・・・2話
この物語の主人公が転生した後。
転生前の世界では家族での受験合格祝いを終えて帰ってきた3人が絶句していた。
「………何これ」
救急車のサイレンが鳴り響く住宅街でその家は全壊していた。
他の被害は軽微なもので、まるで狙ってやったかのような有様。
そのすぐ後に3人は知ることとなる。
ただ1人の犠牲者を。
そして当の本人である主人公は知る由もない。
自分の死因が隕石の衝突であることを……。
◇◆◇
「嘘だろおおぉぉぉぉぉぉ!!」
こんなことがあっても良いのか?
こんなふざけた……いや良くない!
どう考えてもおかしい!
「何で俺がこんな姿に………こんなの、某ゲームのク○ボーだとバカにされても反論できないぞ!」
これって所謂あれか?
異世界転生というやつか?
いやまあそういう系の作品はいくつか知ってるから100歩譲って良いとして、何でこんなバカみたいな姿になってんだよ!
普通は人間とか、もっとマシな魔物とかだろ。
こんな……。
「こいつは何だ? 人、ではないよな……見た目からしてドワーフとか?」
あ、いや待てよ。
デ○ズニーのアニメでいたな。
確かフ○ニアスとフ○ーブにあったノーム人形とかいうやつ。
三角の帽子も着けてるし。
「いやだとしても何故!? 何で俺がノームなんだよ! せめてスケルトンとかにしてくれよ………」
最悪だ。
異世界転生したらどんな姿でも大丈夫。
そう思っていたけど、これはないだろ……。
「はあ……………………」
ま、まあどんな形であれ、転生したことには変わりない。
ほら、石の上にも三年と言うし、この姿もいずれ慣れるだろ。
プラスに考えよう。
そうしよう。
「でも出来るなら違う種族にしてほしいよ………」
そういえばノームって四大精霊のうちの地だったっけ?
だったら地属性の魔法とか使えるのかな?
「いやいや使えなかったら困る。それでないと俺はいよいよドングリだ」
よし!
やってみるか。
「と言っても、やり方を知らない」
普通なら呪文とか唱えるのか?
でもそんなものは知らない……。
念じれば使えないかな?
魔力を感じ取ってぇ、みたいな感じで。
まあ転生特典とかでそのくらい楽勝だろ。
「………ふっ! はっ! やあっ! うおりゃあっ!!」
………や、やり方が悪いんだ。
今のは声を出しただけで、ちゃんとしたやり方があるはずなんだ。
きっとそうだ。
そうに違いない。
そうであって欲しい!
「……も、もう一度………」
「グガァ!」
「おっ、何だ?」
びっくりしたな。
今のは人の声か?
にしては何か………。
「そおっと…………お?」
あれは………。
1人に寄ってたかって襲いかかってるのか?
あのボロいローブを着た奴らは。
もう1人は………ってあれ、俺の姿と瓜二つ。
あっちは髭が生えてるけど、俺と同じノームなのか?
襲われてるなら助けた方が良いのかな?
「「「ガァッ!!」」」
あ、あいつら一斉に襲いかかった。
早く助け………
「え?」
あ、あのノーム、ありえない速度で逃げていったんだけど。
まるでリスかウサギのようだ。
あんな小さい歩幅でどうやって……。
お、あいつらは追っていかないのか。
まあ流石にね。
いや、あいつら何かしてるぞ。
あれは………宝石だ。
あいつら落ちてる宝石を集めてる。
好きなのか?
というか、あの宝石ってもしかしてさっきのノームの……。
なるほどな。
奪うために襲っていたのか。
「にしても、自分のものだろうに。あいつらに奪われてよかったのか?」
まあ逃げるが勝ちという言葉もあるけど。
てなわけで俺もここから離れるか。
「ン?? ンガッ……クンクン………」
うん? あいつ何して………ま、まさか!
あの鼻を突き出す動作、匂いを嗅いでいる!?
誰のって、この場合近くにいる俺しかいないよな。
まずい、早く逃げ……
「あ」
ままままずい!
ミスって落ちてた石ころ蹴っちゃった!
「グガァッ!」
「「「ガァッ! ガァッ!」」」
うおおおバレたああ。
ここここうなったらさっきのノームみたいに俺も………。
だが待てよ。
異世界転生と言ったらチートがセット付いてくるもの。
とするとこれは所謂、チュートリアルというやつでは?
「ふっふっふ……ちょうどいい。てめえらを1匹残らず俺の糧としてやるぜ」
さっきは魔法とか出せなかったけど、俺はパワー系なんだろ。
殴ったら衝撃波の轟音と共にあいつらが吹っ飛ぶに違いない。
「かかってこ……………」
うんん、これは…………。
「やっぱ無理」
俺は逃げた走って逃げた。
それはもう、脱兎の如く。
いやだって思ったよりも怖っかたし。
ゲームの三人称視点ならともかく、自分視点で襲われそうになったら普通に怖いって。
「俺は先達のノームに学ぶぜ!」
しかしやはりと言ったところか、俺の足も相当に速い。
何なら前世の俺より速いんじゃないか?
これなら世界狙えるだろ。
「うお! あぶね」
今壁にぶつかりそうになった。
そうだ、ここは狭い洞窟の中。
充分周りには気を配らなければ。
まあ、ここまで逃げればあいつらも……。
「おい嘘だろ! まだ追ってきてるのかよ!」
執念深いな。
俺が宝石を持ってると思っているのか?
今来ている服が無くなったらスッポンッポン何だが。
そしたら俺の巨石がお目見えするんだが。
股間についたそれはもう巨大な………。
「おっと、別れ道………」
右か左か、右から左か………。
「こっちだ」
迷路とかで右沿いに行ったりするからな。
いや別に脱出するために走ってるんじゃないけど。
うん? 先が広くなってるな。
また別れ道があるのか?
「……え? おい、ここって………行き止まり」
え、そんなこと…………。
いやまだ間に合う。
一旦戻って左の道に進めば……。
「あ……」
あいつらがもうそこまで!
どうするどうする。
ここであいつらを迎え撃つか?
いやそんな力がどこにあるんだ!
あいつらの隙間を縫って戻ることも無理そうだ。
この行き止まりに何かあるわけでもない。
出来ることは、ないのか?
ここで終わり?
こんな簡単に。
俺にチート能力は? 俺の冒険は?
異世界生活0日目で殺されて終わり?
「そ、そんな…………くそっ! 何でこんなことに!」
これなら前世で食っちゃ寝の生活してた方がまだマシだった。
あ、あいつらがもうすぐそこに。
い、いやだぞ俺は。
最後が苦痛に悶えながらだなんて。
「く、くそ。俺はク○ボーなのかああ……! あイって」
な、何だ急に?
視界がグラグラして………顎が痛い。
◇◆◇
「はっ! 一体何が? 化け物はどこに? 俺は死んで………ここはどこだ?」
死んではないようだが、この場所はどこだ?
逃げ込んだ行き止まりに似ているが、あそこには入り口があったはず。
でもここは密閉されてる。
「………あん? この壁だけなんか……質感が」
ここだけ他よりも滑らかだな。
俺が何かやったのか?
そういえばここの壁の大きさ、あの入り口と同じくらい。
「てことはまさか、これ俺がやったのか!?」