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幕末奇譚 『志士 狂桜の宴』  作者: 夏月左桜
奇譚十六幕 七難八苦
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其之四 狐と狸の逢瀬

 時は少し遡り、慶応二年十一月。

 幕府は講武所を閉鎖し、陸軍所に吸収し砲術訓練所とした。

ペリー来航二回目のあった嘉永七年、幕臣男谷精一郎が改革の一環として操練場創設を行い、安政三年に講武所と名称が改められ、武芸の講習所となっていた。

 この講武所には、教授方として勝海舟も就いた事があり、現在は長州へ帰藩している大村益次郎も江戸滞在の時に教授方として務めていた幕府機関である。

「幕臣以外の人間は習いたくとも習えなくなっちまった」

 足を崩したまま縁側を眺めていた勝にお茶を差し出した赤井は、その悲哀を帯びた横顔にどう声をかければいいのか迷った。

「剣術流派や道場と言った枠に囚われず、誰もが自由に稽古できる場をと、水戸の斉昭公が労を尽くし御創りになったのに、幕臣どもは目先の事だけしか考えねぇ馬鹿だよ」

 赤井も何度か勝に連れられ、講武所に稽古へ行った事がある。新撰組とも、志士達の稽古ともまた違った場感があり、一番身の引き締まる稽古場と思っている。

「そろそろ京へ戻りたくなったんじゃないか?」

「武士、という在り方がまだ掴めていません。俺の生まれた所では、武士のなんたるか、なんて親から教わる事もありませんでしたし」

「道場はどうだった?」

「剣術は確かに武道だと思います。でも、この時代の武とは根本的に心構えが違うんです」

「そうかい。で、おまえさんは武士になるつもりで居るのかい?」

「そのつもりです。武士とは何かを探してる段階なんですけど」

「難しいこった。武家出のもんが抱える志なんざ、主君に忠義を尽くす事に他ならねぇ。だが、忠義を尽くすに足りる主君がいつも陣頭に立つとは限らないのが世の常だ。そう言うところから見れば、新撰組も志士もこの枠からは離れてる」

