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「お母さんのお墓参りに行ってこようと思うんです」


 朝には遅いが昼には早い。そんなブランチ時にふとエナがそう口にした。

 その言葉にレオニスはエナに視線を向ければ、彼女はこう続ける。


「ムーンランド子爵も仕事の都合をつけてくれて、一緒に。その後、領地のことを見せてもらう予定なんです。と、言っても見るのは領都のここだけなんですけど……それでも私が小さかった頃とは色々と変わってるみたいなので」

「そうか」

「レオニス様も一緒に……は難しいですよね」

「そうだな。式後にまとまった休暇は取っているが、休暇は休暇でやりたいことがあるからな」

「ですよねー」


 レオニスのすげない返答にエナがそう返し、それから「ん?」と首を捻った。


「休暇!? レオニス様、今休暇中だったんですか!? いや確かに領地来てからずっと邸にいて珍しいことあるなとは思ってましたけど!!?」

「俺とて休暇は取っている。ただその休暇は基本弟妹のために使うと決めてるからな」

「弟妹……それは、レオニス様がいた孤児院の?」

「ああ」


 エナの問いに頷いて、レオニスは食後のコーヒーを傾ける。

 そんなレオニスにエナもまたコーヒーを傾けながら「大事にしてるんですねえ」と相槌を打つ。


「参考までに何をされてるのか伺ってもいいですか?」

「君が面白いと思うようなことは何もしてないと思うぞ。寄付金が正しく運用されているか確認し、食べ物や着るものの手配。孤児院を卒業後に職に困らないよう技術習得の支援をしたり、職場の斡旋先を探したりな」

「仕事じゃねえか!」

「言っただろう、君が面白いと思うようなことはしていないと」


 吠えるエナにレオニスは淡々と答える。

 ぐう、と唸るエナが行儀悪くテーブルに突っ伏した。


「もっと、こう……子供達と家事したり、遊んだり、ほのぼのしたのを想像したのに……っ! というか休暇もそれってレオニス様、休めてるんですか? 人には休養を強要していて自分がそれって……!」

「少なくとも俺は寝不足や空腹で倒れたことはないな」

「くそう、何も言い返せねえ!」


 大騒ぎするエナに構わず、レオニスは涼しい顔でコーヒーカップを置く。

 懐中時計を確認すればそろそろ良い時間だ。


「……でもそんなに大事だったなら、こっち来ちゃって良かったんですか? 孤児院、王都の方にあるんですよね?」

「君が気にすることじゃない。支援はここからでも可能だし、こちらでしかできないことも色々とある」


 そう告げてレオニスは席を立つ。


「ムーンランド子爵を付き合わせるのなら、準備は早めにな」

「あ、はい」


 そうしてそれだけを告げるレオニスをエナはただそう返事をして見送るだけだった。

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