・・・7話
あ、あ、あ。
「あのバカァ………!」
こんなことになるなら連れてこなければ……。
今頃はドラゴンの餌かな。
いやアイツ小さいし、案外上手く隠れられてるという可能性も。
どちらにせよ助けなきゃな……。
でもドラゴンがいるしなぁ。
もう見捨てちゃっても……。
うん。これはもうしょうがないってことで!
「………ぐう。俺の良心が咎める」
よし! 助けてろうじゃあないの!
ったく。世話の焼ける奴だぜ。
それにアイツいなくなったら寂しくなるしな!
だが、どうやって?
馬鹿正直に来た道を戻っても、そこにはドラゴンがいる。
それなら魔法で穴を空けながら離れた位置に行くか?
………俺の魔力、持つかな?
でも仮に持たなかったとしてもラピスがすぐ死ぬわけじゃない。
きっと今頃必死に身を隠しているだろ。
それなら俺が到着するまで頑張ってもらう。
もうこれしか思いつかない。
これで行くしかない!
隠れていろよ! ラピス!
「ほっと………よし。これなら静かだ」
このまましばらく下向きに掘り進もう。
良い感じに降りたら横に穴を空ける。
そこからは隠密だな。
大事なことだがツルハシは使うなよ、俺。
大事なことだからな。
…………む、もう魔力切れか。
歩くのが結構辛い。
このまま眠ってしまいたいが、それはよしておこう。
「ふう…………」
ああ、この体勢がちょうどいい。
あれだな、筋肉痛の時に楽な姿勢を探すみたいな。
心なしか魔力が回復してる気がする。
初めて異世界に来た時から魔力の量は上がってる。
この調子でいけばもっと広く地形を操れるようになるだろうな。
ま、もっと楽な方法があるなら教えて欲しいが。
どのくらい時間経ったかな?
体感だと一時間?
もうだいぶ魔力も回復しただろう。
それじゃあ再開と行きますか。
それから俺はエッさホイさと穴を掘り、休みを繰り返した。
もう本当に疲れる。
途中何度もラピスを見捨てようと考えた。
だが俺は止まらなかった……。
「……遂に」
そして遂に、俺は目的の位置に辿り着いたのだった。
「横穴を開けてっと………ドラゴンは…………あ、寝床に戻ってる」
こんなに時間をかけて体力を使うのと、しばらく待って突入するの、どちらが良かったのかと少し思ったが考えないことにした。
「ラピスぅ……おいラピスぅ…………どこにいるんだ」
ここは結構広い。
探すのは骨が折れそうだ。
お互いに位置を知らせることは難しそうだ。
いやそんなことしたらドラゴンにもバレるんだけど。
でもどうにかして………。
「むむむ………ん、なんだ? 岩がモゾモゾしてる」
変な感じだな………。
ま、まさかドラゴンの魔法!?
気づかれたのか?
そんな様子はないが。
「……く、来るか!」
カウンターの構え!
適当だけど………。
「……………きた! はあっ!」
見事に決まったな。
俺の手刀。
さぞ痛かっただろう!
「ってあれ? お前ラピスかよ!」
敵だと思っていたら救助対象でした。
「ああ、すまんすまん。大丈夫か?」
目立った傷はないな。
ちょっと欠けてるくらいで……。
まあ誤差だろ誤差。
それにこれで生きて帰れるしな。
そんじゃささっと帰りますか。
「ほら行くぞ。今度は振り落とされるなよ」
このポケットは不安だが、まあ大丈夫だろう。
俺が注意していれば。
来た道を振り返って帰宅!
………っと、お?
なんかここの壁、見覚えが…………。
ああそうだ、前に見つけた鉱石の壁だ。
これ魔法で動かせなかったんだよな。
あれ? でも削れてる。
俺の魔法が効いたのか?
「………よっ」
どうかな…………おお!
なんだ、操れるじゃん!
もしかして度重なる魔法の行使で俺のレベルが上がったのか?
ならラッキー!
ありがたくこれを持ちかえらせてもらう。
うう、うううう。
やっと、やっと……。
「帰ってきたぁ!」
我がマイホーム!
安心感が段違いだ!
全く心配かけさせやがってコイツは。
「反省して、次からはここで大人しく待ってろよ……って聞いてないし」
帰って早々石ころ遊びですかい。
全く気楽で良いものだな。
だがまあ俺も今から石ころ遊びするんだけどな!
持って帰ってきたこれを………。
でも確か鉄とかって精錬しなきゃいけないんだよな?
しかしここにかまどは無いぞ。
ううむ。
どうにか魔法で解決しないか?
「こう、魔力を送れば………あ、目がクラクラ」
なんだ、急に力が抜けて。
眠気が………………。
「うお! どうなった!」
寝てたのか?
顎に一撃くらったわけではなさそうだが。
「……あ、これ」
あの鉱石、ここだけ何か色が違う。
それに質感も。
カチカチで、これは…………おお! これは鉄だ!
まじかよ! 本当にどうにかなっちゃった!
魔法の力ってスゲェェ!
でも片端がちょっとだけ…………。
もしかして魔力切れで眠ったのか俺。
そんだけ精錬には魔力使うってことなのか。
「…………これ味はどんなものかな………」
ま、気になるよね。
そんなわけで一口だけ。
「はっ! 一体何が!? 俺の鉄はどこへ?」
さっきまで手に持ってたのに。
ま、まさかあまりの美味しさに、全部食ってしまったのか!
「……………やぁっちまったぜぇ、てへ!」