39 二回目の冒険へ
俺は出場者用の通路を通り、会場を後にした。
終わったあとはどんな結果にせよ、ゆうな達とは地下訓練所の受付付近で落ち合うことになっていた。
少し遅れて到着したがそれには理由がある。
俺が会場を出てそこに向かっていると突然見ず知らずの冒険者達に話しかけられたのだ。
「兄ちゃん、俺らのパーティに来ないか?」
「俺んとこが活躍できるぜ!だからうちに来いよ!」
「ぼく今仲間を探してるのですが模擬戦を見て出野ハーさんと是非冒険したいです」
今の模擬戦を見ていた何人かの冒険者からパーティへの勧誘を受けていたのだ。
俺はすでにパーティを組んでいるのでその全てを拒否したのだが、諦めきれないのかしつこいくらいに勧誘は続いた。
あー、スカウト受けるってこんな面倒なもんなんだなー。
ナックルもこんな気持ちだったのか。
俺達が仲間に誘ったときにあんなにも淡泊に応対していたのにも納得できるような気がした。
俺はナックルからしたら数は少ないが、その嵐のような勧誘を潜り抜けようやくゆうな達のところに到着したのであった。
「出野さんお疲れ様です!でもあの決着はどういうことですか?」
来て早々俺の予想通りの問いを投げかけられた。
何をどう説明すればいいのか分からないがとりあえずそれに答える。
「俺もよく分からないんだよなー。模擬戦の途中でナックルと話したんだけど、ナックルの旅をする目的の一部分を俺が持っていたというか何と言うか」
「それで模擬戦が突然終わったということですか?出野さんの勝ちとなっていましたが、結局ナックルさんは仲間になってくれるんですか?」
「おーい」
俺とゆうなが会話をしているとナックルが歩いてきた。
「あっ、ナックルさん!」
「お嬢ちゃん、いやもうお嬢ちゃんじゃないな。名前は何て言うんだ?」
「私は小笠原ゆうなです」
「ゆうなね。ゆうな、さっきはバカにして悪かったな。他の皆も横暴な態度をとって悪かった。単刀直入に言おう。俺を仲間にしてほしい」
「えっ!?いいんですか?」
「いいも何も俺からのお願いだ。君が決めてくれ。あんな態度をとってしまったから無理無理の無理だったらそれはそれでいい」
ゆうなは確認をするように俺の顔を見てきたので、俺はとりあえずコクリと頷いた。
同様に皆の顔を見るが、答えは同じであった。
パッと顔を明るくしてゆうなが真っ直ぐな目をしたナックルに応える。
「是非おねおねのお願いします!ありがとうございます!」
「お、おう。ありがとな!」
こうしてナックルが仲間となった。
そして俺達は何かを忘れているような気がしたが地下訓練所を後にした。
外に出ると地下では感じられなかった眩しいくらいの自然の光が差していた。
まだ昼過ぎだ。
「まだ時間あるし、これからちょっとみんなでレベル上げも兼ねてちょっとした冒険に出ませんか?」
レベル上げと聞いて真弓が思い出したかのように声をあげる。
「そういえばチェリーの存在を忘れてたわ!」
そう言うと真弓は一目散に地下訓練所の階段をかけ降りていった。
しばらくして真弓は一人で戻ってきた。
「チェリーはまだ終わってないみたいだから、受付の方に伝言を残してきたわ。家が近いから明日以降の事とかは私から直接伝えておくね。で、これからどこに行くんだっけ?」
「これからですが、歴代勇者がレベル上げをしたと言われる洞窟に行きましょう。最奥まで行こうとすると今日帰れなくなると思いますので入口付近の魔物を倒そうと思います」
歴代勇者がレベル上げをした洞窟か。
中々興味深いな。
「ちなみに
「ゆうなはん、あ、師匠申し訳ねぇでやんす。そこの魔物は結構強いでやんすよ。レベル25くらいないと太刀打ちできねぇと思うでやんす」
銀次が俺の言葉を遮るような形でゆうなに確認をした。
