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32 真意

「銀次も仲間にしたらどうだべ?」


 剣児はこの場を自らの剣で叩き斬るかの如く、鋭利な発言をした。

 ゆうなと真弓は硬直し、そして俺も他人事ではないので唖然とした。

 一方銀次はというと、こちらもまた驚いていた。

 剣児は続ける。


「おらもそうだけど、かなり助けられたし、何かこれからも仲間として戦ってくれたら心強ぇなぁって思ったんだ」

「でも彼は剣児の剣を盗んだんだよ!?私も助けられて命を救われたのは事実だけど……。でもやっぱり仲間として迎え入れるのは何か違うかなって。信用できないっていうか。真弓さんどう思いますか?」


 断固として拒否をするゆうなは真弓にも意見を貰おうとしていた。


「私も盗人君はちょっとね。裏の組織に盗品を流してるって噂もあるし、何か信じきれないかな」


 俺は戦力的に仲間にしてもいいとは思うが、師弟関係とか面倒だし意見を合わせることにした。


「俺もその意見に同意だなー。裏の組織ってのも怪しいし」


 続けて銀次も口を開くが、それは俺達の思い込みを否定する一言も添えられていた。


「やっぱりあっしは師匠についていくのはやめようと思うでやんす。でもこれだけは言わせてくだせぇ。あっしは裏の組織なんてものには関与してねぇでやんす。盗みを働くのは本当に悪いことなのは重々承知してるでやんす。ただ、盗んだ物は換金し飯を買って、あっしが育った施設の貧しい子供達に分けてるでやんす」

「「えっ?」」


 ゆうなと真弓はその発言に反応した。


「あっしは小さい頃、親を亡くしてから身寄りのない子供達を預かっている施設に入ったでやんす。元々貧しい施設で、今は親方様が病気になって更に貧しくなって……。それで毎日のように腹を空かせてる子供達にあっしが飯を出してる状態でやんす」


 ほう、そんな境遇だったとはな。

 確かに俺はこいつを純粋な悪とは思わなかった。

 戦い方を見てもどこか芯が通っているというか、真っ直ぐというか、とにかく盗人としてのズルさというのは感じられなかった。

 しかし何故?


「ならば何故働かない?」

「あっしが弱かったんす。働いた先であっしが施設育ちだと分かると、そいつらはあっしらの施設の子供達を汚いクズだと罵り、あげくの果てにあっしが子供達にと思って買った飯を盗まれたでやんす。悔しくて堪らなかったあっしはそこを辞め、人から物を盗んで生活するようになったでやんす」


 そう語る銀次は、戦っている時とはまるで比べ物にならないほど頼りない姿であった。

 それと同時に、人間とは一部かもしれないが汚い種族だなとも感じていた。


 俺達魔物は、基本魔物同士で争わない。

 かつて縄張り争いもあったが、それは魔王自らの力の試し合いの要素が大きい。

 故に配下を戦わせることはほとんどなく、魔王同士でぶつかり合い、そして勝った魔王が縄張りを増やし他の魔物に自身の力を誇示するのだ。

 そして統合された軍の配下間では、他の種族をバカにしたり嫌がらせをしたりすることは決してない。

 自分は自分、他は他といった冷めた考えから来るものかもしれないが、それが俺達魔物だ。


「銀次さん、それ本当の話ですか?」


 ゆうなは未だに信じれないのか核心をついた。


「本当でやんす」


 うつむき何もない一点を見つめたまま銀次は答えた。


「もし……、もしだよ?これが本当の話だったら私は仲間にしてもいいかもって思いました」

「私もゆうなちゃんの言うとおり、嘘偽りのない話だったら……ね?でも私は後から入った身だし、最終的にはみんなの判断に任せる」

「銀次さん、今から確かめに行ってもいいですか?」

「いいでやんすよ!」



◇◇◇◇◇◇



 俺達は銀次の言う施設とやらに足を運んだ。


 結論から言うと全て本当の話だった。

 施設にいた子供達から銀次はかなり慕われており、前に言っていた白塗りの理由も納得できた。


 俺も子供達に持っていた柿ピーをあげると、皆ボリボリと美味そうに食べていた。

 剣児は子供達と無邪気に遊び、それはこの子達の心をガッチリ掴んだようで誰よりも人気であった。

 ゆうなと真弓はというと、一旦戻って大量の食料を調達してきた。


 そして銀次は晴れて俺達の仲間になった。



◇◇◇◇◇◇



 また明日仲間探しを続けるとの事で集合場所と時間を告げられ解散した俺は、明日の為にと思い寝床へ向かって歩いている。


「師匠!歩くの早いでやんすよ」

「お前が遅いんだよー」


 そう、俺の後ろには何故か銀次もいた。

 本人からはいつも施設へ泊まっていると聞いたが、今日もついてきた。

 聞くと、師匠である俺から色々と吸収したいらしく、生活を共にしたいとの思いでついてきているのだが正直面倒くさい。


「子供達と寝ろよー」

「師匠のそばから離れたくないでやんす」


 さっきからこんな感じの会話を何回もしているが、やはり決意が固いのか一向に帰る気配はない。

 まぁ俺は木の上、銀次はその下で寝るからお互い干渉することはない。

 面倒は面倒だが、俺を師匠として慕ってくれる思いには不思議と悪い気はしない。

 

「よし、着いたな。さーてと、寝るか」

「師匠!少し稽古をつけてくだせぇ!」

「は?こんな時間に?面倒だし嫌だ」

「そこをなんとかお願ぇしやす!あっし、今日の戦いでレベルアップしたんで、今なら師匠と互角に渡り合えるような気がするでやんす!」


 例え銀次がレベル99だとしても元魔王の俺とは互角には渡り合えないけどなー。

 あ、そうだ、いいことを思いついた。


「ほう、それは大した自信だ。まぁいいだろう。稽古をつけてやる代わりに、俺も試したいことがあるから付き合え」


 俺は木の枝を右手に持った。

 あー、そういえば銀次は両手に短剣を持って戦っていたな。

 俺は地面に転がっている小さな石ころを左手の指先に持つ。


「ありがとうございやす!」

「じゃあその腰の剣抜いて殺す気でかかってこい」

「真剣でやるんすか!?大丈夫っすか!?むしろレベルはいくつでやんすか!?」

「俺は大丈夫だ。あと、いちいち戦う相手の強さだとかレベルを気にするな。それはお前に余裕や恐怖を与える」

「勉強になりやす!では行くでやんすよ」


 銀次は腰から二本の短剣を抜き、俺に向かってくる。

 素早い動きから腰を低くし手足を狙ってくるが、俺はその攻撃を左手の石ころで防ぎ、右手に持った木の枝を剣の峰に当て軌道を変える。


 ほう、相手の動きを鈍らせる為にまずはそこを狙うか。

 なかなか頭脳派だな。


 軌道を変えられ左手の短剣が空を斬り、回転をした銀次はそのままの勢いでまたもや足を狙う。

 俺は飛び上がり回避をすると、銀次は回転を止めず地に手を付き俺に蹴りを放つ。


「ハッ!」


 真上に飛び上がっていたら、空中で身動きの取れない俺は攻撃を食らっていただろう。

 しかし俺はそれを予想し、後方へと飛んでいた。

 指先に持った石ころを握りしめ、空いた指先で素早く懐から柿ピーを取り出し、銀次の開いた口に投げ入れる。

 これは良い動きをした銀次へのご褒美だ。


「ボリボリ……。師匠、やっぱり強いでやんすね」


 そこから銀次も手数を増やし、どうにかして攻撃を当てようとしたが、俺は石ころと木の枝、自分の体を使い全て無効化した。

 銀次が良い動きをした時は漏れなくご褒美の柿ピーを口に投げ入れた。

 途中手元が狂い、銀次の鼻の穴に柿ピーが入ってしまったことがあったが、それ以外はパーフェクトであった。



「はぁ、はぁ、はぁ、師匠に攻撃が当たらねぇでやんす」

「とりあえず俺がお前の動きを評価した時に柿ピーを投げ入れた。そこの流れるような動きをもっと頻繁に出せると強くなれるぞ」

「師匠、あっし必死すぎて、もう柿ピーを投げ入れられたタイミングなんて覚えてねぇでやんす。鼻に入れられた時のことは覚えてるんすがねぇ」

「そうか。じゃあ鼻に入れられた時の動きだけ極めておけ」


 へたりこむ銀次を見つつ、俺は残り少なくなった柿ピーをボリボリ食べた。


「おい銀次、次は俺の番だ。とりあえずそのままでいいからその場から動くなよ」


 俺は木の枝を銀次に向ける。


「し、師匠!何するでやんすか!?」

「うるさい、だまれ」

「えっ!?」

「汚くて不気味なやつ出てこい!ホップスライムジャンプ!」


 シーン……。

 何も起こらなかった。


 俺のやりたいこととは、ジョヴァンとの戦いで使用したホップスライムジャンプが俺以外の者を乗せられるかを検証することだった。

 俺の仮説では、銀次に向けてホップスライムジャンプを繰り出すと銀次の足元の空間が裂け、あの汚い斑模様のスライムが出てくるというものだった。

 しかしそもそも俺がしょうかんを口にしても、何も起こらなかったのだ。

 どういうことだ?


「師匠!あっしが知ってる召喚は、攻撃対象の魔物がいねぇと唱えられないでやんす。どこでも出せる魔法と違って、ここで召喚獣を出すことは無理でやんす」

「なに!?」


 確かに今までは戦闘でしか使ってこなかったから気付かなかったその盲点。

 これじゃあ検証ができない。

 攻撃対象の魔物だと?

 そしたらぶっつけ本番で試すしかないじゃん。

 くそ、せっかく検証するために面倒くさいが銀次に稽古をつけてやったってのに、これじゃあ意味がないじゃないか。

 それもこれも全て魔王グレンヴァのせいだ!


「こぉぉぉのぉぉぉお!魔王グレンヴァぁぁぁあ!この一撃に怒れぇぇぇい!ゴブリィィィンパンチィ!」


 八つ当たり気味に、グレンヴァがいる魔王城の方角に向けしょうかんを繰り出すと、裂けた空間からゴブリンが出てきてトコトコと魔王城へ向け走っていった。

 可愛いゴブリンが出てきた瞬間、怒りの感情が一気に冷めた俺と、いきなり怒り狂った俺にちょっと引き気味の銀次は無言でその背中を見つめる。

 ゴブリンが見えなくなった頃、銀次が口を開く。


「どこまで行くんすかねぇ」

「知らん」


 俺達は明日に向け寝た。

次回予告

 新たに銀次を仲間に加えたハーデス一行。まだまだ仲間探しに意欲を見せるハーデス達は冒険者ギルドに向かう。しかし大きな戦いの後だったのでかなり混みあっていて仲間探しは困難な状況に。そんな中、真弓の知り合いを紹介するという流れになったがどんな人物なのか……。


次回 ~紹介~

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[一言] 伏線か?単なるギャグか?新魔王へのゴブリンパンチ。
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