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4-6 新たな依頼

「昨日はええ仕事してくれたわ。

 2番坑道は綺麗になって、安全やって、現場から声が届いとるで」


 ドワーフの代表を務める少女ナディアが、ライカたちに告げる。


「それは良かった。それで?

 我々は、なぜまた呼ばれたのだ?」


 ライカが4人を代表し、ナディアに問う。


「腕のええ冒険者を大規模に募集しとってな。

 大きいプロジェクトやから、長時間の拘束になるけど、報酬は弾むで」


 どこか(いびつ)な笑顔で、ナディアが言った。


「どうや? まずは半年。

 仕事は水中探索。成功報酬は金貨20枚。


 プラス、日々の探索で色が出る。

 食事や酒はこちらで用意。


 ああ、金貨20枚っていうのは1人にや。

 先に前借りしたいんやったら、何枚かは相談に乗るで」


「だ、そうだが。

 どう思う?」


 ライカが皆を見回すと、微妙な視線が帰ってきた。


「怪しすぎンぜ。

 どこで何するかくらい、教えてもらわねーと」


 セルケトの指摘に、ナディアが無表情に答える。


「それ聞いた後に、仕事降りてもらったら困んねんて」


「なら答えはノーだ。

 よし、帰ろーぜ」


 セルケトが踵を返すと、ナディアは一瞬、頭の中で計算をして、呼び止める。


「ちょっと待ちぃ。

 君らは優秀やからな。特別に目的を教えたるわ」


 こいこいと手でジェスチャーし、ナディアが4人を密集させる。

 まさしく、内緒話の距離感で、彼女は言った。


「エバーマイン半島の浮上、これをやる」


「!?」


 4人ともに、大なり小なり驚いた。

 それだけ途方もない計画だったからである。


 エバーマイン半島の海没は、星歴1674年。

 第二次エバーマイン戦争の決着期に起こった。

 今から、45年も前の話だ。


 それからドワーフたちの多くは流民となり、エレニア王国内で2等市民とされてきた。

 半島本国に資産を持たず、エレニア王国と友好的だった海外派のドワーフのたちはそれを免れたが、高い賠償金を払わされ、苦しいことは変わらない。


「……それはとんでもない計画だな。

 ただ、成功すれば、多くの民が豊かになる計画でもある」


 ライカがそう分析すると、


「そもそも実現可能なのかが信じられねぇな。

 ヘティトはどう思う?」


 セルケトがそう繋げるが、ヘティトは、


「……………」(プイ


 返事をせずに視線を逸らした。



「……………」


 アーネストはセルケトとヘティトが、あの一件以来ギクシャクしていて、居心地が悪かった。


 何とか仲を取り持てないだろうか?


「じゃあ、犬ッコロは?

 どんな感じだ」


「中々手強そうですけど、やる必要のある大仕事ではないでしょうか」


 アーネストは言いながら、計画の事と姉妹関係の事が混ざっているのを自覚した。


「うむ。

 アーニーの言うとおりだ。

 私は参加しても良いと思う」


 ライカが能天気に賛成すると、セルケトが暗い視線を向ける。


「妨害も多そうだなぁ、なぁナディア?」


 その指摘に、ナディアは苦笑いする。


「ノーコメント」


 とはいえこれは、黙秘というより、降参の言。

 なぜなら、この世界に生きる人ならば、多かれ少なかれ、考え及ぶことなのだ。


 エバーマインが復興すれば、ドワーフをはじめとする亜人たちや、新天地に夢を抱く開拓者などが移住して、エレニアから労働力が失われるだろう。


 そして復興が進めば、エレニアに新たな隣国が現れることになる。

 それを脅威と取る人々も少なくは無いし、そもそも妨害行動とは、普通の計画に比べて難易度が低い。


 エバーマイン半島浮上などという大計画を立てるなら、多くの「人・モノ・カネ・情報」を縦横に組み合わせて進めなければならない。

 しかし妨害を行う側は、簡単かつ効果的な妨害を、好きな場所で行うことができる。


「とは言え、意義はあることだ。

 星教極右派のように、ウッドエルフやドワーフを2等市民などと言うべきではない」


「おぃおぃライカ。お前んとこのアーニー坊やはどうなんだよ?」


 セルケトが皮肉を言うと、ライカは胸を張って、


「アーニーが奴隷であるのは私が家長でないからだ。

 いつかもしそうなれば、解放奴隷にする予定だとも」


 ライカの言葉に、アーネストが寂しく答える。


「ライカ様、将来の都合は分かりません。

 あまり希望を持たせないで下さい」


 ライカは意外そうな顔をして、それから押し黙ってしまった。


(オイオイ、仕事受けるとかいう前にチーム壊れてねぇか?)


 セルケトは溜息を吐き、ナディアに言った。


「返事は今じゃなくてイイだろ。期待しないで待ってな」


★☆★☆★☆★☆★☆★☆


「さて、どうするライカ」


「仕事が終わったなら酒だ」


 大威張りで言い切る。


「犬ッコロ。お前の主、ダメだぞ」


 セルケトがアーネストに、こっそりと話しかける


「北の方では酒に強いのが、まだ美徳でして」


 そんなことを話しながら、ミニチュア街から、中心街へ。

 ここまで来ると、赤辛子の匂いも、そうきつくは無い。


「あ、天空城だ」


 遥か高空に、岩塊が浮かんでいあ。

 ゴンゴンゴン、という音を放って移動している。


「はー、いーなー。すごいなー」


 目を輝かせて見つめるライカ。


「おい、お前、天空城なんか興味あんの?」


 セルケトが問うと、ライカは


「当然であろう。

 冒険者であれば、誰もが挑みたいと思うものだ」


 自信満々と言った調子で、笑顔を見せる。


「え、行き方無い所に行きたいとかいうヤツの方が、少数派じゃね?」


 セルケトの指摘に、ライカが固まった。


「え、どうした?」


御幼少(ごようしょう)(みぎり)からの夢なのです………」


 気まずそうにアーネストが教えると、セルケトが笑った。


「アッハッハッハ!! すげえなライカ、アンタ天才だよ!!」


 そんな放言が聞こえたのか、ライカが復活していた。


「あれだけ巨大な岩が宙に浮いているだけでも、凄かろう!

 それだけでも、行く価値はある!」


「いやー、多分寒いぜー。アタシはパス」


「天空城には多くの伝説や逸話、

 数多の体験談が知られているのだぞ!」


「それエビデンスあるのかよ?」


「エビダンスとはなんだ!」


 グヌヌ、と黙らされるライカ。

 セルケトはそれを見ながら、海鮮料理屋に目を付ける。


「飯にしよう、エビダンス奢るぜ?」

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