表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/90

07 城下町に入ろう

 俺は村で出会った爺さんに勧められ、城下町を目指していた。

 道中、確かに魔物が多かった気がする。

 知性がない魔物のため、俺を人間と勘違いして攻撃を仕掛けてくる。

 赤子が爪を立てるように別に何とも思わなかったので躱し続けた。

 何匹もの魔物に囲まれながら颯爽と歩く姿は、異様だったに違いない。


 さすがに魔物も疲れたのか、次第に俺から離れていった。


 歩き始めて二日、そうやく城が見えてきた。

 当初は魔物も多かったが、この付近には彷徨く魔物が全然いなかった。

 人々の生活区域であろう場所を囲んでいる壁の中心に、大きな城がどっしりと構えていた。


「久しぶりだなぁ」


 遠くから見る景色は、かつて俺が見た景色と代わり映えしなかった。

 この場所で魔王だった俺は、人間王と条約を交わしたのだ。

 近づくにつれ人間の匂いが強くなり、心踊るような感覚になっていく。

 人間を襲う魔物としてではなく、純粋に俺の新しい門出にわくわくしていた。


 更に歩き続けると城下町へ入るための大門が見えてきた。

 大門の両側には槍を持ち鎧を着た男がそれぞれ一人ずつ立っている。


 人間界のことは分からんが普通に入っていいのか?


 俺はそのまま直進して入ろうとしたが、両端から槍を交差させ歩みを止められた。


「おい、どこから来た者だ?」

「あー、あっちの方からです」


 一人の男が訪ねてきたので、俺は辿ってきた道を指差しながら返した。


「あっちの方?村や町の名称は?」

「いや、特にない」

「何だと?怪しいな。最近は魔王軍の動きが活発になったから怪しい者は通せない」

「えっ?でも村の若者はみんな城下町に向かったと言っていたぞ」

「村?お前はどこかの村から来たのか?さっきも聞いたがどこの村だ?」


 あー、なんか爺さんなんとか村って言ってたなー。なんだっけな。ひがし……


 思い出せない俺は断片的な記憶を頼りに言ってみる。


「ひがしぃ……村だ」

「ん?東の後は何と言ったんだ?声が小さくて聞こえんぞ」

「だーかーらー、ひがしぃ……村だって」

「東通村か?」

「だからさっきからそう言ってるだろ」


 上手く誤魔化せた。

 そういえば東通村だと爺さんは言ってたな。


「兜で少し聞き取りづらかったんだ。すまないな。では通るがよい」


 男二人は槍を下ろし、やっとのことで警戒が解かれた。

 入ろうとするとまたもや呼び止められた。


「おい。そういえば東通村にも魔物が攻めてきたのか?」

「いや、今のところ魔物は攻めてきてない。多分攻めてきても大丈夫だと思うけど」

「どういうことだ?」


 余計なことを言って墓穴を掘った。

 さすがに俺が強力な結界を張りましたーなんて言ったら面倒な事になるので、適当な事を言ってやり過ごすことにした。


「東通村は年寄りばっかでみんな家から出ないから、魔物も人間がいるとは思わないってこと」

「ん?お前もそうだが、まだ残っている者がいるのか。まぁ今のところ【タンナーブ】は安全だ。お前もまだ体が動くうちは自分の身を守るためにも何かの職につくことだな」


 ほう、ここはタンナーブと言うのだな。

 なぜか職につくことを助言されたが、別にお金が欲しいとは思わないし、今さら働きたくない。

 住む家はあったらいいなとは思うが、無きゃあ無いで地に穴を掘って住めばいいし。


 そんな風に考えていたが、彼が言っていた()は俺が思っていた()ではないと気付くのに時間はそうかからなかった。 

次回予告

 なんとかタンナーブに入れたハーデスであったが、初めての町知らない単語を耳にする。エイチピー?エムピー?柿ピー?うん、何それ?


次回 ~決意新たに~

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