52 捜索
俺達は12歳の双子、アラヤトモハルとアラヤトモコの捜索を行う為の話し合いを行っている。
トモハルもトモコも孤児であり生まれて間もなく教会に保護され、今まで教会で育ってきた。
トモハルとトモコはいつも行動を共にしていた。
そこにもう一人同じく12歳の男の子がいたが、その男の子は養子に迎えられるという形で一ヶ月前に違う土地に移り住んだ。
それからは二人で行動をしていたが、どうやら最近冒険者に興味を持ち始めたようだ。
昨日の夜、就寝前の点呼時は教会内にいたことが確認されている。
しかし今日の朝の点呼時には姿が見えなく、二人の部屋に行ったがもぬけの殻だったそうだ。
隈無く教会内や近辺を探したが、発見できず、二人は行方不明と判断された。
ゆうなが皆に話した内容はこんな感じだった。
「んー、職業神殿とか冒険者ギルドにいるんじゃない?」
俺は当てずっぽうで適当な事を言った。
「普通に町中にいるかもしれないしな」
「後は、教会の裏手側にタンナーブの外へ通じる穴があるらしいので、その辺ですかね。とりあえず三班に分けましょう!真弓さんとチェリーさん、銀次さんとナックルさん、出野さんと剣児君は私と」
「「了解」」
「誰がどこを探すかですが……」
◇◇◇◇◇◇
俺とゆうなと剣児はタンナーブの端にある小さな教会に来ていた。
あの後、真弓班は町中を捜索、銀次班は職業神殿や冒険者ギルドで聞き込みを行った後に真弓班と合流して共に町中を捜索することになった。
俺達三人は教会で聞き込み後に、外に通じる穴を出て捜索するということになっていた。
ここ教会には、行方不明となった二人の他にも何人かの孤児がいて、ゆうなはその孤児達からも情報を聞きたいと言っていた。
「こんにちはー」
ゆうなは教会の外で遊んでいる子供に声をかけた。
走り回る子供達は、皆、冒険者ギルドに来ていた女と同じようなローブを着ていた。
「こんにちは!お姉さん達誰ー?」
「私はゆうな、冒険者だよ。後ろの二人は私の仲間なんだ。シスターはいるかな?」
走るのを止め興味津々といった表情をした女の子に、ゆうなは目線を合わせるようにしゃがんで尋ねた。
「シスターは今あっちにいるよ!」
女の子は教会敷地に併設された建物を指さした。
少し大きな民家のような作りをしていて、外には洗濯したであろう小さな衣服がびっしりと干されていて、保護している子供達とここで生活を共にしているのだろうと分かった。
ゆうなは礼を言い、俺達三人は早速そこへ向かう。
入口には金属製のベルが設置されていたので、それを鳴らすと扉越しにそれに反応する声が聞こえ、そのままその声の主が出てくるのを待った。
「……はいはい、あっ!依頼を受けていただいた冒険者の方ですね。どうぞ、中に入ってください」
声の主はギルドにいた修道服を着た女だった。
ゆうなはシスターと呼んでいたな。
尋ねることは伝えていなかったので、シスターは一瞬驚いた表情をしたが快く迎え入れてくれた。
「ありがとうございます」
子供達はほとんどが外で遊んでいるので中は静かであった。
食卓だろうか、大きなテーブルがある部屋に招かれ、紅茶と呼ばれる良い香りの飲み物を出された。
「今も教会側の何人かはトモハルとトモコを探しているのですが、進展はないようです。本来ならば私も探したいのですが、他の子達の世話があるのでここを離れられないのが実情です。本当に心配だわ」
シスターの声色からは気を落としているのが感じられた。
俺は初めて目にする紅茶に口をつけると、あまりの美味しさに思わず叫びたくなったが、シリアスな雰囲気が漂っていた為、その言葉と紅茶をごくりと飲み込んだ。
「依頼を受けたからには全力で探します。私達がここに来たのも、ここの子供達の話も聞いておきたいなと思いまして。そのことで少し確認がありまして……。トモハル君とトモコちゃんの話題に触れても大丈夫ですかね?」
シスターは窓から外をちらっと子供達の姿を確認すると会話を続ける。
「そうでしたか、構いませんよ。みんなも早く見つかってほしいと言ってましたし。あっ、もしよろしければ、トモハルとトモコの部屋も見ていきますか?何かしら役立つ情報が出てくるかもしれませんし」
「いいんですか?ではご案内お願いします」
シスターとゆうなが立ち上がると、俺と剣児は紅茶をぐいっと飲み干し二人についていった。
階段を登った先の壁にはここの子達が書いた絵だろうか、様々な絵が飾ってあった。
その中の一つに目が止まった。
男二人に女一人が魔物と対峙している絵だが、妙に上手くて立ち止まって魅入ってしまった。
ほう、ここの子達も魔王を倒そうとしている勇気のある奴がいるんだなー。
俺がそんな事を考え見ているとシスターが声をかけてくる。
「その絵は行方不明になったトモコが書いた絵なんですよ。前はもう一人、トモハルとトモコといつも一緒にいた子がいたんですけどねぇ。あの子達の部屋はもうすぐそこです」
俺達は促されるように手を向けた方へ歩いていった。
何個か同じ色のドアが並んでいて、パッと見は全て同じように見えるが、プレートがぶら下がっていてそこにそれぞれの名前が書いてある。
「ここですね。どうぞ見ていってください。でもあの子達ももう大人になる歳なので、あまり部屋の中は弄らないようお願いいたします。私は下で子供達のご飯を作って参りますので」
そう言い残し、シスターは会釈をし歩き出したので俺達も軽く礼をしてドアをまじまじと見た。
新谷侶春、新谷侶子?
俺はドアにかかったプレートを見て知っている情報と文字が一致せず一瞬頭がこんがらがったが、すぐに理解した。
そしてドアを開けるとベッドが二つと机が二つあるだけで、視界から得る情報はこれといってなかった。
「あはは、何にも無さそうね」
剣児ががさごそ机の引き出しを開ける中、ゆうながぼそりと呟いた。
本当に何もない。
しかし俺だけは捜索の為の特別な情報を得ていた。
それは侶春と侶子の匂いだ。
俺は魔物であるが故に、嗅覚に優れている。
人間界に来てからは、周りは人間だらけだから人の匂いなど気にはせず行動しているが、意識的に鼻を利かせ記憶に残すことにより大体の居場所は分かる。
俺は鼻から大きく息を吸い、行方不明となっている侶春と侶子の匂いを記憶に留めた。
俺は部屋の窓から外を見て、左に顔を向ける。
ほう、この方向は……。
大体の検討がついた。
次回予告
二人の足取りを掴めたハーデス。二人を探す為に歩を進めていくが、果たして二人は無事なのか!?
次回 ~発見~




