表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小さな男の子が年上の幼なじみ(♀)に面倒を見てもらう話  作者: 好きな言葉はタナボタ
第九章
106/107

第106話 掃除係

その日の夕方、クルチアはクシナダさん件でアリスの自宅兼事務所にテレホンをかけた。


ルルルルッルルルルッ。 ガチャッ


受話器の向こうからアリスの声が聞こえてくる。


「もしもし」


「あ、イナギリ・クルチアです」


アリスは落胆を隠さない。


「なんだイナギリか」 依頼じゃなくてガッカリ。


アリスの失礼な態度をクルチアは礼儀正しくスルー。


「お久しぶりです。 みんな元気にしてるかしら?」


「元気だよ。 で、どしたの?」 何か用?


「あのね、私のお友達のクシナダさんて子がね、アリスちゃんの事業所で働きたいって―」


「イナギリのトモダチぃ? 強いの? その人」


「いやハンターじゃなくて、掃除係を希望してるの」


「掃除係ぃー?」 別に要らないけど。


アリスが掃除係の応募を歓迎しない様子なので、クルチアは急いで付け加える。


「その子、時給600モンヌでも良いって」


「掃除係は別に要らないんだよね」


借金がある現在、人件費を増やしたくない。


「ちょっとミツキに替わってもらえるかしら?」


ミツキに働きかけてクシナダさんをねじ込むつもり。


アリスはクルチアの意図を察知した。


「ミツキくんに頼もうっての?」 ミツキくん経由で私にプレッシャーをかけるつもり?


「いや、そういうわけじゃ... とにかくちょっとミツキに替わってくれる? 久しぶりに声を聞きたいの」


「ホントかなぁ」


言いつつもアリスは傍らに控えるミツキに受話器を渡した。 彼はアリスの通話相手がクルチアだと判明してから、受話器の近くに来てクルチアの声に耳を傾けていた。


            ◇


「ミツキ、久しぶり」


10日ぶりぐらいだ。


「うん」


ミツキの返答は極めて簡素。 まだ少し()ねている。 クルチアが掃除係のポジションを蹴りミツキを見捨てたから。


「元気にしてる?」


「うん」


「半年したら私も、そっちに行くから。 それまで辛抱してね」


「うん」


「あとね、クシナダさんがそっちに行きたいって言ってるんだけど」


「うん」 聞いてた。


「時給600モンヌでいいから掃除係として働きたいって」


「うん」 知ってる。


「でもね、アリスちゃんが掃除係は要らないって。 あんたから頼んでくれない?」


「わかった」


            ◇


テレホンの向こうでミツキとアリスの会話が ゴニョゴニョ と聞こえ、テレホン口に戻ってきたのはアリスだった。


「ウソついたわねイナギリ。 ミツキくんに頼まないって言ったくせに!」


でもアリスは心底腹を立てた様子でもない。 半ば予期していた結果だ。


「ごめんねアリスちゃん。 仕方なかったの」


            ◇


アリスはしばらくゴネたが、話し合いのすえ妥協した。


「時給400モンヌなら、あんたのトモダチを雇ってあげる」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
icon.php?uid=2904229&ref=&href=&wid=0&hei=0&col=0
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