成人の儀式
ジェイクはロロンに乗って広場まで飛んで行った。広場に着くと、成人の儀式のための篝火やお香などが置かれていた。
いよいよ成人の儀式が始まる。
里の長が広場の奥の小屋から出てきた。伝統の赤と青の糸で刺繍が施された白い絹の衣を身に纏い、右手に大きな宝石の着いた杖を持って、ゆっくりと歩いてきた。
長は広場の中央に立った。
ジェイクは長の前でひざまずいた。
「今より、ジェイクの成人の儀式を始める」
そう言って長は持っていた杖を上に振り上げた。その瞬間、周りに置いてあった篝火に火が付いた。
「そなたの人生が明るく素晴らしいものになりますように」
長は何やら呪文のようなものを唱えた後、白い粉をジェイクの周りに振りまいた。
「ジェイク、こちらへ来なさい」
「はい」
ジェイクは長の前に立った。
長は懐から何かを二つ取り出し、ジェイクに差し出した。
「この、成人の証をそなたに授ける。そしてお前の相棒のロロンにもな」
「ありがとうございます!」
ジェイクは成人の証を首にかけ、もう一つをロロンの首にかけてやった。
「これでお前もロロンと共に里の外に出られるな。おめでとう」
長はジェイクに訊いた。
「お前、外を出たら、どこに行くつもりなのだ?」
「俺は、ロロンと一緒にトルトの城下町へ行って、竜騎士になるための試験を受けるつもりです」
「そうか、頑張るんだぞ。お前は里で一番竜に乗るのが上手かったんだからな。里の者も、みんなお前を応援しているよ」
ジェイクの胸に、嬉しさと同時に里を離れる寂しさが込み上げてきた。今までずっと里の外に出たいとばかり思っていたのに、不思議なものだ。
「俺、頑張って、必ず竜騎士になって見せます」
「もう、明日には里を出るのか」
「はい、そのつもりです」
「そうか……。若者も、ずいぶん少なくなったのぉ」と、長はつぶやいた。
「では、失礼します」
ジェイクは長にお礼を言って、ロロンにまたがった。
「ロロン、家まで飛んでくれ」
「グオオーーン!!!」
ロロンはジェイクを乗せて、大空へ飛び立った。