「確かに奥の方に行くにつれ強い魔物が出てきますが、入口付近はまだ私達のレベルでも十分対応できるような話を聞いたことがありますが……」
「まぁ行ってみようぜ。1、2、3……、こっちは俺も含めて六人もいる。しかも俺はそんじょそこらの魔物には負ける気がしねぇぜ?」
パーティに入ったばかりのナックルが少し気合いを入れながら、悩んでいる素振りを見せる二人の背中を押した。
「おらももっと強い魔物と戦ってみてーぞ!」
続けて剣児も純粋に危険よりも興味を優先させるようなことを言った。
「私はどちらでも結構ですよ。みんなとなら安心して戦えますし」
皆の意見を聞くとパーティ内各々の性格が垣間見える。
ゆうなと銀次は物事をよく考えて総合的に判断するような慎重な性格、剣児とナックルは物事をあまり考えないというか考えるより体が先に動くような命知らず、真弓は自分の考えよりも周りの考えに合わせるような協調性のある性格だ。
俺もどちらかというと剣児やナックルと同じような括りになるのかもしれないが、あの二人と一緒というのも何か嫌だな。
「出野さんはどうですかー?」
「んー、俺もどっちでもいいぞ。行ってもやばそうになったら退散すればいい話だし」
「では行きましょう!少し離れたところにありますが、タンナーブからは南に歩いて一時間ほどで着きますから今日中には戻ってこれそうです」
俺達は準備といっても特にするようなことがないのでこのまま向かうことにした。
◇◇◇◇◇◇
勇者がレベル上げをした洞窟、通称【南の洞窟】に辿り着いた。
俺達六人が横並びで入れるような大きな入り口の奧は、薄暗く陰湿な雰囲気が漂っている。
いかにも魔物がいますというような負のオーラが感じられ、元魔王である俺は居心地のいいような気分になったが、他の五人は不気味がっていた。
事前にゆうなから聞いた情報では、ここの入り口付近にはアンデット系の魔物【アーマーミイラ】や獣系の魔物【キマイラベビー】、奥の方になるとそれに加えアンデット系の魔物【ハードスケルトン】や同じくアンデット系の魔物【デュラハンブラザーズ】という強力な魔物が出るという。
俺達が行動する入り口付近はアーマーミイラやキマイラベビーしか出ないので、基本的にはこの二種の魔物を倒すということになる。
俺は魔王時代、人間の居住区域に足を踏み入れたのは指で数えるほどであった為、ふと疑問が浮かんだ。
それは居住区域の目と鼻の先に魔物の巣窟があるのに、何故魔物が居住区域の人間を襲わないのかということだ。
この洞窟にいる魔物は淘汰される為だけに存在するのか、甚だ疑問であった。
それとなくゆうなに聞くと、単純な答えが帰ってきた。
その答えとは、一部の冒険者がそこで命を落とすことによりその血肉を食べているのでわざわざタンナーブまで来ないということだった。
それに加え、強い冒険者が定期的にこの洞窟に入り、中の魔物を倒しているので出てくる心配はないという。
更に聞くと、冒険者ギルドでそのような依頼を各パーティに【クエスト】という形で募集をかけているとのことだ。
依頼を達成した冒険者は金を受け取るといった流れだという。
だから冒険者は働かなくとも、こういう形で金を稼げているようだ。
俺の最初の疑問は、今まで答えの出なかった様々な疑問を解決した。
何故冒険者ギルドにはいつもこんなに冒険者がいるのか、何故英雄さんパーティはタンナーブに常駐しないのか、これらは全てこのようなクエストが関係していた。
この日、俺は人間界の色々な事情を知ることができた。
次回予告
レベル上げの為南の洞窟に洞窟に向かったハーデス達。洞窟内で魔物との戦闘が始まるが、初めての魔物に少し苦戦を強いられる。
次回 ~南の洞窟~




