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第1話 探偵JK、異世界に召喚される


尾長千絵美は、ごく普通の女子高生だった。

ただし、ひとつだけ普通ではなかったのは、彼女が“現役の探偵”であるということだ。


といっても、それは「謎の美少女探偵」のような華やかなものではない。放課後の図書館で、未解決事件の資料を読み漁り、ネットの匿名掲示板で情報を集め、誰にも気づかれないように地味に事件の真相を突き止める。彼女にとって、それは日常の一部だった。人並み外れた洞察力と、どんな些細な情報も見逃さない論理的思考力が、彼女の唯一の武器だった。


その日も、いつものように図書館の奥にある古書コーナーで、行方不明事件の資料を調べていた。薄暗く、埃っぽい空気が、彼女の集中力をさらに高める。事件の核心に迫りかけたその時、床に広げた資料の下から、奇妙な光が漏れ出した。


それは、魔法陣だった。

光はまるで意思を持った生き物のように蠢き、やがて床一面を覆う複雑な紋様を描き出す。千絵美は、探偵としての冷静な頭脳で状況を分析しようと試みたが、目の前の現象は、彼女の知るどんな科学法則にも当てはまらなかった。


「……何、これ?」


光は一瞬にして図書館を、そして彼女の存在を飲み込んだ。


次に目を開けた時、千絵美の目の前には、見慣れない星空が広がっていた。

空気は澄んでいて、遠くで水の流れる音が聞こえる。彼女は石畳の上に倒れ込んでいた。身体を起こすと、すぐ近くに、月明かりを浴びて佇む一人の青年がいた。

彼の瞳は夜空のように深く、その顔には何の感情も浮かんでいない。千絵美は、警戒しながら立ち上がった。


「……あなたは、誰ですか?」


青年は、千絵美の言葉に答えることなく、ゆっくりと近づいてくる。そして、彼女の顔をじっと見つめ、淡々と告げた。


「君の能力が必要だ」

「は?能力って……何を言ってるんですか?」

「私はユージン。君をこの世界に呼び出した者だ」


千絵美は混乱した。転移? 魔法? まるでファンタジー小説のような話だ。しかし、目の前の青年から発せられる力は、言葉では説明できない確かな現実として彼女の心をざわつかせた。


「あなた、私を元の世界に戻してくれるんですか?」

「ああ。ただし、君が私の依頼を成功させたら、だ」


ユージンは冷たく言い放ち、千絵美に一枚の紙を差し出した。そこには、彼女の見たこともない文字と、奇妙な図形が羅列されていた。


「この世界の『謎』を解き明かせ。それが、君の使命だ」

千絵美は紙を受け取った。探偵としての直感が、この謎を解くことが、元の世界に戻る唯一の道だと告げていた。

「わかったわ。その代わり、約束は守ってね、ユージン」


彼女は、見慣れない世界に放り込まれた恐怖を、探偵としての好奇心に変えていった。

この奇妙な出会いが、彼女の平凡な日常を終わらせ、"ホッパー"としての運命を、そして彼との奇跡的な恋の物語を、静かに、しかし確実に始めたのだった。



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