表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/90

08 決意新たに

 関所を通過しタンナーブへ入ると、様々な露店が建ち並び人々が所狭しと行き交っていた。

 その光景を見て、俺は目をキラキラさせていた。


 俺が見たかったのはこれだよこれー!


 東通村では爺さん以外の人に会わなかったので、タンナーブの人の量に圧倒された。

 俺も皆に混じって、店に並ぶ様々な物を眺める。


「兄さん!ほらほら、買ってきなよ!」

「HPやMPの回復にはこれ!今ならおまけにもう一個つけるよ!」

「当店名物おいしいおいしい柿ピー、柿ピーはいかがっすかー?」


 あちらこちらから商売人の声が飛び交い、市場は賑わっていた。

 人々が使う俺の知らない言葉に、久しく味わっていなかった新鮮さが感じられる。


「お客さん、当店名物の柿ピーおひとついかがっすか?」


 商人に肩を叩かれ、皿に乗った何やら小さな食べ物のようなものを差し出してきた。

 人間界の食べ物に興味はあったが、別に腹は減ってないし、わざわざ爺さんから貰った貴重なお金を今すぐに使う気にもなれないので断ることにした。


「んー。いらん」

「お客さん、これお試しなのでお金は取りませんよ。食べて美味しいと思ったら買っていただければと」

「は?本当か?本当だな?食ってもお金払わなくていいんだな?俺がー、これをー、こうやって口に入れてもー、お金を取らないんだな?」

「……は、はい」


 人間界の商売の仕組みが分からないので、身ぶり手振りで必死に確認した。

 俺の豹変っぷりに、商人は驚いていた。


「んじゃ、いただきます!う、うめぇー!柿ピーうめぇー!」


 あまりの美味さについつい声を張り上げ、感動を噛み締めた。

 ガヤガヤしていたこの空間は、その声で一瞬静まりかえる。

 静けさの後、「俺もー!私もー!」なんて声が聞こえて柿ピーを売っているお店に多くの客が押し寄せた。


「ほう、これが商売か。なかなか人間もやるなー」


 俺が感心していると、先程の商人が人混みを掻き分け近付いてきた。


「ありがとな!あんたのおかげでうちは大繁盛さ!これ少ないけどお礼だ!じゃ!」


 袋いっぱいに詰まった柿ピーを俺に渡し、走って自分の店に戻っていった。

 袋に入った柿ピーを見て自然と口角が上がる。

 

「人間界の食べ物はこれほど美味いとはな、大発見だ。さっき聞こえたエイチピーやエムピーもさぞ美味いのだろう」


 柿ピーを取り出しボリボリ音を立てながら歩きだした。

 しばらくすると、鎧やローブを纏った人々が一ヶ所にわらわらと集まっているのが見えてきた。

 気になった俺はそこに近付くと、紙がびっしりと貼られた大きな掲示板があった。

 どうやらその者達はその掲示板をじっくり見ているようだ。


 掲示板を見ると、上に【求ム、魔王討伐者】とでかでかと書かれていた。

 その下には、魔法使いや剣士を募集する文言が所狭しと書かれている。


「魔王討伐?」


 ここで俺に一種の閃きが浮かぶ。


「これからはのんびり暮らすだと?まだ俺にはやることがあるだろ?」


 閃きは物語の始まりを告げた。

次回予告

 魔王討伐と聞いて閃いたハーデスは、近くの男性から【冒険者ギルド】の存在を教えてもらう。そこは冒険者が集まるところであった。ハーデスも冒険家登録をしようとするが、名前という最初の壁にぶち当たる。


次回 ~冒険者登録~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