27 弓使い 斉藤真弓
「おらの剣がねぇーっ!」
剣児は四つん這いになり無念の様を表現していた。
「えーっ!?お爺ちゃんから貰った大切な剣盗まれたのーっ!?でもどうして気付かなかったの?」
「いやー、分からねぇ。あれ?もしかしたら家に置いてきたかもしんねぇ。……いやいや、おら持ってきてた」
剣児は半分焦って半分間抜けな様子で語っていた。
「いや、多分、刷野銀次に盗まれたのよ。だって私見たもん、派手な着物の人と剣児君がぶつかったところ」
あー、あの時か。
確かに俺とゆうなは冒険者ギルド前で剣児の姿を確認していたときに、その光景を見ていた。
「俺も見ていた。おそらくその時に盗まれたんだろう」
「くそー」
剣児の大切な物を盗まれた俺達は、やはり銀次を探す必要があった。
「よし、じゃあ手分けして探しましょう。そういえばお姉さんの名前は?」
「私は【斉藤真弓】といいます。あなた達は?」
「私は小笠原ゆうな。剣を盗まれた男の子が古川剣児君。そしてもう一人が出野ハーさんです。私達はパーティを組んでいるんです」
「そうでしたか。皆さん仲が良さそうで良いですね」
真弓は少し寂しげな表情をしながらぼそりと呟いた。
その後俺達は自分の年齢や職業などを含め自己紹介した。
「そういえば真弓さんのパーティの方々は別行動で刷野銀次を探してるんですか?」
「いえ、皆さん協力してくれず、私一人で探してます」
仲間って何だ?
俺は真弓の話を聞いて、ふと疑問に思った。
俺の中の仲間とは、助け合う存在だと思っていたからこそである。
「そうでしたか。私達がいればこの分見つかる可能性が上がりますから大丈夫です。こちらも盗られた物がありますので全力で探させていただきます。必ず捕まえましょう!」
「心強いです。ありがとうございます」
ゆうなの心意気に真弓も応えた。
「では、二手に別れて探しましょう。私と剣児君は中央から西側を捜索します。真弓さんと出野さんは東側をお願いします。何かあったらここで落ち合いましょう」
「はい」
タンナーブの町は居住区を含めると結構広い。
足を使って探すには相当体力が必要となる。
俺は飛行魔法で上空から探した方が早いと思うが、この中でその魔法を使用可能な者は俺しかいなく、皆の手前使えないので俺は歯痒さを覚えていた。
いや待てよ。
剣児も真弓も冒険者ギルド前で盗まれたんだよな?
あんな派手な着物を着たやつでも目立たないようにするためには人混みに紛れるんじゃないか?
盗みも働きやすいし。
「ちょっと待ってくれー。俺に提案がある」
俺は三人に提案をし、皆それに賛成してくれた。
二手にというのは変わらず、俺と真弓は冒険者ギルドを中心に、ゆうなと剣児は市場を中心に捜索を開始した。
◇◇◇◇◇◇
俺と真弓は冒険者ギルドの横、少しだけ目立たない位置で行き交う人々を観察していた。
「真弓は何で冒険者になろうと思ったんだ?」
「新しい魔王が現れてから、大体の人が魔王討伐の為にって冒険者になったじゃないですか。なので、この町の住人として何となくって感じかな。出野君は?」
「んー、俺はやりたいことがあるからかな」
「やりたいこと?」
そう、俺はその新しい魔王に復讐すべく冒険者になった。
勇者という味方を連れ、俺は魔王城に乗り込むのだ。
俺の個人的な目的で弱い人間が殺されるのも何か嫌だ。
その為には少し強力な味方、そう、英雄さんのパーティに会い、仲間に入れてもらわなければならない。
「あぁ、それは俺にとっては重要で、人間が魔王を倒して平和を勝ち取るのと同じようなものだ。そういえば真弓は【弓使い】だったよな?レベルは?」
「私はレベル16よ。出野君は?」
へー、俺よりも高いじゃん。
「俺はレベル14だ。真弓はいっぱい冒険に出たのか?」
「いえ、冒険自体は一回しか出たことがありません」
「えっ?」
「えっ?」
じゃあ何でレベル16なのか意味が分からない。
俺達はなんか強そうなヴァーエイトという魔物を運良く倒したから一気に上がったけど、一回の冒険で16まで上げられるのか?
「いや、一回の冒険でそんなにレベル上がるんだなーって思って」
「そんなわけないじゃないですか。【地下訓練所】でレベルを上げたんですよ」
「地下訓練所?」
地下訓練所というまた俺の知らないものが出てきた。
「知らないんですか?魔物使いの方が運営しているんですけど、ここでレベル20くらいまでは上げることが可能です」
「へー、便利そうだな。どんなところか俺も行ってみたいな」
こんな会話をしつつも周囲に注意を払うが、刷野銀次らしき人物は見当たらなかった。
日が暮れるのも後少しのところでゆうな達と合流した。
向こうも収穫無しのようだった。
「今日のところは終わりにして、また明日探してみましょう」
ゆうなは今日の捜索を諦め、真弓も首を縦に振りそれに同意した。
「私達は明日も捜索を続けようと思いますが、真弓さんもご一緒にどうですか?」
「いいんですか?では私もまたご一緒しようかな」
真弓も行動を共にすることが決まり、ゆうなから明日の集合場所と時間が伝えられ俺達は解散した。
◇◇◇◇◇◇
俺はまだ暗くなるまで時間があるし、明日に回すというのがちょっと腑に落ちないので一人で探そうと思っていた。
飛行魔法で空を飛び空中から見つけようと思ったのだ。
一応、見られても困るから姿を隠すためにも隠蔽魔法も使おうと考えたがここで気になることがあった。
あれ?
