3-3 幕間2 魔法使いとヤスヒコ
星歴1713年。6年前の話だ。
西の大港湾都市オスター郊外の岩場にて、夕暮れに火炎が舞っていた。
明らかに魔術の制御を受けた、花火のような戯れが、美しい夕暮れの浜辺で踊っている。
波間の上にひゅるひゅると、赤や黄色の炎の群れが、蝶や天馬の絵を描き、そして爆ぜた。
操作をしていたのは、緑のローブを着て、しわくちゃな顔をした老人だった。
杖を使わず、両手を使って、何事か呟きながら、炎をご機嫌に操っている。
ヤスヒコは感動し、コミュ障なのに声を掛けることにした。
「大したものですね、お爺さん! 見事な魔術だ!」
「きぃ~~ひっひっひっひっひっひ!!」
甲高い独特の笑い。……なんとも不気味な老人である。
ひとくさり笑い終わると、老人は黙り、急に自己紹介をした。
「……ワシは魔法使いじゃよ」
ヤスヒコが愕然とする。
(え、これ、オークスと一緒で仲間にする流れなの……??
いや落ち着け。これはドラクエ5好きの俺のメタ認知が暴走してるだけだ。
まほうつかいに似てるからって、人をコレクトしたいとか良くない!!)
「――し、しかし、人が使うのは魔術、と習いましたが」
「月影の塔の取り決めに従う者が魔術師じゃ。従わぬが魔法使いよ」
(カ、カッコイイイイイイィィィイィィィ!!!!)
あまりの渋さとミステリアスさに、度胆抜かれるヤスヒコ。
「お爺さんは、従っていないという事ですか?!!?」
ヤスヒコが意気込んで尋ねると、老人は顔にクシャリとした笑みを浮かべて、
「塔は決まりが多くてな。細々しくて従ってなどおれんわ」
素手で炎の魔術を操っているのも、塔に対する反骨精神からだろうか??
「仲間になってください!!」
ヤスヒコの中のドラクエスピリットが暴走した。
(さ、誘っちゃったぁっぁぁぁぁぁあぁ)
「――ワシを誘って何を成す?」
老人が、不思議そうに疑問を表明する。
「炎の魔法など、破壊にしか使えぬぞ」
「そんなことはありませんお爺さん、さっきの魔法も綺麗だったし、夢と希望があります!
それに当然、攻撃力もある。貴方がいれば百人力です」
「それを使って、何を成す?」
「オスターの街が少し様子がおかしくなっています。
星堂からは、非難の声明も出ています。
少し様子を見に行きたいんですが、貴方がいればこの上ない助けとなる」
皴に埋もれた紅い瞳から、問うような視線がヤスヒコの目を射貫く。
「…………よかろう」
「良いんですか!?
(2匹目!!!)」
不遜な考えがヤスヒコの頭によぎった。
「……だがひとつ、お主には認識の訂正と、謝罪を要求する。それが済んだら付いて行ってやろう」
「なんですか??」
「ワシ、女」
「すんまっせんしたー」
平身低頭で土下座するヤスヒコ。
「(ぼそっと)まぁ、バカ弟子の様子を見に行くのも良かろう」
これがヤスヒコと、炎を操る魔法使いの老婆との出会いであった。




