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じぇねれーしょんぎゃっぷ?

 うーちゃんに車いすを押されて家の外に出ると、そこには、金属のとても大きな箱のようなものがたくさんありました。


「うーちゃん、あれなんですか?」

「車です。遠くに行くときは、あれに乗って移動するのが多いですよ」

「馬車みたいなものでしょうか……馬もいないのに、どうやって動くのでしょう」

「エンジンというものが発明されたのですよ。ああ見えて、馬何百頭分もの力を出せるのです」


 その言葉に、ただただ驚くしかできません。


「ちなみに、最近の車にはまず確実に小型のエアコンもついています。だから、どんなに暑くても、どんなに寒くても、さほど苦労することなく遠くまで行けるのです。それも、馬よりもずっと短い時間で」

「本当に、技術は進んだのですねぇ……いいなぁ……乗ってみたいなぁ……」

「それは……今日は、無理ですね。速い分、危険なので運転をするには運転免許証が必要なのです。持っている運転手はいますが、私が頼んでも、家族の言いつけでできない、といわれてしまいますから。両親が私も姉同様扱うよう指示を出すまでは、我慢していただくしか」

「もうちょっと脅しましょうか?」

「いえ。これ以上は少しやりすぎかと。あまりやりすぎれば、何をするかわかりません。私が知らないだけで、リエさんを封じるような力の持ち主がいるかもしれませんから……」

「それもそうですね。じゃあ、今日はこのおうちの敷地内で、うーちゃんが好きなところに連れていってもらえますか?」


 眠りの魔法とかがあれば、私を眠らせ続けることはできるでしょう。

 こんなことなら、知り合いだった魔法使いにもうちょっと深く魔法を教えてもらえばよかったですね。初歩的なことしか知らない私は、眠りの魔法があるかすらわかりません。


「好きなところ、ですか……」


 ふと気づいてみれば、うーちゃんはなんだか浮かない顔をしています。

 ……ひどい扱いを受けていたのですから、好きな場所なんてないのかもしれません。私、やらかしてしまったでしょうか……。


「ちょっと陰気な場所ですが、それでもよろしければご案内いたします」

「ぜひ、お願いします。うーちゃんの好きな場所、私も知りたいですから」


 では、というとうーちゃんは大きな家の周りを歩きだしたようでした。

 しかし、本当に大きな家ですね。ただ座っているだけなのに、汗が噴き出してくるほど、長い時間押されています。もちろん、この暑さもあるでしょうが。

 暑い、と思わずこぼしそうになった時、木陰が見えてきました。

 これは助かります。暑すぎて、つらかったですからね。私を押しているうーちゃんはなおのことでしょう。いったん休憩しましょうか。


「うーちゃん、あの木陰で一休みしませんか?」

「そうですね。私も人が乗った車いすを押すのは初めてで……少しだけですが、疲れました」


 木陰に入り、二人そろって一息つきます。

 日陰でも、多少暑いですが、それでも直射日光を浴びるよりは楽ですね。


「うーちゃん、目的の場所まであとどれくらいですか? こんなに暑いのですから、つらいようなら引き返した方が……私のわがままで、うーちゃんに取り返しのつかないことが起きたら大変ですから」

「ご心配なく。もう目的地の近くですし、そこまで行けば、水も軽食もとれますから」

「ならいいのですが……無理だけはしないでくださいね?」

「忘れかけていた自尊心を、リエさんのおかげで思いだせましたから。それに、私に万が一があると、リエさんが悲しむでしょう?」


 少し照れ臭そうにそう言うと、うーちゃんはよそを向いてしまいました。

 ……手の甲と、髪へのキスは平気な顔でできるのに、こんなことで恥じらうなんて。うーちゃんのこと、私まだよく分かってませんね……。


「あ、そうだ。これから行く場所では使用人と会うのですが、口調、どうします?」


 ふいに向き直り、そう言ううーちゃん。うーん、そうですね……。


「うーちゃんが望むなら使用人の前でもあの人達と同じようにふるまいますよ?」

「大変ではないですか? 口調の使い分けとか……」

「それほどではありませんよ。それに……このように親友として語り合うのは二人きりの時だけ、というのも、なんだか秘密の関係のようでいいと思いませんか?」


 私がそう言うと、うーちゃんは顔を真っ赤にしました。


「……っそ、そうですね! 秘密の関係……秘密の……誰にも、知られてはいけない……秘めた愛……」

「その愛って、友愛ですよね?」


 少しだけ不安になりながら、しばしの休息をとるのでした。

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