生還、ですが……
無事、というにはほど遠い形ではありますが、みやちゃんを助けることに成功はしました。
はるなさんは私を誘うために裏道ばかり通っていたようで、学校からの距離自体はさほどはなれておらず、何とか学校までみやちゃんを連れ帰ることにも成功。
「……乙女をゴミ捨て場に潜り込ませるとは、卑劣。許さない……けれど、誰を憎めばよいのやら」
学校につくと、すぐにリーリエが来てくれて、今は後遺症がないか、とか、私の牙の傷跡の処置とかをしてくれています。
「けど、納得もした。思業式神……陰陽師が強い念と共に作り上げた、上位の式神のことだけれど。安倍はるながおそらくそれにあたった。だから、私にも出自が追えなかった……」
「でも、うーちゃんやみやちゃんが言ってましたよね、高校に入ってからおかしくなった、って。あれはいったい?」
「状況的に話せなかったけど、多分この学校全体にかけた暗示。私は耐性があるからごまかされなかっただけで、ほかの人は安倍はるなは中学校、あるいはそれ以前からいた、と認識したのだと思う」
学校全体に……それって。
「……陰陽師は、私と同等の能力を持つのかもしれない。人間が人間のために受け継いできたのが陰陽道なのだとしたら……その発祥は、私たちと同じくらいだから」
「……とんでもないものを、相手取ってしまいましたね」
「そうでもない。救いがある」
リーリエの言葉に、首をかしげる。相手の能力がリーリエと同等なら、数の差で不利なのでは……?
「……向こうは、人と、人以外のタッグ。こっちは、人以外同士のタッグ。どちらが弱いということもなく、お互いに補い合える。合計力はこちらが上、ということ……それに、あなたはまだ”眼”を使おうとすら思っていないでしょう?」
「ばれていましたか……あれを使うのは、のちのことも考えるとなかなかのリスクを負いますからね。向こうがうーちゃんを狙いにでも来ない限りは……使うことはないでしょう」
千年と少し前、吸血鬼の眼で起こしてしまったことの顛末を振り返る……現代風に言うと黒歴史ですね、あれ。
でも、リーリエの言う通り。戦闘になれば式神に頼るしかない人間と、それぞれ別の攻撃ができる魔法使いと吸血鬼。お互いに奥の手があるかもしれませんが、私が本気になれば割とあっさり倒せるかもしれません。
「じゃあ、リーリエもうーちゃんの家に来ますか? 一緒に行動した方が、いろいろ安全でしょうし」
「客間はあるはずだから……別にいいけれど。寝室まで一緒にいては、まとめてふっとばされるかもしれないから」
「そう、ですね……」
「……安心していい。客間から結界をはるから、本館にまで被害を出す気がないなら、そういうのは起こらない。だから……安心して、ゆりちゅっちゅ。透視とかでじっくり見てるから」
「……安心させるための冗談なのか、本気で言ってるのか見分けがつかないのですが」
どっちもかなぁ……どっちもでしょうねぇ。リーリエのことですから……。
でも、リーリエが一緒にいてくれるならまず安全でしょう。千年間魔法を修行し続けて、その体にためられた力の膨大さは、先ほどの血液カプセルで良く分かっています。
あれだけの力があれば、陰陽師一族がまとめて攻め込んでくるとかしなければ、私なしでも守り切れるのでは?
「……忘れないで。単独、狭い範囲での能力は、今の私でもあなたにかなわない。多数、広域は私が守れる……建造物は任せて。でも、天野さんを守るのは。あなたしかいない」
「リーリエ……うん、ありがとう」
私の言葉に、そっと微笑むリーリエ。
「……けれど、天野さんもただ守られるだけじゃない。車いすは結界で周りから見えないようにしたし、一時的にあなたのことを意識できないようにしておいたから、念のため車いすに乗ってあの建物……武道場に行ってみて。間に合えば、天野さんのかっこいいところ、見れるから」
「え? リーリエは……?」
「……脱臭はできた。けれど、気絶したうえに、記憶もあいまいな女の子を放ってはおけない。保健委員としての仕事をするわ」
「そっか。わかった。みやちゃんのこと、よろしくね。その子も……リエ=ウヴァロヴァイト・アマツジとしてだけかもしれないけれど、大事な友達だから」
「フラグの乱立は嫌いじゃないけど純愛ルート希望」
「……そういう意味ではないよ?」
リーリエから得た知識がリーリエの言葉を理解する助けになってくれました。
ともあれ、ひとまずそこで解散し……私は、リーリエの言った通り、車いすの回収と、うーちゃんのかっこいいところを見ることにしたのでした。