「勝さんの主君は慶喜公ですよね?」

 少し目を大きく開いて、真顔で赤井を見やる。

「そうさな。おいらの主君は徳川家だ。それは変わっちゃいないよ」

 個人を指さぬ所に、勝の真意がある事など、今の赤井には知る由もない。

「西国諸藩の動きが気になるが、今はまだ江戸から動けねぇ。おまえさんもそのつもりで居てくれると助かる」

 新撰組に戻りたいのは山々だったし、和奈の事も気になったままでいる。

 狂気。

 その言葉を聞いたのは厳島でだった。

 桂を斬ろうとした己に、迷いも見せず剣を抜いてきた和奈に恐怖と言う旋律を覚えた。

 芸州口での太刀振る舞いにしても、常軌を逸脱していた。あれが狂気のなせる業ならば、なぜ和奈が取り憑かれる羽目になっているのだろうか。

 事の繋がりが見えてこない。

 和奈と組み手をしたのは錬兵館が初めてではない。稽古で何度も竹刀を合わせている。にも関わらず、一度たりと恐怖など感じた事はなかったのだ。

「俺がここへ来た事にも、理由がある」

 ぼそりと呟いた赤井から、勝は視線を逸らした

「偶然などはなく、必然である、か」

 赤井は脇に置いてある友重に目を向けた。

 自分の存在が新撰組に在ったせいで、四番隊を指揮していた松原が切腹となった。この剣は言わば形見だ。松原の無念を赤井はその背中に背負っている。

「俺は新撰組隊士として、志士を斬る」

「そう思う道理があるのなら、おいらは何も言わねぇ。だが、一つ忘れちゃならねぇ事がある」

 なんだと問いかける赤井に、

「おまえさんは、この時代の人間じゃない、って事さ」

「よく解ってます」

「解ってねぇから、覚えておけと言ったんだ」

 なにが解ってないのかと食い下がる赤井に、勝は笑って、答えを見つけるのはおまえ自身だと、それ以上の言葉を口にしなかった。



 時は戻り十二月十日

 薩摩国鹿児島城下千石町の南、高麗町の一角に大久保一蔵の家がある。

 鹿児島城下を貫くように流れる甲突川下流域は下級武士の家が多く集まる居住地で、下加治屋町方限 、上加治屋町方限に分かれていたが、元禄十六年、勝目殿屋敷から出火した火は、大久保や西郷が生まれた下町まで延焼し、士屋敷二百四十八所千六件、町屋敷三百八十五所七百九十軒、南林寺及び脇寺十二所五十一軒、門前九十所百七十軒を焼失する大火事になった。

 方眼(ほうぎり)とは、四~五町四方を単位とする集落の事である。

 この火災により、 下加治屋町方限七十軒ばかりの集落にあった大久保と西郷の家も焼失し、現在の高麗町に住居を移していた。

 

「もっとすごい御殿に住んでるのかと思いました」

 茅葺の屋根に五つ程の部屋と土間、外道と家を隔てているのは長州にない玉石垣であり、その上には茶の木やイヌマキなどの生垣が生い茂り、隣の家とを隔てる屋敷割りも兼ねている。

 座敷に通された和奈は、意外すぎるほど質素な家に驚いていた。

「和太郎の内の大久保さんが、大体想像できたよ」

 と桂は笑うばかりである。

 薩摩藩邸に加え、大久保のあの態度からは想像付き難いのだから、仕方がない。

「薩摩の町は、それそのものが要塞の様なものだ」

 古来、薩摩は城を以って守りとするのではなく、人を以って守りとなす風習がある。

 薩摩藩は薩摩と大隈の二国領を有していたが、堅固な城郭を築き城を守るのではなく、幕府から一国一城令が出されているにも関わらず、領内に百近くの外城を築き武士を配置している。

 外城に住む武士達は郷士と呼ばれ、城下に住む武士の城下士の下の身分である。農耕で生計を立ててはいるが、緊急時には外城全体が一個の軍隊となり戦わなくてはならないため、藩が定めた訓練には定期的にでなくてはならない。

 薩摩藩はこの外城を以って、国の防御としているのだ。

「他にはない兵法で、見事と言いたいが、一国一城の命を薩摩が無視している方が私には驚きだ」

「普段は農民と同じ暮らしだと聞くが、それほど財政に圧迫している様に見えぬのも不思議だな」

「琉球だよ」

「琉球?」

 加賀百万石に継いで、七十七万石の石高を誇る薩摩藩だが、石高を玄米高に直すと四十万石にも満たない。総人口の四分の一が武士である薩摩にとって、この益では財政的に逼迫を意味し、京や江戸の中枢で政権を担えるはずもないのだ。

 シラス台地で、農作物の収穫も安定的でないこの地で、薩摩が執った政策は琉球王朝との交流である。

 琉球は中国とも交流があり、薩摩藩歴代藩主はこれに注目し、富国強兵を計るとともに殖産興業の発展に力を注ぎ、貿易にて財を得て来た。

 和奈が驚いたのは、大久保の家だけではない。

 薩摩には水力による発電所があったのだ。この時代に発電という仕組みが存在していた事実は意外だった。

 西洋式の火薬製造所、造船所などを各地に造り、最新鋭のライフル銃や蒸気船が国内で製造されている。港に於いては、外敵となる船の進路を阻む水雷が設置されていた。

 嘉永五年頃には、大砲を鋳造するための反射炉や溶鉱炉、ガラス工場も集成所とよばれる工業地帯にあり、薩英戦争で使用した海岸の大砲はすべて此処で創られた国産品だった。

 薩摩はこの薩英戦争が転機となり、鎖国から開国論へと反論が大きく変わった。それほど、イギリス海軍が誇る最新のアームストロング砲の威力が絶大だった。敗戦で終った戦であったが、薩摩人は負けず嫌いな気質を持つ。終始士気が下がる事戦い抜いた薩摩をに対し、イギリスは親交政治を執る方針を決定し、以来、蒸気船や武器などの輸入に尽力し、藩士のイギリス留学を斡旋するようになった。

