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ノオオオオム!  作者: 岩ゴロー
3/8

・・・3話

 謎のモンスターに追われてここに逃げ込んだ俺は、咄嗟に地形を操って通路を塞ぐことに成功したんだが。



「………感覚を覚えていたから再現はできる。けど………」



 しょぼい。

 この能力、あまりにもしょぼすぎる。

 試しに1個円柱を造ってみたは良いものの、俺の背丈ほどの高さまでしか出来ない。

 魔法が使えたのは嬉しいんだけどな。



「うんん………取り敢えず、なんか家具でも造ってみるか」



 ここに椅子、そしてここに机。

 と言っても簡易的なものだが。


 出来た出来た。

 まあ椅子と机に……見えなくもない。

 はあ、最初は魔法が使えて喜んだけど、今はガッカリ感が強めだな。



「…………ほいっと」



 何となぁく円柱をもう1回造ってみよ。

 期待しすぎない程度にね。



「……お、あれ? これ、もしかして………」



 心なしか、大きくなった?

 なんかさっきの倍くらい……。

 …………もしかして!



「この能力、使えば使うほど強くなるのか!」



 なんて単純な。

 これに気づかないとは不覚だった。

 ゲームではよくあることじゃないか!

 全く俺は………。



「あ、そうだ! それならずっと同じ作業を繰り返そう!」



 ゲームでもよくやった。

 序盤で雑魚モンスターを狩りまくってレベルを上げる。

 ようはそんな感じでこの能力を伸ばしていくんだ。

 そうすればいずれ………。



「ぐへへ………いやあ、楽しみだな!」




「ゼェ、ハァ、ゼェ、ハァ………ふう、こんなもんか」



 なんか異様に疲れた。

 運動はしてないのに。

 MPでも消費してんのか?

 そこらへん誰も教えてくれないからな。

 でもその成果もあって魔法は結構上達した。

 自分の体格の数倍は地形を操れるようになった。

 それにこうやってこうすれば。



「よし!」



 少し大変だけど、形をより精密に変えることができる。

 例えば………。



「剣の形! 槍の形! 使えないけどパソコン! それに花瓶も……花はないけど」



 この調子で続ければ本当にすごいことが出来るかも。

 ふっふっふ。

 もしかすると俺の力は結構強いのかも?


 さて、そんなわけで続きといきたいところだけど。



「ハァラが減ったぁぁ……」



 ここはゲームじゃない、現実の世界。

 だから腹は減るし疲れる。

 ずうっと同じ作業は続けられない。



「つっても食べ物か………」



 だめだ。

 思い当たる食料があいつらしかいない。

 あの俺を襲ってきた………。

 でも嫌だなぁ。

 あいつらの肉は不味そう。



「……………イヤイヤ! 何を言ってるんだ。これは命懸けのサバイバルなんだ! 狩るか、狩られるか。味がどうだのと言っていては三流よ!」



 もしも無人島に漂着したら、なんてことを考えていた。

 助けは来ずに、食料は獲らねばならない。

 拠点を造り、徐々に快適にしていく。

 そうしていずれその島の覇者に!

 そんなことを……。

 そして今がその時だ!



「よおし! やるぞぉ!」



 ここが俺の出発地点。

 この洞窟から俺の異世界ライフが始まる!



「さてと、それじゃあいつらを倒す武器でも作るか」



 そうだな。

 ここはやはり王道の剣で。

 対面は普通に怖いから盾も用意しておこう。



「おお! 結構いい感じじゃないか………! ま、両方とも石だけどね」



 にしてもこれ、意外と軽いな。

 石って重いよな?

 こんなに軽々と持てなかっただろ。

 やっぱ筋力とかも上がってるのか!



「いやあほんと、見た目以外は文句ないんだけどな。見た目以外は………」



 そ、そんじゃ出発しよう!

