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クイックリングちゃんドロップキック!  作者: 好きな言葉はタナボタ
第四章

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第40話 復ッ活ッ!!

遅ればせながらクルチアは状況を理解した。


(この人たち、軍人だ!)


軍の企みは咆哮と投網だけではなかった。 クルチアたちの動向を把握し、バスにエージェントを忍ばせていた。 男たちが同じバスに乗ることに固執したのも、与えられた任務に必要だったからだ。


「じゃ、そういうことで」「悪く思うなよ、姉ちゃん」


男たちは咆哮でグッタリするミツキの体を二人で抱え、笑みを浮かべる指揮官のもとへ向かう。


「待って! ミツキを返して!」


クルチアは猛然とダッシュし、一方の男の腰にタックル。 しかし男はバランスを崩すが倒れない。 女の子にしては大柄なクルチアだが、鍛え上げられた軍人には太刀打ちできない。


タックルされた男は、いっそ親切な口調でクルチアを諭す。


「諦めな。 取り返せるわけないだろ」


男の言う通りだ。 周囲には20人の屈強な兵士。 トオマスは投網の中。 ミツキは腰を抜かしたまま。 クギナは諦め顔で傍観。 もはや運命は定まった。 クルチアはミツキを守りきれなかったのだ。


            ◇


ウォーーーッ! ダメ押しのようにオーガの咆哮がミツキに叩き付けられる。 軍用車に運び込まれたミツキは、軍の施設に到着するまで絶え間なくオーガの咆哮を浴びせ続けられるのだろう。


クルチアの両目に大粒の涙が盛り上がる。


「いやっ! ミツキを返して!」


手錠係に取りすがるクルチアに投網係たちが群がり、無理やり引き離す。


「手を離しなさい。公務執行妨害だよ」「この子で我が国は強くなるんだ」「尊い犠牲だよ」


「いやっ、いやっ! ミツキ、ミツキーっ!」


            ◇


クルチアの涙混じりの叫び声が大気を切り裂くと同時に、手錠係の男2人がグラりと倒れた。


「ミツキっ!」


さっきと同じクルチアのセリフ。 だが、込められた感情は歓喜。 正気に戻ったミツキが手錠係をKOしたのだ。 私の痛切な叫びが届いたの? それとも耳栓の効果? 両手をつながれた状態でどうやってKOを...? 色々と不明だが、今はどうでも良かった。 クルチアは兵士たちに肩と腕を掴まれたまま、夢中で歓喜の雄叫びを上げる。


「復ッ活ッ!! カスガノミチ・ミツキ復活ッッ!」


兵士たちは未だ状況を把握できない。 ミツキに関する知識は豊富だがミツキの実際を知らない。 クルチアが連呼する "復活" の意味すら理解していない。


「なんだ?」「どうした?」「なぜ倒れた?」


そんな中にあって、さすがは指揮官。 いち早く状況を把握した彼は、オーガたちに指示を下す。


「急げ、咆哮だ」


指揮官の切羽詰まる声に、2体のオーガが矢継ぎ早に咆哮を繰り出す。 ウォーーーッ! ウォーーーッ!


オーガの咆哮にクルチアはハラハラ。


(気を失わないでねミツキ。 どうか耳栓、ミツキを守って!)


クルチアの心配は杞憂だった。 ミツキの復活に気付いた兵士たちがワラワラとミツキに群がるが、ことごとくが気を失って地面に倒れる。 ミツキの周りにKOされた兵士の山が築かれる。


咆哮をものともせず動き続けるミツキに、指揮官は焦りを隠せない。 なぜだ? なぜ咆哮が効かない!


しかし冷静さは残っている。


「引けっ! やつに襲いかかるな!」


戦っては勝ち目がないからこそ、咆哮や投網に頼ったのだ。


「落ち着くのだ。 奴は手錠に繋がれている。 逃げられはせん。 投網を使え。 手錠班ごとで構わん。 ぐるぐる巻きにして持ち帰るッ」


ここが作戦の成否の分岐点。 優秀な指揮官は、そのことを良く分かっていた。


           ◇◆◇


()KO(ケーオー)の兵士らはミツキから離れ、投網を用意する。 今度も5枚。 試用を重ねた結果、トリモチ投網は5枚ずつ用いるのが最適だと判明している。


投網を用意する兵たちを見て、クギナの目がギラリと光る。


(チャンス!)


ミツキに恩を売るチャンスだ。 一時はミツキを諦めたが、再びミツキを救えそうな流れになってきた。 しかもクギナが死活的な役割を果たす展開で。


(幸い私はノーマーク。 誰も私が動くと思っているまい)


クギナはここまで咆哮に苦しんだり傍観したりしただけなので、兵士も指揮官も誰一人としてクギナに注意を払っていない。 ミツキに何故か咆哮が効かないとあり、オーガも鳴りを潜めている。


クギナは誰にも見向きされない片隅で一人、爛々(らんらん)と瞳を輝かせる。


(ミツキは私が助ける。 アイツが恩に着やすい形でな)


           ◇◆◇


「投擲せよ!」


指揮官の号令で、5枚の投網が一斉に投げられる。 バサッ、バサッ。 ミツキと手錠係2人の上に降り注がんとする5枚。 そのとき、片隅から猛然とクギナが飛び出した。


「オウリン・クギナ見参!」


ミツキにアピールしつつ、クギナは両手剣を振り回し、投網5枚をからめとる。


「ぬおっー!」


クギナの両腕で筋肉が盛り上がる。 トリモチ投網5枚ぶんは大変な重量。 しかしクギナはクォーター・オークの我が儘(ワガママ)な筋力に物を言わせ、すべてをモリモリと両手剣に絡め取った。


クギナのプランはこれで終わりではない。 投網が巻き付く剣をすぐさま横合いに放り出し、成人男性2名と手錠でつながれるミツキの傍らにしゃがみ込んだ。 手錠の一方をむんずと掴み、用意していた口上を早口でミツキに突き付ける。


「今からオマエの手錠を千切ってやる。 これで貸し2つだ」


投網5枚からミツキを救ったのが1つ目の貸しとしてカウントされている。


「そして、いいか? 10個貸しが溜まったら、オマエは私の配下になるんだ」


ミツキはクギナの言葉を聞いていない。 クルチアお手製の耳栓をしているし、おまけに軽く加速中。 彼は現在、手錠から強引に手を引き抜こうと四苦八苦。 むろん引き抜けるわけはなく、手首は痛々しく擦り剥けている。


クギナの耳に指揮官の声が聞こえる。


「あの女を排除しろ! 予備の投網を持って来い!」


兵士たちがクギナに駆け寄る。 もう時間がない。 クギナはミツキと約束したことにした。


「いいな約束だぞ?」


クギナはクォーター・オークの怪力を発揮し、手錠の鎖をメキメキと引き千切った。


残る一本の鎖を引き千切ると、ミツキの姿はもうそこに無い。 周囲で兵士の声が聞こえる。 うわー。 ぎゃー。 うおっ。


立ち上がったクギナが辺りを見回したとき、立っている軍人は一人もいなかった。

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