・・・6話
えぇと………ここを右に、そして次が左。
そうすると少し開けたところに出るから………。
あったあった! 下へと続く縦穴。
しばらく探索しても特段面白みが無かったから冒険しないとね。
危険かもだけど、正直今の俺は万能感というか何というか。
まぁ負けることはないだろ。
「ただ1つ懸念することは…………ついてきてる」
前に見つけた小さいゴーレムのラピスがついてくる。
危ないから拠点で待ってろと言うのに。
小さすぎて俺が踏み潰しちまいそうだ。
そうなった時俺はショックだぞ………。
「………まぁ、ついてくるのは良いにしても、近くをうろちょろされるのは危ないからここに入っとけ」
服に元からついてた胸ポケット。
ここなら邪魔にもならないだろ。
っさ。
そんなわけで冒険、冒険!
よいしょっ、よいしょっと……。
魔法で階段作りながら降りてるけど、正直もっと早く降りたい。
紐でもあったら良いんだけどな。
……ないだろうけど。
「おっ! 下が見えてきた!」
それなりに深かったな。
今地上から深度どのくらいなんだろ?
外に出たことないから分からんな。
というか、1回地上まで登って異世界の景色を見たいな。
なんで俺いつまでも地下に潜ってんだろ。
……まぁでも、地上には危険がいっぱいって事もあるだろ。
その時のために装備を整えないとな。
それにしてもここ、どうなってるんだ?
ずっと歩いてるけど壁が現れないな。
そういえば天井も高い。
ここは広めの空間なのか?
一度高台に登って全体を見てみるか。
うん、ここが良さそうだ。
「普通に登るのもめんどくさいから、魔法でズドンっと!」
ふひぃ!
ちと怖かったが、一瞬だったな。
さてさて景色は………おお!
「ひっろぉぉ………」
思っていたものの数10倍はある。
端は………かろうじて見えるくらい。
洞窟にもこんな場所があるんだなぁ……。
むむ!
あそこに何か……。
ってあれ何だ?
他のと違う岩……いやでも少し動いてる。
もしかして新素材!
レア鉱石だったりするのか!
「よぉし! 確かめよう!」
いくら広いと言っても凸凹してたり狭いところはあるな。
でもこの体なら問題はない!
するするっと抜けて……………到着!
「さてさて一体どんな鉱石がぁあああ!」
お、おい嘘だろ!?
こいつは鉱石なんかじゃない!
生きてる!
ドラゴンだ!!
「た、退避ぃ………!」
あっぶねぇぇぇ!
寝てるようだったから良かったけど、危うく食い殺されるところだった!
あんなの今の俺のレベルじゃかないっこないって!
お、恐ろしかった……。
間近で見ないと気づかないとか、とんだ保護色だぜ。
もしかしてそれで獲物を狩るのか?
俺がそうならなくて良かった。
………ふぅ、帰ろ。
「………………いや、でもな」
ドラゴンはどのゲームでも強敵だし、実際アイツも強いんだろう。
でも目の前に強敵がいるのに、尻尾を巻いて逃げ帰り、もうそこへは近づきませんでしたじゃ格好が悪い。
何よりドラゴンとの戦い………これ以上に面白そうなものも無い!
「………戦ってやる! ここで逃げたら男じゃねえ!」
……………だがそれはまた後で。
ここ、これは逃げるわけじゃない!
戦略的撤退……いや、これはドラゴンのため。
アイツ自身弱っちい奴が来ても鬱陶しいだけだろ!
だから強くなった俺がアイツに挑むことで、良い戦いをお届けしようという………。
う、うん。
正直気迫に圧倒されたよね。
常時威圧するスキルでも持ってんのかも。
でもカッコ良かったな。
翼は生えてないみたいだったけど、あれって所謂地龍ってやつか?
鱗とか硬そうだな。
まともな武器とか無いけど勝てるかな?
「うん? この壁………」
何か色が独特………レアの可能性もあるし取っとこ。
持ち運びできるように魔法で良い形に整えて………。
「あれ?」
おかしいな、魔法が……。
発動しない?
いやでも魔力を使ってる感覚はある。
てことは出来ないのか?
俺のレベルでは無理とかそういう話?
ふうむ…………しょうがないからツルハシで削るか。
「ふんっ!」
おおっと!
石のツルハシがあっさり壊れた。
これってこの石の方が硬いからか?
だとするともっと高いグレードの武器とか作れるな!
これは何としてでも………んん?
「何か視線を………んあ」
そうか!
大きい音を出したから気づかれたのか!
あのドラゴン起きて、こっち見てる……!
「…………」
「グゥオオオオオ!!」
「……逃げよ」
いやぁ本当にバカだったと思うよ。
そんなに離れてもないのにツルハシで石叩くとか。
本当に反省してる。
反省してるからお願い。
「神様助けてぇぇ!」
アイツ卑怯だろ!
こっちは壁を避けて走ってるっていうのに……。
アイツはお構いなしにぶっ壊しまくってる!
パワーバランスおかしすぎ!
あんなのに勝てるやつとかいんのかよ!
もう2度と戦うなんて考えねぇ。
俺はこれから慎ましく暮らしていく!
「うおおおおおおおおおおお!!」
あ、そうだ!
魔法で岩をぶつければ足止めくらいにはなるんじゃないか?
そうと決まれば…………いけっ!
あいつの顔面に石柱をぶつけて……!
「うんん、効いてないねぇ」
薄々そんな気は……いやそんな気しかしてませんでした!
俺のばか!
ただ疲れただけじゃないか!
くそおお!
「あ、見えた! 上に行く穴!」
あそこを登れば流石に追ってこないだろ!
うおおおお秘技! 石柱エレベーター!
「いっけぇぇ! とうっ!」
「ふぅふぅ………アイツは………追ってきてないか」
良かったぁ。
こんなところで死ぬところだったぁ。
………っへ! あまちゃんが!
ドラゴンと言っても所詮、図体のでかい薄鈍よ。
そんなんじゃぁこの俺には追いつけねぇぜ!
「馬鹿なドラゴンだったな、ラピス………あれラピス?」
おかしいな。
胸ポケットに入ってない。
「おいラピスどこだ? ラピ………まさか!?」
まさかアイツ、さっきのであそこに振り落とされて……。
「ラピスゥゥゥゥ!!!」