第96話 アリスとミツキ②
翌朝。 ミツキはアリスを起こさねばならなかった。
「アリス、起きろよ。 仕事だぞ」 クソ、どうしてオレがこんなことを。
クルチアといたときミツキは常に、起こす側ではなく起こされる側だった。 昨日から慣れない役割を強いられ、ミツキは疲れている。 口調も乱暴になってきた。
ミツキに肩をゆすられて、アリスは目を覚ました。
「おはようミツキくん」
◇
「ミツキくん、朝ごはん食べる?」
「そんなもん食べてる時間ないよ。 もう8時だぞ」
そもそもミツキは朝食を食べない。
「何時に集合だっけ?」
ミツキはアリスに時刻を叩きつける。
「8時!」
ミツキ自身も寝過ごしていた。
◇
「ミツキくん、あたし着替えるから」 部屋から出てってくれる?
パジャマを着替える。
「オーケー」 好きに着替えるといい。
「部屋から出てくれる?」
「なんで?」 オレが邪魔なの?
「着替えるって言ったでしょ?」 バカなの?
アリスは追い出されまいと踏ん張るミツキを、難なく力ずくで部屋から追い出した。
◇❖◇
着替えを済ませたアリスは部屋を出て、2階に向かう。
アリスの部屋の前で膝を抱えて座っていたミツキも立ち上がり、アリスの後に付いて歩く。
「2階に何があるの?」
いくぶん情けなく惨めなミツキの声。 さっきアリスに追い出された敗北感を引きずっている。
「武具」
◇
武具部屋には結構な量の武具が保管されていた。
「これ全部アリスが使うの?」
「まあね。 TPOに合わせて」 どうしたのかなミツキくん。 さっきから妙に惨めな声。
答えながらアリスは、体の各所に防具を装着してゆく。 肘、膝、脛、上腕、胴... 鈍い灰色に輝く防具の素材は戦闘重金属アダマンティウム。 とても重いが、硬度はミスリル以上だ。
◇
防具を装着するアリスを眺めるうちに、ミツキは思い至った。 あ、革手袋がない。 クルチアのナップサックに入ったままだ。
「オレにも武器を借してくれる?」
「そっか、ミツキくん装備がないよね。 どんな武器がいい? 防具は?」 ミツキくん、ジャージを着てるだけだね。
「なんでもいいよ。 防具は要らない」
「さっすがミツキくん」 防具が要らないとは。 武器を選ばないとは。
ミツキは武器を選ばない。 どの武器を借りようと、柄尻で殴るだけだ。
◇
ミツキは鋼鉄のショートソードを借りた。 "なんでもいい" と言いはしたが、ミツキが扱えるのは軽い武器に限られる。
ミツキと対照的にアリスは重装備。 ブレストプレートも手足や頭を守る防具もアダマンティウム製。 防具一式の総重量は80kg弱。 両手に持つのは手斧とバックラー。 この2つもアダマンティウム製だ。
「アダマンティウムが好きなの?」
ミツキの問いにアリスは答える。
「私の戦い方に合ってるの。 値段も手頃だし」