 イギリスは薩摩だけではなく、長州の底力にも目を付けていた事もあり、薩長の密約後には薩摩の以来を受け、武器の斡旋しているのだが、すべては薩摩との交流があっての事と言えるだろう。

「大したものだ」

「笑えた事ではないよ。この貧弱な土地で生き抜いてきた薩摩の底力は侮れたものではない。完全に敵に回していたらと、その力の差を痛感するばかりだ」

 長州とて陸戦では負けぬという自負はあるが、海軍戦ともなれば、そこに力を注いでいる薩摩相手に同等の戦いを展開する事が出来るかどうか危ぶまれるのである。

「熱血漢が多いのも、薩人の厄介な所だ」

「確かに」

 笑う武市の後ろで、新兵衛も笑みを零している。

 すっ、と障子が開くと、いつもの如くニコリともしない大久保が部屋へと入って来た。

「久方ぶりだな、桂くん。それに」

 その後ろに座る武市と和奈に一瞥を投げる。

「小僧もだ」

「また小僧って・・・これでも二十を越えてます・・・」

「ほう。どうやら精神の齢と言うものは見た目にも出るらしいな」

「それって、中身が育ってないって事ですよね」

「言い換えればそうだな」

 と言い終えると高らかに笑い声を上げ、上座へと進んで行く。

「息災でなによりだな、新兵衛」

 座りながら、一番下手に座っていた男に目を向ける。

「はっ」

「さて。なにがどうなって、君までここに居るのか聞きたいものだ」

 最後に白羽の矢が立ったのは武市である。

「護衛護衛と、周りが五月蝿いので来てもらったまでです」

「懸命な判断だ。注意は怠ってはおらぬが、 密約が成っているとは言え水面下のもの。粗暴者が出れるとも知れぬからな」

「それは長州に来た黒田くんとて同じです。正式に長州入りとなったとは言え、薩人と知られれば血気に逸る者が出る危険がある」

「護衛もなしかと訝しんだが、田中殿が居たゆえ単身にて使わせたと思いますが?」

 武市が後ろをちらりと見やる。

「新兵衛と岡田くんがおるのだ、何を心配する事もあるまい」

 桂と武市が、二人を護衛に付けるだろうと承知での単身なのだ。

「身なりからして、一介の藩士風情には見えぬゆえ、先ほどの問いをしたのだがな」

 交わしたつもりだったが、大久保に誤魔化しが通用するものではない。

「失礼致しました。この者は記録所役支配表番頭の桂木宗次郎と申します。藩主の許可を得ての同行にございます」

「承知した。小僧はおまけ、と言う事でいいのだな?」

「一応、小五郎さんの小姓役として来ています」

「随分と出世したものだな。まあいい。君達の来訪、心から歓迎する」

 まずは落ち着きたまえと、運ばれて来たお茶がそれぞれの前に置かれ、大久保は一口喉の奥にお茶を流し込んだ。

「お茶は宇治に限る」

 お茶に対する大久保の拘りは、桂もよく知って居る。出されたお茶も、わざわざ京から持ち帰った物だろう。

 土佐参政の小笠原唯八が、同じく参政である福岡孝弟と上洛する一ヶ月前、容堂の使者として薩摩へ来たと、一服した大久保が口を開いた。

(意外な事は続くものらしい)

 と、武市は内心苦笑せざるを得なかった。


 小笠原は土佐城下馬廻格であった小笠原弥八郎の嫡男としてこの世に生を受けた。容堂の目に留まった小笠原は側物頭加役に召抱えられた後、大監察兼軍備御用役に就くが、土佐勤王党の取締りを命ぜられ仕置役に就く。

 上士でありながら、元々は尊王攘夷論者であったにも関わらず、同じ尊王を唱えていた土佐勤王党を弾圧する側の立場となった。江戸詰だった頃の乾退助が、藩邸に尊攘派浪士らを匿っていたのとは反対に、土佐勤王党の活動自体に批判的であったため、大津で捕縛された間崎哲馬ら三名の断罪を執行した。


