第67話 コンテスト
クルチアとミツキは、予約していた宿でトオマスおよびクギナとの合流を果たした。 何時間もかけた甲斐あって、トオマスと武具のトリモチは綺麗に取り除かれている。
「本戦出場おめでとう、ミツキくん」
クルチアの中で罪悪感が再び首をもたげる。 トオマスとクギナは、泊りがけでダレノガレ市まで来たのに大会に参加できなかった。
「2人とも、せっかくの大会を棒に振らせてしまい、本当に済みませんでした」
「もう気に病まないで欲しい、マイ・レディー」
「明日のコンテストに出るからよ」
クルチアは、きょとんとした顔。
「コンテストって?」
「ハンター事業所の採用試験さ。 知らないのかよイナギリ。 会場のあちこちにポスターが貼ってあっただろ?」
「そうだっけ?」
トオマスがクルチアに説明する。
「大会の休養日を利用して、有力事業所が対戦形式の試験を行うんだ。 予選に使われた会場を借りてね」
「本気で合格を狙うぜ」
「僕はあくまでも力試しだ。 合格しても入所しない」
トオマスの言葉にクギナは不満を示す。
「なんで?」
トオマスはクギナに答えず、物言いたげな目でクルチアを見つめる。 火曜日の夜遅くに届いたダレノガレ武術大会のトーナメント表改訂版を見て、彼は主君が事業所を所有していたと知った。 ミツキの所属先が "いなぎりハンター事業所" だったから。 トオマスは驚き、喜び、かつ嘆いた。 イナギリさんが事業所を!? さすがはマイ・レディー、女子高生にして事業所を所有とは。 しかしながらマイ・レディー、どうしてあなたは自分の事業所に僕を誘ってくれないのか?
以来、トオマスはクルチアからのお声掛かりを待ち続けている。 自分から事業所に入れてくれとは頼みにくい。 クルチアの口から事業所の存在を明かされてすらいないから。 トオマスは信じている。 自分がクルチアにとって必要な人間なら、必ずクルチアが自分を事業所に誘うと。 トオマスは今、クルチアを試している。
◇
クルチアはトオマスの物言いたげな視線の意味を理解せず、曖昧な笑みを返す。
「コンテストは誰でも出れるの? 私も出ようかな」 武具を持ってきてないけど。
「オメーは自分の事業所があるだろ。 ランキング最下位の」
"ランキング" とは、ハンター事業所の実績ランキング。 ハンター協会が作成し、誰でも閲覧できる。 事業所の人気ランキングのようなものだ。 クルチアの事業所は依頼達成件数がゼロなので最下位。
「別にいーじゃない、他の事業所の試験を受けたって」 どおして私の事業所のランキングを知ってるの? わざわざチェックしたの?
反論はトオマスから来た。
「イナギリさん、君は本当にそれでいいのか?」
存外に真剣な口調に、クルチアは驚いた。
「え? 何かいけなかったですか?」
「自分の事業所を育てようと思わないのか?」 なぜ自分の事業所を僕と共に守り立てようとしない?
「えー。 だって、お客さんが...」 来ないんだもん。
「そうか... いや、すまん。 君がいいなら、それでいいんだ」
トオマスの忠誠度が1下がった。




