲み、和奈はやっとの思いでそう言った。


 行灯を眺めながら、以蔵は刀の手入れをしていた。

 刀を横にして目釘を抜き、刀を鞘から抜いて柄を外す。切羽と鐔、ばきも取り外して刃の下拭いをした後、刀の表のはばき元から鋒へと打粉をかける。今度は裏の鋒からはばき元の方へと打粉をかけていく。

(人を斬る意味か)

 棟に軽く打粉をかけてから拭い紙で刃を拭い、刃毀れがないかを確かめる。

(俺には、俺が良しとした志がある。それが刀を振るう理由だ)

 油塗紙を刃へ滑らせ、ムラなく平らに塗れているか確かめ、刀を鞘に納めて切羽と鐔をつけてから刀を再び抜き、柄に入れ目釘を打つ。

 片手で握った刀を、目線より少し高い位置へと上げる。

(先生の志が叶う時まで、俺はこの刀を振るい続ける)

 初めて人を斬ったのは、些細な揉め事が原因だった。人を無闇に斬るのは外道の所業であり、武士のすることではないと、武市からもきつく叱られた。しかし、言葉で解決などできない以上、敵となる相手を斬る他に術はない。時代が流れていく中、師は土佐の為にと、暗殺を指示しなければならなくなった。自分の腕が必要とされることに、以蔵は心から歓喜を覚えた。武市の掲げる志が、いつの間にか己の志となっていると気づいてからは、さらに躊躇を覚えなくなった。

「くくっ」

 そんな自分でも、初めて人を斬った頃は魘されていたなと、笑いが込み上げる。

 転がる体から滴り落ちる血。般若の形相で、自分を睨みつたまま目を見開き倒れて行く。

 幾晩も悪夢に苛まれたが、数を重ねていくうちにいつしか観なくなってしまっていた。

「誰か居るのか」

 人の気配に気付いた以蔵は、手入れを終えたばかりの刀を握り締めた。

「僕です、岡田さん」

 気配の主が和奈であると判り、握った鞘から手を放し鞘へと納める。

「どうしたんだ?」

 これまで一度として自分の部屋を訪れたことなどない和奈が、夜更けにこっそりと訪ねて来た。

「明日の稽古から、僕に剣術を教えて下さい」

 その言葉に、障子を開けに立つ。

「本気で言ってるのか?」

 まっすぐ顔を上げた和奈と視線がぶつかる。

「はい」

「桂さんは、護身術の稽古をと、先生に頼んだんだろうが」

 実際には習いたいという剣術を教え込まれている。護身術などで浪士を斬った上、首に刀を突きたてる芸当など、易々とできるものではない。中途半端な稽古は余計身を滅ぼす原因ともなる。だから桂は武市に頼み、武市は和奈に、以蔵や中岡に教えたと同じ剣術を教えている。

(それにこいつは気づいていない)

「駄目なんです、自分だけ守れても駄目なんです」

「龍馬には相談したんだろうな」

「いえ、まだです。その、言えば反対されると思って」

「俺の独断で教えられるはずもないだろう。先生が帰るのを待て」

「武市さんには後で僕から謝ります! だからお願いします!」

 困り果てた以蔵は、龍馬を呼ぶべきか考えた。他人からの相談事などされた覚えもなく、諭し方も心得ていない。すでに剣術の稽古をしていると言っても、和奈の申し出は武市の許可が必要となる内容だ。

「駄目もなにも、師匠は先生だ」

「解ってます」

 淀みのない眼と握られた拳に意志の固さが現れている。

 意志を固めた相手を退けるのは容易い事ではない。

 以蔵は折れるしかなかった。

「引くつもりはないんだな?」

「はい」

 部屋に入れと、以蔵は障子を大きく開いた。

「失礼します」

 入った部屋には生活臭さというものが全く感じられなかった。机の他に在るものと言えば行灯くらいで、私物は手にした刀だけらしい。

 これが人斬りの部屋だとは思いたくなかった。

「俺の剣術は人を斬るためのものだ。解っているんだろうな」

「はい」

「先生は稽古をつけろと言ったが、俺は他人に剣術の手解きなんぞした経験はない。だから手加減も下手だ」

「はい」

 動揺も躊躇もない真っ直ぐな眼。人を斬った事で、心に決めた想いがある眼をしている。

「おまえの志とはなんだ?」

「志ですか?」

 志など必要としなかった時代に生きていたのだ。いきなりそう聞かれても答える言葉がない。

「なんだ? 剣術をと言う以上、心に決めたものが有るんだろ?」

「志とか、そんな大層なものじゃないです。ただ側に居る人を守りたい。それだけです」

 ふん、と以蔵は鼻をならした。

「それも立派な志の一つだと思うけがな」

「そうなんだ・・・岡田さんは、なぜ人を斬るんですか?」

 いきなり核心に来たかと苦笑する。

「それ以外の生き方を知らないからな」

 人斬りと呼ばれる人生がどんなものなのか和奈には判らない。人斬り以蔵だけでなく、幕末を知らない和奈にしてみれば、龍馬や桂の人生すらも解らないのだが。

「我流だった俺の剣は剣術と呼べる代物じゃなくてな。おれがまだ餓鬼の頃だ。一人で木の枝を刀代わりに稽古していたら、先生が道場に来ないかと声をかけてくれたんだ。最初は躊躇って断わったんだが、遠慮などいらないからと、諦めずに勧めてくれた。それだけで十分だった。次の日から、俺は先生の道場に足を運ぶようになった」

 口元にうっすらと笑みが浮んでいる。

「土佐が身分の五月蝿い藩と、しっるだろう?」

「はい、龍馬さんから聞きました」

「道場に来る奴らは上士かその子供だ。本来なら、足軽の俺が肩を並べて稽古できる場所じゃない。だが先生は他の奴と同じ様に指導をしてくれる。家にもよく呼ばれて、一緒に飯を食う日もあった。他の奴らが俺を足軽と嘲っても、先生は分け隔てなどせず、毎日毎日稽古をつけてくれた。解るか? 先生は俺を一人の人間として、初めて扱ってくれた人なんだ。だから俺は、先生のためならば死ぬこともいとわん」

 誰かのため、志のためと刀を振るう。何かを守るため己を貫く、それは皆同じだと以蔵は笑った。

「今ならまだ間に合う。人を斬るための稽古なんざ止めておけ」

「決めたんです」

 はっきりとした言葉で、進まなくてもいい道を選んでしまったのだと、以蔵は確信した。

「勝手なことをしたと、先生に叱責されるのは間違いない」

「うっ・・・」

「だから、その分のうさ晴らしを先にさせてもらうぞ」

「あ、はい!」

 満足げな顔のまま、和奈が部屋を出て行った後、これも運命だと腹を決めた以蔵は、龍馬のところへと足を向けた。

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