学級崩壊後の保護者説明会
勢い任せで書いているので、設定の甘さなどは、大目に見てください。よろしくお願いいたします。
「何があったのか、しっかりと説明していただけませんかな?」
「そうですっ、ウチの子なんて、昨日から一切部屋から出てこないんですよっ!」
怒気を孕んだ声に、貴族学校教師のボリス・セベンツォフは、ビクリと震えた。
昨日、彼が担任を務める教室で学級崩壊が起こった。
叫ぶ男子生徒、暴れる男子生徒、縮こまっている女子生徒等々、普段の様子からあまりにかけ離れた生徒たちの暴走によって教室はめちゃくちゃになり、とても授業などしていられる状況ではなかった。その為、昨日は授業を行うことなく生徒たちを帰し、今日は緊急で休みとして、保護者たちが押し掛けてきたのだった。
「は、はいぃっ」
この学校の教師になって早3年。こんな目に等あったこともなく、なんで自分が!? と、昨日から何度目かも分からない絶叫を心の中で上げていた。
「えっと、そのぉ……」
「先生っ! はっきりとお話しください!」
歯切れ悪くしているボリスに父兄たちが詰め寄ってくる。
「はひっ、お話ししますので、落ち着いて、お、お席に、お席にお座りください!」
半泣きになりながらも、必死に声を上げる。半ば裏返ったボリスの声に、父兄たちはとりあえず、席に着いた。
「座ったぞ、さぁ、話したまえ」
「はい……すぅ~、はぁ~、えっと、皆さま、これからする質問は、今回の騒動に関わる話ですので、どうか怒らずに答えてください」
大きく深呼吸をしながら、頭の中でどう話すか考えるも、良い方法など思いつかず、ボリスは覚悟を決めて、すべて話すことにした。
「御父様方、ご子息ほどの年齢の頃、俗に言う思春期の頃って、素直に異性を褒めるのが恥ずかしく感じませんでしたか?」
ボリスの語りだした言葉に、聞いている一同は眉をしかめるも、先ほどのことを思い出して、男性たちは頷く様子を見せた。
「本当は好きなのに、それを素直に言えなくて、ついつい、酷いことを言ってしまう。本当は心にも思っていないのに、勢いに任せて酷いことを言ってしまった。そんなこと、ありませんでしたか?」
男性たちの幾人かは視線を反らし、幾人かは「あ~」と声を漏らした。その様子に女性たちは、若干眉をひそめた。
「事の始まりは、ペーテル・ハルネス君が、つい最近婚約を結んだことをからかわれたのが始まりでした」
全員の視線が、ハイネス夫妻に向かう。
「ペーテル・ハルネス君は、反射的に婚約者であるウルリーカ・ペーデルさんの悪口を言ってしまい、その流れで男子たちによる婚約者への悪口大会が始まってしまいました」
父兄たちの間、男子たちの両親とその婚約者である女子の両親の間に恐ろしいほどの緊張が走った。娘の悪口を言っていたと聞いて苛立たない親などそうはいない。
「悪口大会に唯一、参加していなかったジョフレ・ドラード君に、一人の男子が「お前は婚約者に不満とかないのかよ?」と声を掛けました。
先ほど言いましたが、思春期の男子です。婚約者のことを想っているのにそれを口にできずに悪口を言ってしまっていたわけですが、同じ思春期でも、中には、そうならない子もいます。ジョフレ・ドラード君が、それでした。
彼は、悪口を言っていた男子たちに向かって、ニヤリと笑うと「フッ、君たちはかわいそうだね、そんな婚約者と一生を添い遂げるだなんて、それに対して、僕の婚約者であるイザベラ・パッサリーニは、素晴らしい女性で、その容姿もさることながら……」と、婚約者の絶賛を始めました。
しかも、悪口大会を開催していた男子たちを見下すようにしながら。その態度に侮辱されたと感じ、男子たちは怒りを覚えました。
恥ずかしさで言えなかった思春期男子たちでしたが、思春期の恥ずかしさよりも怒りが勝り、そこからは、自分の婚約者がいかに素晴らしいかをアピールし合う絶賛大会へと移行しました。
「自分の婚約者は、こんなに素晴らしい」「なんだその程度、俺の婚約者はこんなにいい女なんだ」と、そこからは売り言葉に買い言葉、勢いに任せてヒートアップして「僕の婚約者はこんなことをしてくれたんだぞ!」「フンっ、俺の婚約者なんて、こういうことを!」「そんなのうちの婚約者だってしてくれてる、それに加えてっ!」っという感じに、なっていき、自分たちの思い出エピソード暴露大会へと移行していき、自分がどれだけ婚約者を愛しているかの、宣言合戦まで行き付き、そこでふと、自分たちが、何処で、何を、誰の前で、叫んでいたのか、冷静になってしまったのです。
怒りは沈下し、恥ずかしさが再燃し、彼らは自身を守ろうと叫んで暴れました。
横で聞いていた女子たちも最初こそ苛立っていた様子ですが、そのうち、赤面して行き、最後には、体中真っ赤に染めて丸まってしまっていました。
以上が、昨日会った出来事です」
「……」(父兄一同)
ボリスが話し終わると、「まぁまぁまぁ♪」とにやけている母親たち、天を仰いで「息子よ……」と同情する父親たち、笑うのを必死にこらえている母親たち、難しい顔をしている父親たち等々、十人十色の表情をしていた。
「話は、わかった。一つ聞きたい」
「はい」
「婚約者に対して不満を言うだけだった男子はいたかね」
「いませんでした」
この日、男子生徒たちの父親たちが「腹を割って話そう」と声をかけ、母親たちは息子をニヨニヨと笑ってみていた。女子生徒の母親たちは「あなたってとっても愛されているのねっ♪」と声をかけて娘の引きこもりを長引かせ、父親たちはなんて声をかければいいのかわからず、ただ見守ることしかできなかった。
前年度、前々年度と卒業式で婚約破棄騒動が勃発していた学校だったが、この年の卒業式では、どの婚約者たちもとても仲よさそうに並んでいたのだった。
勢いに任せて告白して、その後冷静になって恥ずかしさで死にそうになる。
そんな話を聞いて、そこから妄想しました。




