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聖女様の秘密のお仕事2

「エーデルハイドさん、幸せそうだったね」


 馬車の背後についた窓からエーデルハイドの様子を見ていた黒髪の女性――レイリアは、嬉しそうに微笑んだ。


「恋人の執事の人もずっと付き添っていて、本当にお似合いの二人だよね」


「いつまでその関係が続くか、分かったものではありませんがね」


 革袋の中に入った報酬の貴金属を鑑定しながら、眼鏡の青年……クレイストは投げ捨てるように言い放った。


「我々の明るい未来のためにも、ぜひ破談にならず仲良く、墓の中まで私たちへ仕事を依頼した秘密を持っていってくれるよう、祈っていますよ」


「……またそういうひねくれた言い方をする」


 やれやれとため息をつくレイリアに、こちらもやれやれと肩をすくめるクレイスト。


「あなたこそ、よくもまあ毎回我が事のように喜べるものですね。所詮は他人の色恋ではないですか」


「だって、あんなに喜んでくれると婚約破棄のお手伝いをした甲斐があったってもんじゃない。幸せのお裾分けだよ」


「そんなものですか」


「幸せなんて、そんなものですよ」


 聖女別れさせ屋。


 それがレイリアとクレイストの生業だ。


 依頼主の婚約を穏便に破棄させる、というちょっと人には言えない仕事をしているため、一箇所に止まることはできず、こうして旅から旅の暮らしをもう十年間も続けている。


「世が世なら、私は魔王を倒す聖女なんだよねぇ」


「世が世では無くて良かったですね。あなたに出来るのは、婚約を破談にすることだけですし」


「……もしかしたら、それで世界が救えるかもしれないじゃん」


「少なくとも、銅像は建てて貰えそうもない聖女様ですねぇ。英雄譚も、未成年には禁書になりそうです」


「誰も傷つかないでハッピーエンドにできるなら、そんな聖女がいてもいいと思うんだけどな」


 椅子に座り直すと、レイリアは緩む頬を両手で挟んで満足そうに頷いた。


「お見送りなんて、随分義理がたいお姫様だったねぇ」


「レイリア、あなたは相変わらず馬鹿ですね。あんなのただの自己満足じゃないですか。接触が増えれば増えるほど、こちらの危険度は増すというものです。これだから、お貴族様は」


 レイリアはクレイストの言葉に顔をしかめた。


「そういうクレイストこそ、貴族の中の貴族だったんじゃない。王子様だったんだから」


「いつの話ですか。そんなこと、忘れましたね」


 そう。このクレイストこそが「聖女別れさせ屋」の発案者であり、レイリアの最初の依頼主であった。


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