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クイックリングちゃんドロップキック!  作者: 好きな言葉はタナボタ
第三章

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第24話 クギナとトオマス③

見れば、正座するトオマスが耳をつまむクギナの手首を掴み、立ち上がろうとしている。 トオマスは相当な握力でクギナの手首を掴んでいるらしく、クギナは痛みに顔をしかめる。


「ツッ、トオマス、お前...」


トオマスは立ち上がり、自分の耳からクギナの手を引き離した。 立ち上がったトオマスは、クルチアより背が高いクギナよりさらに背が高い。 その高みから彼はクギナに言い放つ。


「オウリン、もう僕は君の言いなりにならない」


「なにィ? オマエは私に忠誠を誓ってるんだぞ!」


「撤回する。 僕は君に1片の忠誠心も感じていない。 君のような、君のような人間になどっ!」


これまでの屈辱を思い出し、トオマスは怒りに体を震わせた。


「でもオマエの今の力は...」


クギナはトオマスに掴まれていた手首をさする。 トオマスがクギナの手首を掴んだ力は、やはり相当なものだったのだ。


「たしかに僕は忠誠により力を得た。 それによって君への恐怖心を克服した。 だがその忠誠は、君に対する忠誠じゃない」


トオマスはクルチアをチラリと見て、クギナに視線を戻す。


「イナギリさんに対する忠誠だ!」


「なにぃっ!?」


クギナは咆哮する。


「どうしてイナギリなんだっ!!」


クギナの疑問にトオマスは喜々として答える。


「彼女には前々から目をつけていた。 だが決め手は、やはり今回の一件。 君を恐れながらも僕のために動いてくれた利他的な精神に僕は敬服する。 僕の主君として理想のレディーだ。 それに比べてオウリン、君は目つきが悪く凶暴で他人に迷惑をかけてばかり。 君を主君にしたいとは全く思わない!」


クギナは身を乗り出すようにしてトオマスの言葉の一字一句を最後まで聴き終え、しかるのちに激発した。


「よかろう。 ならば勝負だトオマス! 私はオマエを力で従える!」


トオマスは冷静にお断りする。


「お断りだ」


トオマスの完璧な冷静さは、クギナに取り付く島を与えなかった。


だからクギナはクルチアに矛先を向けた。 血走った目でクルチアを睨みつつ、クギナは背中の鞘から両手剣を抜き出す。


「ならばオマエと勝負だイナギリ!」 オマエをぶっ殺し、トオマスを取り戻す!


クルチアは前例に(なら)う。


「お、お断りよっ」


でも少しビビっていたので、取り付く島を見いだされた。


「オッ、ビビってんのかイナギリ? ビビってないなら私と勝負しろ!」


クギナは問答の余地を与えず、クルチアに切りかかる。


「死ねいっ!」


クギナはオーク・クォーターの膂力を()って鋼鉄の両手剣を軽々と操り、クルチアの肩口を目がけて剣を振るう。 むろん当たれば即死。 クギナはクルチアを殺すつもりだった。 殺した後のことは心配していない。 モンスター退治中に人が死ぬのは良くあること。 裏社会を牛耳る伯父の力を借りれば、無罪放免も朝飯前。


(わたし死ぬのっ?)


クルチアの剣は未だ鞘の中。 よもやクラスメイトに斬りかかられるとは思っていなかった。 凄まじい迫力と速度で迫るクギナの豪剣に身をすくませながら、クルチアはしかし、ミツキに期待する気持ちを捨てていない。


(ミツキなら、ミツキのことだからきっと... 拗ねてどこかに隠れてて、事の成り行きを見守っているはず。 私のピンチを見てきっと駆けつけてくれるはず)


クギナが振るう刀身がいよいよクルチアに迫り、クルチアは固く目を閉じた。 ギュッ


(ミツキお願いっ!)


            ◇


ガシャーン!


クルチアの目前で激音が鳴り響いた。 金属と金属が激突する音。 ミツキがおよそ出しそうにない音。 目を開いたクルチアに見えたのは、トオマスのたくましい腕と盾の裏側。 トオマスがクルチアの前に盾を差し出し、クギナの強烈な斬撃からクルチアをかばったのだ。


トオマスはクギナとクルチアの間に体を割り込ませた。


「オウリン、イナギリさんに手を出すなら僕が相手だ」


クギナは嫉妬と怒りに顔を赤黒く染め、喉も枯れよと絶叫する。


「望むところだ!」


両手剣を得物とするクギナに対し、トオマスの装備は長剣とラウンド・シールド。 片やオーク・クォーター、片や忠誠心でパワーアップしたナイトリング。 クルチアには手の届かない武力を有する2人が睨み合う中、クルチアはトオマスの背後でホッと安堵の溜息をつく。


(ホッ 危ない所だった。 頑張って、キングズブリッジ先輩♡)


だが安堵したのも束の間、誰かの叫び声が聞こえてきた。


「ラットリングが押し寄せて来るぞ!」

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