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「ーーという感じでしたね」


 晩餐時。

 エナにリトルパイン伯爵家での茶会の一部始終を報告させたレオニスはただただ黙した。


 相変わらず彼女の話は判断に困る。

 だが彼女の話が本当ならば前世という縁で次期アクアヴァリー侯爵夫人になるリトルパイン伯爵令嬢と懇意になれたのは大きいことだろう。


 エナにつけた侍女からも二人がずいぶんと親密な様子だったという報告も受けている。

 まあ、いまだに作法がつたないエナが赴いた初めての茶会にしては悪くない結果だったのだろう。


「それでですね、レオニス様。その後にマリーナさんとヲタク談義で盛り上がりまして。コスプレ衣装縫ったのに着てくイベントなくてカナシミと話したら“じゃあまた茶会開くのでコスプレしましょうよ!”って話になって」


 コスプレ。彼女が縫い上げたマンガの登場人物の衣装のことだったか。

 彼女の独特な言葉に慣れさせられてスルーしていたが、リトルパイン伯爵令嬢を通じて外に出るようになるのならば、その辺りの矯正も必要かもしれない。教育係にその辺りについて話しておく必要があるかもしれない。


 エナの話を右耳から左耳に抜けるように聞き流しながら、レオニスは食事を口に運ぶ。


「マリーナさんとそれで盛り上がっていたら、マリーナさんに会いにきたアクアヴァリー侯爵夫人も途中乱入してきて、面白そうって大盛り上がりしちゃって……なんかちょっと大きな茶会になりそうなんですが」

「…… ………………」


 得意先にしたい大物の名前にレオニスは思わず食事の手を止める。


 リトルパイン伯爵令嬢と縁づく以上、アクアヴァリー侯爵夫人は切り離せない存在だ。

 リトルパイン伯爵令嬢と懇意にすればエナが接触する機会もあるだろうとは予想していたが、まさかこんなに早くも接触するとは。


「……行ってもいいですか?」


 こちらの顔色を伺うようにエナが恐る恐る問いかけてくる。

 どことなく期待する眼差しを見返し、レオニスは小さくため息をついた。


「……ベルトゥリー伯爵家の名を貶め、俺の事業に打撃を与えるような真似をしなければ、いくらでも好きにしていい。そういう契約だ」

「そう言われるとプレッシャー」

「教育係の言うことさえきちんと聞いておけば問題はないだろう。それにそろそろ結婚式の招待客の選別も始めなければならない。俺が全て手配をしてもいいが、新婦側の席に見知らぬ顔ばかり並ぶより見知った顔がいた方が君もいいだろう。いい機会だから人脈を広げてくるといい」

「けっ、こん、しき」


 エナがカトラリーを取り落とす。


 前もこの話をした時に動揺を見せたが、あの時と変わらず動揺を見せるのはなんなのか。

 エナを胡乱に見つめれば、彼女はハッと我に返って慌てて取り落としたカトラリーを手に取った。


「……レオニス様、それ前にも言ってましたけど、今大体どのくらい進んでるんです? いつやる予定なんです?」

「式場は押さえているが、式そのものの準備はまだ全然だ。今はベルトゥリー伯爵領の領主代理としての仕事の引き継ぎや、式後に事業の拠点をベルトゥリー伯爵領に移転するための準備を進めている。君の体型が安定する時までも考慮して、大体社交シーズンが終わる直前の夏……三ヶ月後のつもりでいる」

「さんかげつごぅ」


 エナがきゅっと顔の中心に顔のパーツを寄せるような渋い顔を浮かべた。


 それはどういう感情の表情なのだろうか。レオニスにはいまいち量りかねる。

 とはいえ彼女の心情を慮ったところでやることは何ひとつ変わらないので、レオニスはエナを無視してこう口を開いた。


「目下ひと月後、ベルトゥリー伯爵領の仕事の引き継ぎの目処がつき次第、本格的に式の準備に取り掛かる。それまでに君が招待したい人物のリストアップと、体型を安定させておくように」

「体型安定めっちゃ言う」

「当然だろう。君は式当日にせっかく作ったウェディングドレスが入らなくて泣きを見たいのか」

「グハッ!」


 レオニスの一言にエナが胸を押さえて崩れ落ちた。

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