 まずは塞いでおいた入口を開けて。



「…………」



 よし、誰もいないな。

 あいつら素早いし、縦横無尽に動き回るからな。

 全方位警戒しないと。



 それで結局何もありませんでした。



「あれおかしいな?」



 何事もなく青色の水晶の所まで来たんだけど。

 てっきり執念深く俺を待ち構えているかと。

 俺、警戒しすぎてもう気疲れしてんだけど。



「出てくれないと俺が飢え死にしちまうぞぉ………おおい! 誰かいない?」



 返事は無しっと。

 ハァァ。

 もう誰でもいいから出てきてくれ。

 いい加減腹が限界なんだけど。

 さっきから腹が音鳴らしてて死にそうなんだけど。

 …………水晶のもっと奥まで行ってみるか。


 あの先輩ノームがいるなら、何食ってるのか聞けたんだけどな。

 というかこの世界、どんな食べ物があるんだ?

 前世とあまり変わらないのなら嬉しいんだけど。



「米食いてえよ米ぇ…………ん?」



 なんか音が聞こえるな。

 パタパタと、軽い感じの。

 何の音だ?



「…………んん?? この音、こっちに近づいて……ああ!」



 奥に何かいる。

 あれはもしかして。



「ゴブリン!?」



 前にあった奴らと違って何も着てない。

 股は何かの皮で隠してるんだけど……。

 いや隠してないのもいる!

 フル○ンじゃねえか!

 ん、ちょっと待てよ……。



「隠してないのアイツだけだ! アイツだけ変態だ! フ○チン・ゴブリンだ!」



 なんと破廉恥な。

 これは粛清せねばな!



「変態は、極刑だ!! うおおおお!」



 闇雲に突っ込んで行ってるが、まあゴブリンだし大丈夫か。

 これもチュートリアルだろ。

 ゴブリンなんて絶対雑魚だし。



「くらえ! スター○ースト、ス○リーム! ああ!?」



 剣が!

 洞窟が狭すぎて剣が天井に当たって!



「壊れた!」



 まずいまずいまずい!

 ゴブリンがすぐそこまで!

 何か新しい武器を。

 剣はだめだ。

 短剣は?

 いやリーチが短い武器はちょっと。

 あ、やべ。



「や、やられっ……! おお?」



 こ、これは!

 あっぶねえぇぇ!

 盾が防いでくれた!

 俺を覆うくらいデカくしといて良かったぁ。

 おっと、安心している場合じゃない。

 早く何か武器を。



「武器、武器………ああ! もうめんどくさい! みんな潰れろ!」



 疲れるからやりたくなかったけど、しょうがない!

 地形を操作してゴブリンどもを圧死させる。

 これなら余計なこと考えなくても必中だ!



「おりゃあ!」



 ……………おお、凄いな。

 まるでトマト。

 いや、肌が緑だったからスイカか。

 何にせよ俺の勝ちだ!



「地形を元に戻して…………ってうわ!!」



 まだ1匹ゴブリンがいた!

 しかもすぐそこまで!

 地形操作は間に合わない。

 だったら盾で防いでその隙に武器を。

 し、しかし何の……。

 圧死……そうだ!

 力が強いならこれで!



「ハンマーで……! あ!」



 こ、こいつ、フルチ○だ!

 ○ルチン・ゴブリンだ!



「っぐ……フルチン・ゴブリンよ、眠らせてやろう、永遠(トワ)にな………」



 俺のハンマーはそいつの脳天を見事にかち割った。

 そいつは呆気なく地に伏し死んで、俺は何となく手を合わせてやった。

 俺はそいつが飛び上がった時に見えたアレを思い出す。


 やっぱり、小さかったなぁ……。



「フルチン・ゴ○リンよ、安らかなれ………」



 まあ、こんなもんか。



「よっし。弔いも済んだことだし、早速ご飯タァイム! 燃えるものがないから焼けないけど、まあ生でもいいよね。いっただっきまぁす!」



 こ、これは!

 この味。

 噛んだ瞬間に溢れ出すこの!



「おrrrrrr……まずい! 不味すぎる!」



 というよりこれは味がどうこうというレベルを超えてる!

 何というか、こう、タイヤ食ってるみたいな。

 食べ物というにはおこがましいレベル!



「こ、これは食えん! 評価するにも値しない汚物だ!」



 くう、クソ。

 口の中が変な感じだ。

 食欲も失せた。

 あ、そうだ。

 これならもう食べ物はいらないだろ。



「ははは。良かった、良かっ………ぐは。力が入らない……」



 うう、どうすれば。

 この洞窟のどこに、食べ物が………。

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