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クイックリングちゃんドロップキック!  作者: 好きな言葉はタナボタ
第五章

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第61話 アリス vs. 899番

第4グループの試合が始まる。 ミツキとアリスとクルチアが試合場に移動したので、サホウはサクラと2人で試合を観戦。


「第4グループは悩ましいですね。 見たい試合が3つもある」


「ミツキの試合は観るだけ無駄じゃ。 何が起こったかサッパリわからん」


「ハハ、じゃあタカラズカさんと777番の試合に集中できるわけだ」


「777番?」


「5回戦で初めて見ましたが、ただ者じゃありません。 無手でアッという間に試合を決めていました。 ほら、あの女性です」


サホウは1番試合場で試合開始を待つ女性を指さす。


「無手か。 ミツキと同じだな。 もう接触したか?」


「担当の者に指示してあります。 でも彼女はハンターでしょうか? 無手で戦うなど聞いたことがない」


サクラはトーナメント表を懐から取り出した。


「777番、777番... モモシオチャ・トワコ。 無所属か。 何者じゃろうな?」


           ◇◆◇


「始めっ!」


4つの試合場で審判が同時に試合開始を宣言し、一斉に試合が始まった。


第4試合場では、ミツキが試合開始と同時に相手をKO。 主審がミツキの勝利を宣言する。


「勝者、1022番!」


その声は第3試合場のアリスにも届く。


(さすがミツキくん。 例によって試合開始と同時に勝利)


アリスは心が狭く自分より強い者の存在を認められない人間だが、ミツキの強さには抵抗なく敬服できた。 ミツキの戦闘では何が起きているか分からないので、嫉妬が沸き起こらない。 ミツキはアリスの嫉妬を凌駕する稀有な存在だ。


(ほかのクイ混じりとも違う。 残像すら見えない。 最強の事業所を(うた)うには、どう考えてもミツキくんの獲得が絶対条件!)


考え事をしながらも、アリスの視線は対戦相手である899番に用心深く注がれている。


899番は手を出しあぐねていた。 彼はアリスの過去の試合を分析した成果を心の中で復唱する。


(タカラズカは体重&筋力アップの名人。 タカラズカ攻略の肝は、小柄な女の子と侮らないこと。 タカラズカは体重を乗せた攻撃に動じない。 タカラズカの攻撃は途轍(とてつ)もなく重い。 オーガと対戦するつもりで望むこと!)


            ◇


899番の復唱の終わりに生じた微妙な隙。 それはアリスには大きな隙だった。 アリスは機敏なステップで間合いを詰め、攻撃を仕掛ける。 彼女の武器はショートソード。 軽量ゆえ振り回しやすいがリーチで劣るため、大会での使用例は稀。


アリスのショートソードは高速で899番の顔へ向かう。 寸止めする気はない。 899番の体に当たって傷を負わせればアリスの反則負けだが、これは相手に武器で受けさせる攻撃。 武器で受けさせ体勢を崩すための攻撃だ。 アリスは899番の技量を見抜き、この攻撃を武器で受けると判断している。 899番がわざと攻撃を食らって反則勝ちを狙う可能性も低い。 本戦の決勝ならいざ知らず、これは予選の決勝に過ぎない。


アリスの目論見どおり、899番はアリスの攻撃に反応する。


(クッ 速いっ!)


盾は間に合わない。 899番は咄嗟に、手にする長剣でアリスのショートソードを薙ぎ払う。 いや、薙ぎ払おうとした。


(うおっ、重っ)


アリスの小さな体と武器に不釣り合いな重量と衝撃が899番の長剣を襲い、899番は剣を手落とした。 剣を失った899番の首筋にアリスが剣先を突きつけて、ハイ おしまい。


            ◇


審判8名のうち2名がアリスの寸止め成立を声高に報告する。


「「寸止め発生、954番!」」


それを受けて主審がアリスの勝利を宣言。 アリスは自らの勝利を祝し、可憐な顔に小さな笑顔を浮かべる。 エヘ、余裕の勝利ね。


899番は苦渋の表情。


(くそっ、タカラズカの攻撃が重いのは分かっていたのにっ! 敗因はタカラズカの素早さ。 あまりの素早さに後手に回ってしまった。 あそこまで見事に体重を操作できるものなのか。 タカラズカ・アリスは、まさしく...)


899番は、その言葉を頭の中ですら言語化するのを避けた。 言語化することで自分がアリスの領域に到達できないと認めることになりそうだから。

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