「中岡くんと乾殿の説得も大きかろう」

「小笠原殿は元来尊攘論者だ。時勢を考え倒幕に転んだとしてもおかしくはない」

 だが、武市にとって小笠原は仇敵の一人である。勤王党への弾圧に加担していた事実を消す事は出来ない。

 中岡との怨恨もある。

 八月十八日の政変後、土佐勤王党の弾圧が容堂の命によって強まる中、清岡道之助率いる二十三名を引き連れ、捕らえられている勤王党員の解放と藩政改革を訴えるため、岩佐番所に武装集結した。容堂はこれを反乱と見なし、小笠原は藩兵を伴い鎮圧に乗り出すが、清岡らは剣を交える事なく阿波国へと逃れた。だが阿波藩により捕縛され土佐へと送還され、田野奉行所に突き出された二十三名は、何の取調べを受ける事もなく奈半利川河原において全員斬首となった。

 その二十三名の中に、中岡の姉縫が嫁いだ岩佐関の関所役人川島総次が居た。

 土佐の藩論転換のためと、乾と共に画策して小笠原への工作に走った中岡の心中は穏やかではなかっただろうと武市は思う。

 小笠原は仇討ちの相手なのだ。憎しみに駆られ殺す事もできたはずであるが、それをしなかったのは中岡がただ単に忍耐に優れていただけではなく、時勢を見極める目と思想があったからに他ならない。

「明日、二の丸へご同行願う」

「仰せの通りに」

 畏まった桂を前に、大久保は組んでいた腕を解く。

「貴殿は長州藩主より命を受けて来た使である上、加判役ともなれば私よりも上格だ。そう畏まらないでもらいたいものだがな」

「意にもない事を仰せにならぬよう、大久保殿」

「ふん。一時はどうなるものだと焦りはしたが、万事とは言えぬまでも、今後を考えると君が長州筆頭席に就いた事実は、私にとっては喜ぶべきものだ。しかも、土佐におれば我らと肩を並べて倒幕に動いていたであろう、党首を片腕にしている。これほど心強いものはあるまい」

「過大評価し過ぎです」

「馬鹿を言いたまえ。後藤殿が藩士らを扇動し動かす力は容堂公の力有ってのものではないか。心に訴え響く言葉など有ろうはずもなかろう。その点、君には信望を集める弁才と行動力がある。長州に桂くん、高杉くんの双璧に、土佐に武市くん、坂本くん、中岡くん、我が薩摩に於いては私と吉之助。この三藩で倒幕の狼煙を上げられておればと、幾度惜しんだ事か」

