5-5 遭遇
「付いてきてるかぁ? バテてるなら言えよ?」
セルケトが一行に声を掛ける。
険しい登山。
ライカはアップルパイを食べながら、ご機嫌だ。
しかしアーネストとヘティトは、急な坂や、切り立った崖を越えたことで、体力の限界を迎えていた。
「ヘティト、休憩するか?」
「……大丈夫で御座います」
ヘティトの返事を聞いて、アーネストが機転を利かせる。
「セルケトさん、僕はもう一歩も歩けません。小休憩をお願いします」
「ハァ? だらっしねえなぁ犬ッコロ。
仕方ねぇ。一旦ここらで休憩すっか」
荷物を降ろして、キャンプの準備をする。
アーネストとヘティトが、携帯食を用意していたので、それをモソモソと食べる。
「不味くは無いが、味気ないな」
「申し訳ございません、ライカ様。水気を残すと腐りやすいので、強めに焼いているのです。異常を感じたらすぐ仰ってください」
ウンウンモグモグするライカ。
「それはそうと、馬酔木衆とはどういう人々なのだ?」
出し抜けにライカが、セルケトに聞く。
「いわゆる”山の民”だよ。
土地を持たずに生活してるから、税金が取れねえ。
一方で、市場や祭りなんかがあると、ここぞとばかりに芸を売りに来る」
「おお。楽しそうな」
「楽しいのは勿論だが、その裏にある暴力を考えると、アタシは余り好きじゃないね」
セルケトの言葉に、難しい顔をするライカ。
「ライカ様、ハーブティーです」
「うむ――――旨い。リンゴとシナモンの仲がいい」
食レポをしていると、セルケトが注意を喚起した。
「お、お客さんだ。気を付けろ」
全員が立ち上がって、臨戦態勢を取る。
すると森から20人ほどの男たちが全方位を囲んでいた。
全員が馬の被り物を被り、滑稽でありながら恐怖感を催す陣営だ。
「馬酔木衆だな。どういう要件だ?」
セルケトの問いに、男たちの1人が答える。
「こちらのセリフだ。何をしに来た?」
「おいおい。こっちは客だぜ? 歓迎しろよ」
セルケトが皮肉るが、男たちの輪は縮められる。
「我々は権力争いに興味は無い。
どちらの陣営の使いか知らんが、平等に排除する」
「へぇ、中立宣言か。
賢いが、つまらねぇ選択だな」
セルケトの挑発に、男たちが敵意を募らせる。
その空気を感じ、ライカが抜刀して、臨戦態勢に入った。
「ヘティト、犬ッコロ、任せたぜ」
セルケトが言い置いて、走り出す。
彼女の戦い方は、移動を封じられると玉に瑕が入るからだ。
ダダダ、と駆けて、一気に3人を撫で切りにする。
「クソ! このアマァ!」
セルケトが体を掴まれるが、ライカの剣がそれを阻止する。
「油断めさるな!」
「おぅ、サンキューな」
視線を交わし、各々戦線に戻る。
「カネ・モンス。強化硬化」
「カネ・ソヌス。雷」
アーネストが味方の防御を魔術的に強化し、ヘティトの短杖から奔る稲妻が8人の敵を打ち倒した。
「どうだ? まだやるかい?」
半減した戦力の相手に対し、セルケトが問い掛ける。
「……何が望みだ?」
竜頭の代表がセルケトに問う。
するとセルケトは、満面の笑みを浮かべて、
「最初っからそうすりゃいいんだよ。
お前らの拠点に案内しろ。仕事を持ってきた」
敵に対して命令を告げた。
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「それで? 我らに何をせよと?」
馬酔木衆の代表たるヒューマンの老人が、探るような眼で4人を見る。
「アタシらはヴィーノの城に入りたくてね。
金は払うから、馬酔木舞いを頼めないか?」
代表が目を見開いて唸る。
「馬酔木衆に参戦せよ、と?」
「パガン枢機卿は星教右派だ。
アンタらが大事にしてる行事や祭りも、封印されるんじゃねぇか?」
グヌヌと唸る代表に対し、ライカが無根拠の保証を告げる。
「我らが来たからには、パガン侯爵の陣営の勝利は決まったも同然! 今のうちに、こっちに付くのだ」
「――――仲間と考えたい。食事でも摂って待っていてくれ」
代表が、脇に控えた2人の侍従に合図すると、1人が部屋を出ていき、もう1人がライカたち4人を案内する。
「食堂にご案内します」
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山奥の馬酔木衆の村は、簡素で窮屈だ。
しかしそのみすぼらしい外観とは裏腹に、食材は豊富で、食事はバラエティー豊かである。
「はいよ。
鳥のスープと焼き立てのパン、人数分だよ」
女性が配給してくれる。
ヘティトが無言で、鬼のように赤辛子を追加する。
「美味い! アーニーには劣るが!」
「恐縮です」
ライカとアーネストのじゃれ合いを見ながら、セルケトは一息ついた。
「さーって、後は返事待ちだ」
鳥のスープを飲む。
苦味が利いていた。




