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平和のための戦いを

 結局、リーリエたちが戻ることはなく、五限目が終わってしまい、六限目が始まってしまいました。


「みやびさんはもちろんですが……咲子さん、無事でしょうか。彼女まではるなさんに何かされていたら……!」

「大丈夫。咲子さんは……私の、古い友達なので。ほんの十数年しか生きていない陰陽師にどうこうされることはないと思います」

「え……? 咲子さんも、吸血鬼なのですか?」

「魔法使いです。って、勝手に言ってしまいましたが良かったのでしょうか……本人は、私以外には隠していましたし……」

「ああ……私は口が堅いですから、聞かなかったことにしておきます」


 教科書を見せてもらいながら、内緒話をする。その内容は、周りに聞かれたら頭がどうかしたかと思われるようなものですが、恋人同士だからこその距離でかろうじて聞こえる程度の声量なので、おそらく大丈夫でしょう。

 でも、リーリエまで戻らないのは不安ですね……もう捕まえて、除霊の儀式を行っているのでしょうか?

 そう思っていたら、教室の扉が開かれました。


「……すいません。遅れました」

「加賀野さん、事情は聞いていますが……金野さんは?」

「……見失いました。人間とは思えないほど速くて……」


 こちらを意識しながら話すリーリエ。それは、文字通りのことだと受け取ってよいのでしょう。


「……気を落とさないで。大丈夫よ、きっと無事に戻ってくるわ」

「突然叫んで走りだすんです。そう簡単に判断できないと思いますが……」


 そう言いながらも、リーリエは自分の席に戻る。

 私がリーリエをじっと見ていることに気が付くと、リーリエは自分の胸元を軽くさすりました。

 ……あ、私以外も狙われるのなら、護符をうーちゃんにも渡した方が良い、ということでしょうか。胸元にしまっておきましたし……。


「うーちゃん。魔法使い特製の護符です。本人は専門家相手に役立つか、と言っていましたが、何もないよりは良いはずです」


 先生や、周りの人に気付かれないようこっそりと。私だけ制服じゃないのが幸いでしたね。うーちゃんたちの着ているものは、少しきっちり作られすぎていて、懐に手を入れるのも難しそうですから。

 うーちゃんは少しだけ困惑していたものの、そのまま制服のポケットに入れました。


「……どこまで話したかしら。えーっと……」


 重大なことだからでしょう。先生はそちらに意識を持っていかれたようで、授業内容をどこまでやったか確認していました。

 そして、その時ちょうど──六限目が終わりました。


「これで、あとは部活動とかがあるくらいですよね?」

「はるなさんは帰宅部……無所属です。私は……同行しても、足手まといでしょうね」

「危険なことは私に任せてください。うーちゃんが私を守ろうとしてくれていたように、私もうーちゃんを、巻き込まれた人を守りますから!」


 私がそう言うと、うーちゃんはそっと手を握ってくれました。

 己の無力をかみしめるような表情。それでも、頼るしかないから……きっと、お願い、という言葉の代わりでしょう。あるいは、無事を祈ります、と。

 言葉の代わりに、私は手を握り返し、そっと手を離します。

 そして、リーリエに渡された血液カプセルを口に含み、かみ砕きます。

 飲み込むのではなく、吸血のための牙に血を塗り込むように。それだけで、体に力がみなぎり、かつての神秘に満ちた時代と同じ力もわき出します。

 目を閉じ、血を吸う対象──はるなさんの気配を感じ取る。もう学校の外まで? でも……好都合です。


「行ってきます」


 リーリエとうーちゃん以外の視線が途切れたタイミングで、全身と衣服、持ち物を霧に変え、私はその後を追う。

 はるなさんが一人きりになった時……それで、全部終わらせます!

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