「坂本くんの奔放さだけが頭痛の種となりそうだけどね」

 大久保は、それもそうだと言うと、武市と中岡の二人にしておくべきだなと訂正してしまった。

「残念ながら、倒幕の意志はあると言っても、坂本くんには武力による倒幕を望んでいない。問題とするのはその点だ」

「それは私も同意する所。幕臣と懇意であるのは懸念材料にしか成りえない」

「勝安房守殿の存在は無視できたものではないからな」

 二人の言葉に武市の顔が曇る。

「家茂公が薨去なされた後、勝殿への風当たりは強い。容易に動ける立場ではないと言え、我ら前に立ちはだかるのは必至であろう」

「問題は山積みでありましょうが、今ここで憂いても詮なき事。出方を見据えながら我らも動くしかありません」

 そうそう、と、桂は赤井が勝と共に厳島へ来たと告げた。

「はっ? なんの冗談だ?」

「冗談などではありません。どういう経緯で勝殿があの男を擁護する事になったかは存じませんが、後ろについたのは確かですよ」

「厄介だな」

 幕臣と幕府機関とが接点を持っていたとしても、不自然ではない。が、よりにもよって赤井が勝と懇意になっている状況を良しとできないのは、大久保も同じだった。

「おい、小僧」

「はい!?」

「己の立場は弁えておろうな?」

「え?」

 呆けた顔で座る和奈に視線が集まる。

「桂木くん、確りとこの馬鹿に説明しておきたまえ」

「ご心配には及びません。状況を見る目は持っております」

 武市が援護に回るが、当の本人は何の事を言われて居るのかさっぱり検討がついていない。

「その顔を見る限り、この場の空気すら読めておらぬと思うのは私だけか?」

 言いながら桂に視線を送る。

「あの男の存在に揺らぐ心はない、と申し上げておく」

 桂が刺客を送った事について、和奈は驚きを見せたが追求はしなかった。芸州での戦でも赤井と斬り合い、厳島でもその剣を止めている。しかもその時に感じた剣気に殺気も混じっていたのだ。

 和奈は迷わず赤井を斬るだろうと言う事は、桂も判っている。

「ここに来るまで如何様な経験をしたのかは聞くまい。あの男が新撰組に行ったと知った時のこ奴しか知らぬゆえ、疑心となるのは承知してもらいたい」

「僕が小五郎さんや武市さんと共に歩むと決めた時とおなじく、赤井くんが新撰組に行ったのは自分の意思だと思います。その時点ですでに志を違えている相手です。必要なら、斬って捨てる覚悟はできています」

 きょとん、とした表情になった大久保に、つい武市は笑いを零してしまった。

「・・・っ」

 慌てて腕を組みなおした大久保は、ならば良い、とだけ言うと口端を上げた。

「己が剣を見極めたか?」

「いえ、それはまだです」

「なんだ。成長したかと喜んだのは早々過ぎたようだな」

「側に桂木くんも居るゆえ、心配は要りません」

 言葉に含まれる意味を図りかねた大久保だが、この場で聞き尋ねる事はなかった。

「そう納得しておこう。さて、吉之助もそろそろ来る頃だろう。酒の用意をさせるとしよう」

 黒田との会話を思い出した桂は、大久保が部屋を出て行った後しばらくして、腹を抱えて笑い出してしまった。


 翌日、島津久光との謁見において、長州と薩摩の同盟が藩主の合意に基づいて締結される運びとなり、約款を交わす事で両藩主の認可を受け、正式に薩長同盟が成立した。



 一方、芸州藩との同盟締結に走った広沢真臣は、藩主浅野との謁見が叶い、目通りを許されていた。

 第二次長州征伐において最前線ともなった芸州は、長州征伐には反対の意向を示し、幕府と長州の仲介に入ろうと長征の先鋒役を辞退した。

 岩国領の吉川と同じく、征伐に際して幕府に義はないと考えた浅野は、長州藩と足並みを揃えたいと正式な書簡を持って来た広沢を歓待し、同盟締結の約束をしたのである。

「余も土佐藩の動きには留意しておる。内情が如何知れぬが、長征において出兵も辞さなかった藩である。桂殿が危惧されるのも致し方在るまい」

 書状を受取った後、浅野は酒の席を用意し、広沢を自室に招いていた。

「しかし長州には多くの土佐藩士がおります。脱藩しているとは言え、倒幕に向け駆け回っている者もおります。問題は上部にあるものと、某は考えております」

「そこだなのだ、問題とするのは。後藤殿と言えば公武合体の推進を推進めて来た第一人者ではないか。土佐参政の福岡殿と小笠原殿も然り。征伐が失敗し、幕府の権威が揺らぎ出しての倒幕転換に、余は懸念を抱かざるを得ぬ」

「ご心中お察しいたします。それについては、加判役桂殿も承知致すところ。まずは貴藩との同盟締結を成し、いずれ薩摩との三藩合意にて同盟を成すが先決と思いますれば、土佐に於いてはその後にてとご容赦願い申し上げます」

「相解った。敬親公には、此度の申し出につき、拝謁賜りお受けするのがゆえ、近日中に謁見に伺う旨、お伝え願おう」

「御意」

 親書を携えた広沢は、次の日の朝早々に芸州を後にした。

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