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懐の狭い短編集

にゃんにゃんにゃん

猫耳メイド :にゃんにゃん♡ にゃんにゃんにゃんにゃん♡

オレ    :コケコッコーだバカヤロー!

猫耳メイド :いでっ!

 好きな動物でヤギって答えるのは、なんか変態っぽいんだ。僕が牧場で働いていたころは主にヤギの区画を任されていた。ヤギという動物は本当に手がかからなくて、僕は一日中ヤギたちの姿を眺めているだけでよかった。雲が通過しながらも空はずっと澄んだ青色を保っている。ヤギが草を食べているときの口の動きはいつも思っているよりもアグレッシブだ。決してお前は空想上のものでない、れっきとした生物なのだということを思い知らされる。寒い冬に温かいスープを飲むと生きているという感じがする。夏にアイスを舐めているときは生き返るという感じなのに。その答えはきっとこのヤギたちの方がよく知っているのかもしれない。毛むくじゃらの裸に、ぐるぐる線の入った角だって生やしている。牧場に来てどれくらいの時間が経ったのかは、僕の周りに何匹のヤギが集まったか、その具合で計ることができた。だいたい5匹で終業時間。近くにきたヤギのうち2匹の頭を撫でて帰った。

 帰ったら猫耳メイドはいなかった。ツンツン妹もアラアラお姉さんも、そりゃいないのだった。時代錯誤というものだ。可愛い女の子をオレンジやイチゴ、果物でカテゴライズするのは遅れている。なにせ今はもっと全体的に病みがちである。昨日からARIAを見始めたんだ。特別面白いわけではないけれど、なんかいいアニメだと思う。街はきれいだし、変にひねくれたセリフもない。前評判通りの癒されるアニメだった。

 ただ癒されてばかりもいられないのは、僕がもはや足りなくなってきているためだった。たまには牧場に帰って、ヤギと一緒に踊りたいんだ。酒を飲んで、酔っぱらったまま冬の夜を突き飛ばしてみたいんだ。そのときにみえる夜空はきっとこの上ないくらいにきれいなんだろう。未だに星がきれいとか、海の静けさなんかに憧れていた。これからもしばらくは憧れ続けると思う。海や星に裏切られる機会なんて、いつか漁師にならない限り訪れないのではないか。とにかく寒い分澄んでキレイな夜だった。アルコールでぼやけさせる前に、ヤギと踊り明かす前にこの小説を書き上げておかなければ、きっとまた今すぐにでも牧場からの出頭命令が下ってしまうかもしれない。とうぜん働いていたのは社会主義系の牧場だった。すべてが計画的に破綻している。人も動物もみんなでワルツを踊って、輪になって回転しながら冬の夜空へ飛んでいってしまった。

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