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クイックリングちゃんドロップキック!  作者: 好きな言葉はタナボタ
第七章

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第85話 オマエのせいだぞイナギリ!

クルチアは食堂で氷をもらい、プロ・ハンターに殴られたトオマスの患部にあてがった。


「大丈夫ですかトオマス先輩?」


「なに、大したことはない」


それきりトオマスは黙ってしまう。 頭の中は悔しさで一杯。


(くそっ、またしても)


『バスターズ』の2回戦に続き、またしても手も足も出ず敗北。 一流ハンターとの圧倒的な差を感じさせられる出来事が続き、トオマスは絶望の淵へと追いやられた。


「こんなことじゃ...」


トオマスの口からこぼれ落ちたつぶやきを、クルチアがコマメに拾い上げる。


「こんなことじゃ?」


「いや、なんでもない」


「でも、何か悩み事があるんじゃありません? 私で良ければ相談に乗りますけど」


クルチアの親切な言葉に後押しされて、トオマスは抱え込んでいた苦悩を告白する。


「...こんなに弱いんじゃ、君が『金の盾』に入るとき僕は置いてきぼりだと思ってね」


「え? 先輩、名門事業所に入るつもりはないって言ってましたよね?」 コンテストは力試しだって。


「でも君は『金の盾』に入るんだろう?」


「サホウさんが勝ち残ればの話です。 それに先輩が私と同じ事業所に入る必要は―」


クルチアの不見識な発言に、トオマスは激しい反応を示した。 氷をあてがっていたクルチアの手を握り、激しい口調で訴える。


「必要がない? それが君の考えかマイ・レディー。 はっきり言おう。 あなたは間違っている! 騎士は主君と同じ組織に所属するべきなんだ。 少なくとも、僕はそう教えられてきた」


「それは国とかの話じゃありません? 事業所が違うくらいで思いつめなくても―」


(事業所が違うくらいで!?)


トオマスはクルチアとの認識の隔たりに気が遠くなる思いである。


(イナギリさんは僕と事業所が違っても平気なのか? 僕はイナギリさんにとって、その程度の存在なのか? 彼女が僕を自分の事業所に誘ってくれなかったのも...)


気が遠くなる思いが高じて、トオマスの意識は本当に遠のいた。


            ◇


「トオマス先輩?」 どうしたんです?


クルチアの目前で、トオマスは頭痛に耐えるかのように目を(つむ)ったまま。


「ねえ、ちょっと...」


クルチアが声を掛けてもトオマスは反応を示さず、そのままグラりとクルチアに向かって倒れ込んできた。


「キャッ、先輩!」


突然の事態に困惑し オロオロ するクルチア。 そこにクギナが飛んできて、クルチアを押しのける。


「どけっイナギリ!」


クギナはトオマスの体を抱きかかえ、トオマスの胸に耳を当てたり呼吸を確認したり。


「くそっ、息をしてねえ」


「えっ、それって...」 死んだってこと!?


「オマエのせいだぞイナギリ! ちくしょうトオマス。 オマエって奴は、そこまでイナギリを...」


「嘘でしょオウリンさん、先輩が息をしてないなんて」


「嘘じゃねえ。 ナイトリングには主君の愛が必要。 愛されてないと感じると弱るんだ」


クギナはトオマスを手懐ける一助にせんと、ナイトリングの生態を書物で学んでいた。 主君の愛情不足でナイトリングが死ぬほどに弱るケースは稀。 トオマスがクルチアに抱く思慕の念が並外れて強すぎたのだ。


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