表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クイックリングちゃんドロップキック!  作者: 好きな言葉はタナボタ
第五章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

66/107

第66話 オーマイ・ピュアハート②

ミツキと並んで腰掛けるオーマイに、クルチアは鋭く問い質す。


「あなたは誰っ?」


オーマイはリラックスした表情を心がける。


「初めましてイナギリさん」ニッコリ「私の名はオーマイ・ピュアハート」


クルチアはオーマイの自己紹介を途中で遮る。


「ピュアハート? あなた帝国人?」


"ピュアハート" はいかにも帝国風の名前。


「ええ、カスガノミチさんに帝国への移住を提案してましたの。 ね、ミツキちゃん?」


オーマイに話を振られ、ミツキがクルチアに訴える。


「ねえクルチア、一緒に帝国に移住しようよ」


「は? あんたなに言ってんの? 帝国なんて...」


"敵国みたいなもんじゃない" と言いかけてクルチアは口をつぐんだ。 オーマイの存在に配慮した。


「オレを貴族にしてくれるんだって」


「ダ~メ。 移住なんて問題外」


こうしてクルチアとミツキの間で主張の対立が始まった。


            ◇


対立は激しく、長時間に及んだ。 2人の意見の隔たりは、移住に際して置き去りにするモノの量に起因する。 ミツキはクルチア以外に何もない、誰もいない。 しかしクルチアはたくさん置き去りにする。 両親もいれば学校もあるし友人もいる。 おいそれと移住できない。


オーマイは2人の議論を見守るのみ。 クルチアの頭脳が明晰なのは早々と明らかになった。 帝国人であるオーマイの下手な口出しは逆効果になりかねない。 頑張ってミツキちゃん! 息を詰めて舌戦を見守るオーマイの前で、とうとうミツキはプライドを犠牲にする禁じ手に訴える!


            ◇


「あんたってさあ、そういう薄情なとこあるよね!」


クルチアがミツキに向けた辛辣な言葉はターゲットに当たらず、夜の闇に消え去る。 突然ミツキがクルチアの目の前から姿を消したのだ。


(あれっ? ミツキは? どこ?)


ミツキの姿を求めて周囲の暗がりを見回すクルチアの胴体に、背後の暗がりからニュッと突き出た小さな2本の腕が巻き付く。 次いで、クルチアの背中に小さな胸とオデコが押し当てられる感触。 加速したミツキが瞬時にクルチアの背後に回り、背中から抱きついた。


「ミツキ? ちょっと、あんた何を...」


当惑するクルチアに、ミツキはとっておきの甘え声を出す。


「ねえクルチアぁ~。 お願いだよ~。 一緒に移住しよ?」


それは魔性の囁き。 絶妙にビブラートする甘く切ないソプラノボイスだった。


かつて聞いたことがない甘美な可愛い声音に、クルチアは戦慄する。


(こっ、これはっ... まさかミツキのおねだり!?)


クシナダさんから聞き及んでいたミツキのおねだりを、クルチアはゼロ距離で背後から食らってしまった。


(いけない直撃された! 一気に持っていかれる!?)


気を許すと頬が ニヘッ となる。 保護欲を キュンキュン 刺激される。 今すぐミツキを抱きしめて頬ずりしたい。


(ダメっ、移住しちゃう! ミツキと一緒に移住しちゃうーっ!)


            ◇


オーマイはミツキの勝利を確信する。


(これで決まりね、ンフフ。 あんなコトされて、耐えられる人はいないもの)


(それにしても、ハァハァ、なんて羨ましい。 私もアレされたい。 直撃されたい。 ハァハァ、ハァハァ。 背後からミツキちゃんの小さな体にキュッと抱きつかれて、"オーマイさぁ~ん" ってネダられたい)


            ◇


しかしクルチアは耐えた。 ミツキのおねだりをしのぎ切った。


(クーッ、なんのこれしき!)ドスコーイ。(私はっ、絶対ッ、ミツキに屈しないっ!)


10年以上に及ぶミツキとの交友で、クルチアはミツキの可愛さに対する耐性を自然と獲得していた。


「フゥフゥ、ハァハァ。 ミっ、ミツキ」


「なにー?」


ミツキは、無邪気な声と表情を貫く。


「どっ、どうしても移住したいなら、あ、あんた1人で... 移住しなさい!」


「どうしてもダメ?」


可愛く尋ねるミツキ。 だが最早(もはや)クルチアには通用しない。


「ダメ」


「チッ」


ミツキは移住を諦めた。


           ◇◆◇


「ほら、行くわよミツキ」


2人はダレノガレ競技場を後にした。 ミツキにおねだりされる妄想に身悶えするオーマイを、その場に残して。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
icon.php?uid=2904229&ref=&href=&wid=0&hei=0&col=0
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