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クイックリングちゃんドロップキック!  作者: 好きな言葉はタナボタ
第五章

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第63話 トワコの頼み事①

本日の試合は全て終了したので、ミスリルの籠手を運営委員に返却。 同行したがるアリスを振り切って、3人は室内競技場を出た。


外はすっかり夜。 晴れ渡った夜空に、金色の満月。


ミツキが歓声を上げる。


「綺麗な月だ!」


クルチアは腕時計を見た。 時刻は20時過ぎ。


「そういえばトオマス先輩とオウリンさんは...」 どうしてるのかな?


予選の間、トオマスとクギナはついぞ姿を見せなかった。 トリモチの除去に手間取っているのか、どこかで試合を観戦していたのか。


           ◇◆◇


3人は人気(ひとけ)の無い場所に手頃な芝生を見つけた。


芝生に腰を下ろしてすぐ、トワコが本題に入る。


「とある事情で、とある場所を取り戻したい。 ところが役所に訴えてもタライ回しでな。 ラチがあかん。 ついては特別な手段で国に働きかけたい。 その口添えを、ミツキと言ったな? そなたに頼みたいのだ」


「とある事情とは?」


クルチアが尋ねた。


「う~む」


トワコは逡巡する。 この2人が〈気〉を習得していないのは明白。 資格の無い者に〈気〉の秘密を明かすべきではないが... トワコはギラリと光る眼でクルチアとミツキを見据えた。


「これから話すことは他言無用で頼むぞ? 信頼できる者にのみ口伝で伝えられる事柄ゆえ」


他言無用? 聞いちゃうとヤバい話? そう思いつつも、クルチアの口は半ば勝手に返事をする。


「はい」


            ◇


トワコは語り始める。


「この世には、滝と呼ばれる場所がある」


「タキ?」 何なのそれ?


クルチアもミツキも "滝" なる言葉を聞いたことがない。


「崖の上から水が落ちて来るのが滝だ」


「崖の上から水??」


学級委員長の優れた頭脳をもってしても、崖の上から水が落ちる情景のイメージは容易ではなかった。


「サンズイに "竜" と書いて "滝" と読む。 それでだな、私の一族は先祖代々とある山中の隠れ滝を利用していた」


「利用って?」 崖の上から落ちて来る水を? お鍋に溜めて、お料理とかに?


「うむ。〈気〉の修行に使う」


「"キ" って、あの〈気〉ですか?」


トワコは頷いた。


「金縛りの技を操ったり素手で刃を弾いたりする、あの〈気〉のことだ」


そうしてトワコは、ミツキとクルチアに事情を話し始めた。


            ◇


トワコの話をしばらく聞いたところで、クルチアはトワコの話にストップをかける。


「待って、モモシオチャさん」


「どうした?」


「ごめんなさい。 ちょっと整理させて。 情報量が多すぎて」


クルチアは頭の中でトワコの話を整理する。 えーと...


1. 〈気〉は3つに大別される。〈雑気〉と〈純気〉と〈真気〉。 世に〈気〉の技として伝えられる多くは〈真気〉の技。 〈真気〉こそが真正の〈気〉。


2.〈真気〉の習得には、滝での修行が必須。


3. 滝はエクレア小国にしか存在しない。 タメリク帝国とかには存在しない。


4. 〈気〉の使い手を生む滝は国防にも関わる。 だから、滝の存在は一般には明かされない。


5. 滝行は滝管理局が行うが、実際の運用は民間に任されている。 その "民間" とは〈気〉の開祖の―


            ◇


「整理は済んだか?」


「まだです」


きっぱり答えるクルチアに構わず、トワコは話を続ける。


「ところが、だ。 その弟子の血筋は長年をかけて、〈真気〉習得の技法に無意味な魔法陣やら呪文やらを加えた。〈真気〉の習得を神秘的な儀式に仕立て上げ、高額の費用をふんだくっているのだ。 そこで私は、デガラシの奴に宣言した。 "我が一族に代々伝わる隠れ滝を公開する。 無意味な儀式を排除し必要な滝行だけを適正な料金で提供する" と。 すると翌週、滝管理局の役人がやって来て、隠れ滝を我が一族から奪いよった。 デガラシの差し金に違いない」


「滝を奪うって...?」 どういうこと?


「ウチの滝を滝管理局の管理下に置き、立ち入りを制限した。 有資格者にしか利用できんと抜かしおった」


「モモシオチャさんは〈真気〉を使えるんですよね? 資格は無いんですか?」


「"トワコ" と呼べ」 "モモシオチャ" は言いにくかろう?「私は資格を持たぬ。 我が一族は俗世の〈気〉の組織に関わらんからな」


「もしかして...」


クルチアは思い切って憶測を口にする。


「トワコさんは〈気〉の開祖の子孫ですか?」


トワコは軽く目を見張った。


「さようだ。 そなた、クルチアと言ったか。 なかなか明敏だな」


クルチアは褒められて嬉しい。


「いやあ。 それほどでも」 エヘヘ


「それでだな―」


まだ話が続くの? クルチアは疲れを覚え始めた。

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