というか、俺の冒険者の書に隠蔽魔法なんて書かれてなかったような。
俺は冒険者の書を取り出し開く。
――――――――――――
名前:出野 ハー(年齢?歳 性別 男)
レベル:14
職業:しょうかんし
職業レベル:4
HP:2,830,000/2,830,000
MP:102,300/102,300
物理攻撃力:5,020
物理防御力:5,210
魔法攻撃力:4,520
魔法防御力:5,350
素早さ :4,700
運 :90
使用可能魔法一覧
火属性:チャッカ(小) ~ ドゴウゴウ(極大)
水属性:チョロ(小) ~ ドバーン(極大)
氷属性:バリ(小) ~ バリジャッキン(極大)
雷属性:ピリ(小) ~ ドンバチン(極大)
土属性:ゴゴ(小) ~ ズゴーン(極大)
風属性:フワ(小) ~ ビューン(極大)
闇属性:ヌン(中) ~ ヌラリアン(極大)
即死:スット(小) ~ アトカスット(中)
毒:ジュク(小) ~ ジュクジュ(中)
麻痺:ギチ(小) ~ ガチギ(中)
飛行:プカン
使用可能特技一覧
一刀両断/我軸円斬/発風剣/無絶無斬/真無絶無斬/完全防御/結界術(消費MP量に準ずる)
使用可能しょうかん一覧
ゴブリンパンチ/ホップスライムジャンプ
――――――――――――
やっぱりだ。
配下を驚かす為によく使っていた空間魔法もない。
俺は意味が分からなかった。
出来るよな?
俺は空間魔法を使い転移をしようと試みた。
しかし、今まで何とはなしに使用していたが、何がどうなったのか空間魔法の魔力の練り方というか、とにかくやり方自体を忘れていた。
記憶はあるのに体がそれに上手く適応できないことに歯痒さを感じた。
んー、今まで出来たはずなんだけどなー。
まぁ考えてもしょうがないし、いずれ何とかなるか。
俺は飛行魔法を使っての空からの捜索はやめ、地上での捜索を行うことにした。
とはいっても、やはり俺の目星は冒険者ギルド前か市場だ。
そう考え行動に移すが、夜まで待ってもやはり現れなかった。
俺は明日また探そうと思い直し、いつもの寝床に向け歩き出した。
俺はやはり使えなくなった魔法の事が気になり、冒険者の書を見ながら歩いていると正面から誰かにぶつかった。
「すまん」
そう俺は謝り、さっとそいつの手を掴み上げた。
「おー、お前が刷野銀次か」
「痛いでやんすねぇ」
そう言うとそいつはくるりと回り俺の顎に蹴りを食らわそうとする。
俺はこのまま握っていたらこいつの手が折れそうだと思い、即座に離し攻撃を食らった。
銀次じゃなかったら可哀想だしな。
蹴りはもちろんノーダメージだ。
「あっしの事をご存知なんすねぇ」
「あぁ。やはりお前が銀次か。とりあえず今日剣士の男と弓使いの女から何か盗んだろ?」
「何をおっしゃってるんだか」
余裕ぶっている喋り方がいちいち腹立たしい。
俺が手を離さなかったら今頃大変なことになっていただろうが、それを知らずに己の力を過信している様子が腹立たしさに拍車をかける。
「いや、この袋の中に入ってるんだろ?」
「えっ?」
俺は手に持った巾着袋をぶらぶらとぶら下げ、目の前の銀次に問うた。
全身の感触を確かめると銀次は戸惑っていた。
「どうしてあっしの物をあんたが!?」
俺は蹴りを食らった時に銀次の腰元からこの巾着袋を盗っていた。
隙がありすぎて、どうぞ盗って下さいと言っているような動きだったからな。
俺はその巾着袋から剣児が持っていた剣や、真弓から聞いた特徴に酷似した巾着袋を出した。
他にも色々入っていたが、それは出さず銀次に巾着ごと投げ返した。
「とりあえずこっちが欲しかった物も返ってきたし、もう帰っていいぞ。あとその色々盗んだっぽい物もしっかり返しておけよー」
俺は銀次にそう伝え、寝床に向け歩き出した。
「師匠、お待ちになってくんなませ!」
面倒な予感がした。
次回予告
剣児と真弓の物を刷野銀次から取り返したハーデスであったが、その銀次から師匠と呼ばれ立ち止まった。嫌な予感がしたが話を聞くことに。次の日ゆうな達のところへ連れていくがどうなることやら。
次回 ~盗賊 刷野銀次~




